7月15日、俺の部屋に勇者が転がり込んだ。あと家の地下がダンジョンになった。

烏の人

転がり込んだ勇者とダンジョン

第1話

 7月15日、俺の部屋に勇者が転がり込んだ。朝起きると鎧を纏い、レイピアを携えた少女が不可思議そうに此方を見ていたのだ。


「これは夢か?」


 寝起きの頭で捻り出した質問を繰り出す。


「それは私の台詞だ。魔王は…一体どうなった?」


 どうにも、お互いに状況を理解していないようである。それに魔王?


「魔王って、桜田 摩耶のことか?」


「サクラダ?いいや違う。魔王の名はベリアルだが、ここにも魔王が居るのか?」


「ああ、あんまりにも強いからな。そう呼ばれている。」


 この世界にダンジョンが出現し始めて今年で既に20年が経つらしい。それと共にこの世界には魔力を得た者が現れた。そんな中でも、幼馴染みである摩耶が得た魔力は膨大かつ強力。何もかもを無力化するその様を誰が言い出したか魔王と呼ばれるようになった。

 対して魔力を得なかった者も居る。かく言う俺もそっち側だ。


「と、言うかあんたは一体誰なんだよ?」


「ああ、すまん。自己紹介が遅れた。私はセルア·ベルフェルム。単にセルアで構わない。君は?」


「俺は加賀美 陽。陽って呼んでもらっていい。」


「じゃあ陽、さっき言ってた魔王の元に案内してくれ。私には勇者としての使命がある。」


「…まて、摩耶はマジもんの魔王でもなんでもない。ただの人間だ。あまりにも強すぎるゆえそう呼ばれているだけで。だいたい、あいつは人を傷つけたりなんかしない。」


「そう…なのか…?」


「多分、ここはあんたが居た世界じゃないぞ?」


「?」


「希にあるんだよ。ダンジョン発生と共に別の世界の存在がこちらに現れることが。大抵その場合、その存在ってのは死んでるんだけど………待て。」


 俺の中の何かが告げた。ダンジョン発生と共に別世界の何かが現れると言うことは………。


「俺ん家どうなった!?」


 布団から飛び起き1階に降りる。なりふり構っていられない。なにか変化は?リビング特に無し。風呂場、トイレ、親の部屋………異常は特に無い。

 いや、そんなことはない。何処かにある筈だ。でなければ説明がつかない。

 ふと、横に目をやる。階段下の収納室。まさかと思い、開けてみる。


「ここだったかぁ………。」


 物置と化していたそこには地下へと続く階段があった。最悪のケースだ。家の地下にダンジョンが出来てしまった。


「ハル?どうかしたのか?」


 セルアが二階から降りてくる。


「これだよ…。」


「これは、ダンジョンの入り口か?」


「ああ、こりゃ流石に引っ越し確定か。」


「何でだ?」


「今となっちゃ、ダンジョンは政府が管理してるの。届け出出さなきゃ入ることも出来ないし、周辺は監視される。だから、とりあえず父さんに連絡いれて………。」


 そんな説明をしているときその姿を視認した。


「セルア!後ろ!!」


「!?」

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