【KAC20248】FUTURE WORLD
下東 良雄
第1話 深く病む
何もかもうまくいかない。
小学生の頃、クラスメイトが転んで泣いた。
先生はオレが暴力を振るったと決めつけて、オレを叱りつけた。
中学生の頃、クラスメイトの財布が無くなった。
オレのカバンの中身をぶちまけられた。
高校生の頃、先輩に呼び出された。
突然、生意気だと言われて殴られた。
大学生の頃、周りから距離を置かれていた。
オレが犯罪者だという噂が流れていたからだ。
何とか小さな商社に就職。
でも、会ったこともない取引先をオレが怒らせたと難癖をつけられ、先週クビになった。新卒で入社して八ヶ月。もう無職だ。
そして改めての就職活動中だが、書類選考は通っても、まともに面接すらしてもらえない会社もあった。正直、もうどうしたらいいのか分からない。
原因は分かっている。
オレの目つきの悪さだ。
別に怒ってるつもりも、誰かを睨んでいるつもりもない。普通にしているだけなのに、周囲はオレの目つきだけですべてを判断する。こいつは性根から悪い奴だと。こいつは犯罪を犯したことがあると。
よく『ヒトは見た目が九割』なんて言うが、オレの場合は十割だ。この目つきがオレの人生の邪魔をしている。
一体オレが何をしたっていうんだ。
オレは普通に生きてるだけなのに。
世の中への憎しみで膨れ上がるオレの心。
元上司を殺したい。
元同僚を殺したい。
面接官を殺したい。
そんなことはできない。
オレはそこまでバカじゃない。
でも、いつかしてしまいそうなんだ。
我慢できずに、刃物を振り回している未来が脳裏に浮かぶんだ。
オレはきっと生まれながらの犯罪者なんだ。
何があったって、オレはずっと我慢してきた。
子どもの頃からずっとずっと我慢してきた。
しかし、ひとには限界がある。
オレは心が深く病み始めていた。
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