第6話 家族

 案の定家に帰ると妻の美優にチクリと言われてしまった。

「ちょっとぉ、遅れるなら連絡ちょうだいよ。」

「ごめん。新年度だから忙しくて。」

 少し不機嫌な感じで夕飯を用意し始める。

「明日は?」

「たぶん大丈夫だと思う。」

「たぶん?」

「いや、帰ってきます。」

「はい。」

 美優はクスクスと笑う。

「でも体壊さないでね。」

「ほどほどにやりますよ。」

「新しいクラスはどう?」

「ん~、そんな変わった感じではないかな。普通。」

「そう。面倒がない方がいいね。」

「それね。こればっかりは祈るしかないね。」

 手を合わせるて祈るポーズをとる。

「頑張ってください。」

「はい。ありがとうございます。いただきます。」

「はい。どうぞ。」

 目の前に並んだ夕飯に手を付ける。美優は自分の食器のかたずけをはじめる。

「お腹はどう?」

「特に何もないよ。毎日聞いてくるね。」

 呆れたように言ってくる。

「それはそうでしょ。俺たちの初めての子供だもん。気になるじゃん。」

「そう?」

「そうです。無理はしないでね。何かあったらすぐに電話。」

「分かってるって。すぐ電話するから。」

「それじゃあ良し。」

 こちらの言葉に美優は苦笑する。


 結婚して2年。

 二人の間に新しい命が宿る。


 自分と美優はとてもうまく行っているほうじゃないだろうか。


 だから真野の事は黙っていた。


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る