ダンジョンと戦士
第14話 俺と新たな村と新たな依頼
異世界に来て5日目。
まだ5日しかたっていないことに驚きではあるが、俺たちは村を探索することになった。
【ノーヴェルン村】は橋のこちら側と向こう側の二つの村で構成された町だ。
こちら側、つまりは平原側は、主に木材の加工や農作物の栽培を行っている。
実際、村の策の外側は畑になっていて、昼間に見渡せば畑で農作業をしている人が見える。
あと、入り口には丸太が積み重ねられていて、どれも【リリティティスの森】で見かけた木材だった。
開墾された向こう側にも森があるが、そこの木材は取っていないのが不思議である。
俺たちはそれぞれ分かれて行動している。
俺と龍也くんの男組と、ユリアとエルメの女性組だ。
男二人で何をするのかというと、【リリティティス村】と同様の掲示板システムがあるようで、それの確認をしに向かっている。
ユリアとエルメは買い出しと情報収集をしてもらっているわけだ。
「なんていうか、日本の村とはイメージが違いますね」
「そうだな。おそらく魔物という危険から身を守るために、人間の住む区画が密集してるんだろうな。そして、外側に畑が川沿いにできている感じだ」
「だったら、作物の方を内側にしませんか?」
「作物を狙う害獣だったらそうだろうけど、魔物の標的はあくまで人間だからじゃない?」
意外と鋭い指摘をする龍也くんに驚きつつも、俺は掲示板の前までやってきていた。
掲示板にはいろいろな依頼事が掲載されている。
案の定、掲示板横には小屋があり、そこで言葉を読み書きできない人に対応してくれる人がいるようであった。
「アニメでいう”冒険者ギルド”の原型みたいな感じですかね?」
「ん~、まあ、そうかもな。もっと大きい街になれば、俺たちが思い描いているような冒険者ギルドがあるかもしれないしな」
依頼書には文字だけではなく絵も描かれている。
これで何をしてほしいのかが文字が読めなくてもだいたいわかるようになっていた。
まあ、俺は頑張って覚えたので少しは読めるようになっているが、細かい言い回しなんかはまだまだ学習中だ。
俺は大学ノートを取り出し、文字と日本語を照応しながら確認をする。
「あ、大学ノートにシャープペンシル!」
「ま、これでも大学生だからな。もともと鞄の中に入っていたんだよ」
受付のお兄さんが不思議そうな顔で俺たちを見ている。
まあ、確かに大学ノートなんて存在しないしなぁ。一般的なものは羊皮紙っぽい。
紙での印刷技術ができたのはいつだっけ?
少なくとも、この地域の技術レベルを見る感じだとまだまだな感じはする。より発展した都市部に行けば違うかもしれないけれどね。
あの、言葉を定着するための触媒として使われていた本は羊皮紙ではなく紙が使われていたので、高級紙扱いをされているのかもしれないけれどね。
と、そうそう、依頼を受けに来たんだった。
現在張り出されている以来の中で、俺が受けてもよさそうな感じのする依頼は次の3つだった。
【周辺の魔物の討伐】
「最近『赤い月』の影響か、魔物が活性化しつつあるので魔物を討伐してほしい」
確認方法:魔石の数
報奨金:魔石の売値の1.2倍
【畑の警備】
「野生動物から畑を守ってほしい。危険な野生動物を討伐した場合は別途報奨金を出す」
日給:25,000レル
【冒険者の捜索】
「先日、ダンジョンに潜った冒険者がまだ帰ってこない。彼らの探索をしてほしい」
前払金:15,000レル
成功報酬:235,000レル
3つ目は危険そうな雰囲気がある。
ただ、ゲーマーの直感としてはここで挑めば強力な仲間と手を組むことができそうな気もする。
一応、【赤い月】の調査に関しても引き受けている以上は仲間は多い方がいいだろう。
ただ、なぜか不幸と双頭竜を背負った剣士の姿が浮かんだのは、気のせいだと思いたい。
「お兄さん、ここに来るまでにけっこう魔物を倒してましたよね? まずは魔石を換金したらいいんじゃないですか?」
龍也くんは一つ目の依頼の事を言っているのだろう。
まあ、確かに、少しずるい気もしなくもないが、貢献自体はしているので普通よりも高レートで引き取ってもらえるならば、悪くないだろう。
「なあ、この依頼って、此処に来るまでに討伐した魔物の魔石でも大丈夫か?」
「ん? ああ、構わないぞ。ここに来るまでってことは少なくとも平原の魔物だろうしな」
「それは良かった」
俺が魔石の入った革袋を渡すと、「ちょっと待ってろ」と掲示板係の人が袋から魔石を取り出して秤で重さを計測する。
魔石1コの金額は重さで決まるらしく、グラム数あたりで決まるようだ。
まあ、比較している
「……結構倒してきたんだな。なら、3,660レルだな」
貨幣の入った革袋で報酬を手渡される。そこそこな金額だけに、結構ずっしりと重い。
だが、昨日1日戦ったと考えると単価的にも非常に安い。
「魔物25体倒してこれぐらいかぁ」
「ま、常時募集している依頼の報酬なんてそんなものさ。金額が決まっている畑の護衛をやった方が金額がいいのは当然だ」
「あー、まあ、そうなるか」
実際、単なる魔物の討伐がそんな利益になるわけではないことはわかっている。
資本主義経済的に考えれば、そこまで利益にならない仕事なのは事実だろう。
金銭的な感覚は日本のそれに近いので、3食分は確保できたことにはなるが、やはり大きく稼ぐには金額が提示されているものがいいのだろう。
「龍也くん、畑の警備をやるか?」
「うーん、そこはやっぱり、冒険者の捜索依頼を受けるべきじゃないですかね?」
「やっぱり、そうだよなぁ……」
本来であれば、助けに行くべきだ。高校生の俺だったら、迷わず向かっただろう。だが、俺だけならばまだしも、龍也くん、ユリア、エルメを危険な目に合わせるべきかと考えてしまう。
言えば全員付いてくるだろうというのは、すぐに考えつくからだ。
だが、それは余計なお世話なのだろう。
結局は、すべて俺がどうしたいかだ。
「龍也くん、龍也くんは俺がこの依頼を引き受けると言ったら、付いてくるか?」
「もちろん行きますよ。どっちみち、ユリアお姉さんもエルメお姉さんもついていくでしょうし、僕だって生活魔術ぐらいなら使えるので、暗い洞窟の探索ならばなおさら僕が行かないと」
「あー、暗闇を照らす魔術があったんだっけ」
「そうです。お風呂に入らなくても体を洗う魔術、毒やめまいみたいな状態異常を直す魔術、屋内を明かりで照らす魔術を覚えました! まあ、3日間ではこれがすべてでしたけど……」
「めっちゃ才能あるやん!」
「旅に役に立つ生活魔術を中心に教えてもらいましたからね」
うーん、この。
俺って前に出て戦うしか能が無いやん。
すこし、龍也くんの才能に嫉妬しつつも、俺単独で向かうわけにもいかず、ミイラ取りがミイラにならないとも限らないので、まずはユリアたちに相談することに決めたのだった。
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