メガネ彼氏とメガネ予定彼女

鋼音 鉄@高校生

百万回の好きでも足りない愛

「なあ、美穂」

「何?翔」

「目、悪くなったか?」

「え、な、何で……」


翔は本をペラリ、ペラリと捲りながらそんな事を口にする。美穂はその言葉に驚愕をする。理解ができなかった。目が悪くなっていた事、それを上手く隠していたつもりだったのだろう。しかし、翔には分かっていた。


まあ、美穂が目が悪くなった時は確信となってはいなかった。疑惑でしか無かったのだが。


「いつから、知ってたの」

「疑惑となったのは十日前。確信となったのは今日だな。スマホを見る時、何時もより近い距離で見ていた」

「そう、私の事を良く見てるね。……何で十日前から気づいたの?私が気づいたの九日前なんだけど」

「自分に関して無頓着過ぎだろ。……何で気付いたのか、だったよな。大学の講義時間中、見えにくそうにしてた。だからだよ」


何で最初に気付いたのが俺なんだよ、と呆れの言葉をこぼせば、美穂は申し訳なさそうに体を丸める。その仕草だって可愛いと、愛おしいと思ってしまうのは惚れた弱みであろうか。美穂の考えは分かっているが、何で言わなかったのか、と疑問を口にする。


「だって、だってぇ……メガネを掛けたら翔に嫌われちゃうかもって、思っちゃったから」


美穂の想像通りの言葉に呆れを露わにする。何でそう思ったかを問い詰めたい所だが、その感情を呑み込んで美穂に向かい、抱きしめる。暖かい美穂の体を堪能したい、と思いつつも、美穂の考えを解かせる。


「俺さ、恋人を顔で選んで無いんだ。体で選んで無いんだよ。俺は美穂だから惚れたんだ。美穂だから恋人にしたいと思ったんだ。全てを引っくるめて、美穂だから好きなんだよ。メガネを掛けようが掛けまいが、美穂は美穂だ。だからな、俺と美穂が離れるなんてありえないんだよ。まあ、お前が俺から離れるなら、別かもしれないけど」

「離れない!私は、翔の事が好きだから。絶対に一生離れたく無い…」





「俺もだよ。好きなんて言葉じゃ足りない。愛してるもね」

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