ゆきて、その果てに

サイノメ

第1話 たそがれ

 まどろみの中、俺は夢を見る。

 それは過去の記憶か? それとも未来への願望か。

 ともかく、その中で俺はある人と出会う。

 顔や身なりはよく見えない。

 けど身につている眼鏡が印象的だった。

 傾く日を背にするその人は、俺に何かを語り掛けていた。

 その内容は分からない。けど、とても大事なことの様な気がした。

 そして、聞き返そうとする時に決まって夢から醒める。

 俺は背伸びをして、部屋を見回す。

 いつもと同じマンションの自室。

 夕暮れ時の西日が部屋を照らす。

 ワンルームゆえ、部屋の隅々まで日の光が注いでいる。

 俺は立ち上がり手早く身なりを整えた。

 急がないと仕事に遅れてしまう。

 勤め先は夜間勤務でも、出勤時間に厳しいのだ。

 こうして準備している俺を、黄昏時の太陽が見ているような気がした。

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