詩なのか何なのか…心の風景画みたいなもの

とみき ウィズ

第1話

人類黄昏時の二人


おれはおれの女を連れて、とうとうここに辿り着いた


昔 俺のファミーリァがまだサィバーティーゲルの群れの襲撃に会う前にじいが言っていた所。


昔々は「婚礼」といって、ソロの男と女がペアールになる時は沢山のソロやペアールやファミーリァが集まって「婚礼」と言う儀式をしたそうだ。


「教会」と言う所で集まったソロやペアールやファミーリァの前でお互いに相手を守ると言う誓いを立てたそうだ


そんなに沢山ヒューが集まったりしたらたちまち匂いを嗅ぎ付けられて放射能鬼やヒュー食いクズリの襲撃を受けるんじゃないかな?


そしてそのあとで、皆で豪勢な食い物やケーキとかいうものをたらふく食べて歌ったり踊ったりしたそうだ。


…ケーキって一体なんだ?


じいは笑いながらとても甘くて白くて柔らかい食い物らしい。


どうせ じいのほら話だと思うけど(笑)


そんな話をお前にしたら、お前は目を輝かせてその「婚礼」をしたいと言った。


そして俺たちは散々やばい思いをして、じいが言っていた「教会」の跡にやって来た。


そしてそばに流れる川で交代で見張りに立って体の垢を落とした。


垢を落とした俺たちは「教会」の跡の前に立った。


用心深く周りをチェックして放射能鬼やヒュー食いクズリやサィバーティーゲルがいないかチェックしてから身につけた武装を全部はずして(信じられるか?教会には非武装で入らなきゃいけないんだそうだ!)崩れた壁に立てかけて置いた。


信じられるかい?


俺たちは今、ライフルもピストルもHGもククリナイフも棘付きメイスバトンも持ってない、全くの丸腰なんだ。


服の襟に仕込んだ細身のダガーナイフさえ外したんだぜ!


俺は地下市場でなけなしのライフルの弾30発!と交換した白い薄い布(これが本当に空の雲みたいに白いんだ!)をお前の頭にかけた。


そして俺たちは手を握り、周りを警戒しながら「教会」の奥に進んだ。


いつおっかないヒューイーター、放射能鬼やヒュー食いクズリ、サィバーティーゲルが飛び出してくるか判らないから、あの時はひやひやしたぜ。


その昔、無実の人たちの身代わりに交差した木に磔にされて死んだという髭を生やした貧相なソロの木像が斜めに壁に立てかけてある所まで行った。


あのソロはあんな目に合っているのになんで優しそうな顔をしてるんだ?


まぁ、いいか。


俺たちはじいに聞いたとおりにそのソロの木像の前に膝まづいて、じいが言ってた呪文を言った。


そして、お前の頭にかけた布をめくってキスをした。


お前は不細工な笑顔を浮かべて、先月放射能鬼に毟り取られた俺の右耳の傷に注意しながら俺の頭を抱きしめた。


「死が二人を分かつまで」


俺たちはそそくさと武器を拾うとこの時の為に取っておいた大事な缶詰を開けてお祝いをした。


そして苦労して作った俺たちの要塞に苦労して帰るのさ。


「死が二人を分かつまで」


俺たちは特別なペアールになったらしい


なんたって「婚礼」を挙げたから


「死が二人を分かつまで」


死が二人を分かつまで互いの背中を守らないとな。


北の山脈の上がうっすらと白くなってる。


本格的にセィバーティーゲルが山から下りてくる季節だ。


俺は生まれてから12回目の、お前は生まれてから10回目の冬がやっ


てくる。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る