第35話 あのひとよりもしゅごい
「太助君、Cランク昇格おめでとう。茉莉ちゃんが手続きを済ませるまで、少しをお話を聞かせてほしいの」
結局、支部長室に呼ばれました。
本当に少し?
しかも俺が話す方で大丈夫?
「まあ少しだけなら」
「じゃあ、パーティーの人達を読んでもらえるかしら?太助君を任せられる人達かちゃんとチェック……、いえ、支部長として挨拶しないと」
「え?いませんけど?」
一人でクリアしたからね。
「あら?暫定のパーティーだったのかしら?でもいい判断だわ。パーティーメンバーは慎重に選ばないとね。なんだったら私の方で優秀そうな子を見繕ってもいいわよ?任せて!……でもあの人の時は失敗しちゃってねぇ。私が紹介しちゃったのよ……。今でも後悔してるわ。あの女、最初はパーティーを組む前は嫌々って言ってたクセに次の日にはもう『私達は最高のパーティーね』とか言い出して!それで結局最後まであの女と一緒に……」
「あの、一人でクリアしたんですけど?」
早速始まった昔話をぶった切る。
早く帰りたいからね。
「え?一人?どういうことかしら?これ、確かにマザーブラッディベアの魔石よね?私でも一人だと不安なのに?いいえ、そもそも一人でどうやって辿り着いたの?そうよ、今朝入ってこの時間に出て来てるのもおかしいわ……」
混乱する支部長。
くしくもRTA(リアルタイムアタック)でもしたかのような早さで帰ってきてるからね。
いや、これでもファイブフラワーズを先に行かせて、MPも回復したからゆっくりしたつもりなんだけどね。
「日曜なのでほぼ戦わずに17階層まで行けましたし、前に高ランクのパーティーがいたみたいなんで」
「なるほど?確かにこの時期は探索者が多いものね……。ってそうじゃないわ。どうやって一人で……。いえ、聞いてはダメね。信じるわ。太助君が私に嘘を付くわけなないもの。でもあの人でもDランクからは一人では無理だったのに……。あのひとよりしゅごい……」
謎の信頼感で深くは聞かれなかった……。
「太助くーん、手続き終わったよ。はいこれ、ライセンスね。Cランクに上がってもウチには来るわよね?これでお別れってことはないわよね?」
黒川さんがライセンスの更新をしてくれて、これで俺もCランク探索者だ。
早速さいたまの未踏破ダンジョンに挑みたいところではあるんだけどね。
「学校もあるので放課後はここに来ると思いますよ?でも土日はまたしばらく遠征しようかと。後、フリーダンジョンの登録もお願いします」
Dランクのダンジョンがクリアできるようになったので、土日はまた遠征してスキルを集めるつもりだ。
そこである程度スキルが揃ってからさいたまダンジョンに挑む。
その間にフリーダンジョンの順番が回ってくれば、ラッキーだけどね。
ジョブ入りのダンジョンコアが手に入れば、協会が保管している同じ価格帯のジョブの入ったダンジョンコアと交換してもらえる。
何か近接職になるつもりだけど、この時にまた【斥候】なんかの適性のないスキルを覚えられるジョブにもなっておいて集めたスキルオーブを使いたいところだ。
なにせ、さいたまダンジョンは世界に七つしかない未踏破ダンジョン。
毎年の死者数も日本一のダンジョンとなる。
万全を期して臨みたい。
「フリーダンジョンの登録は自動的にされてるはずだけど、まさかフリーダンジョンにも一人で挑むつもりかしら?未知の魔物が出てくることもあるし本当に危ないんだから……」
ダンジョンは県内だけでもほぼ毎日現れると言っていい。
放っておくとダンジョンブレイクが起るので、持ち回りで探索者がそれを破壊していく。
Cランク以上の探索者個人に順番に声が掛かっていき、普通は所属するパーティーで攻略していくことになる。
この支部にCランクの探索者が何人いるかはわからないが、そう遠くないうちに順番が回ってくるだろう。
「大丈夫ですよ、支部長。大体FランクでEランクでも珍しいくらいなんですから。それに太助君はSランクになる予定なんですから。ね?Aランクまで上がったら私をAランクの支部に呼んでね?担当の受付嬢なんだから!」
静岡のAランクダンジョンはこの前攻略されたので、今のところ日本にはAランクダンジョンはないことになる。
必然、支部も解散となったが、次にAランクダンジョンが現れた時にまた新たに支部が開設されることとなる。
Aランクのダンジョンに挑めるのはAランクの探索者だけ。
その支部の職員はAランクの探索者を担当している者が選抜されるとかなんとか……。
「俺は薬草狙いなのでこれ以上ランクは上げないですよ?」
薬草の生えるエリアに入れればそれでいいからね。
「えー、そんなー」
「うふふ、フラれちゃったわね、茉莉ちゃん。でもAランクならあの二人も期待できるでしょ?そう言えば太助君、惜しかったわね。一昨日ちょうど支部の最短記録でCランクになった子が出たのよ。その二人がいなければ太助君が新記録だったのにね。あ、でも最年少記録の方はまた全国のを更新したと思うわよ?」
「あれ?二人組ってことは最短記録は赤井さんですか?」
俺より後に探索者になった二人組、おじさん達だろう。
俺が学校に行ってる間にDランクダンジョンをクリアしてたのか。
「あら?知り合いだったの?」
やっぱりか。
おじさんは俺より1日遅れ、赤井さんは2日遅れだから新記録は赤井さんだろう。
でも赤井さん、ほとんど戦闘はしてないって言ってたからなぁ。
実質おじさん一人で攻略したようなものだろう。
俺よりおじさんの方がしゅごい……。
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