ワタシの理想はメガネ男子

@mia

第1話

 確かにワタシは願いましたよ。

 心の中でひっそりと『素敵な恋人が欲しい』って。

 でも、ワタシの世話係というか従者というか下僕に案内され引き合わされたのは、どこをどう見ても「めがねざる」じゃない。

 ワタシが望んだのは「めがねが似合う素敵な男性」であって、「めがねざる」ではないのよ。めがねの似合うアイドルのショウ君みたいな男性なのよ。

 ワタシがショウ君を知ったのは、ワタシの近くにいた女の子たちの見ていたスマホだった。

 のぞき見したわけじゃないのよ。そっちに目をやったらたまたま見えてしまったのよ。たまたま見えた画面にショウ君がいたのよ。

 一目惚れだった。あんなに素敵な男性がいたなんて。ワタシの身近にはいなかったタイプのショウ君に夢中になった。とはいってもその時以来ショウ君を見ていないの。

 ワタシはスマホやそれに類するものは見せてもらえなかったから、彼女たちがいなければショウ君の存在すら知らないでいたかもしれない。ショウ君という尊い存在をワタシに教えてくれた彼女たちに感謝しているわ。それからよ、異性に興味がなかったワタシが恋人を欲しいと思ったのは。

 彼女たちと同じ年代の女の子を見かけると用もないのに近づいてしまう。もちろん怪しまれないようにさりげなくね。スマホを見ていない子もいたし、見ていてもショウ君は映っていなかった。

 それなのに引き合わされたのは「めがねざる」なんて、がっかりよ。


 ☆  ☆  ☆


「最近のメーちゃんどうしたんだろ? 食べる量が減っているし機嫌も悪いし」

「見合い相手のオスが気に入らなかったのかなあ? わざわざ遠くの動物園から呼んだのにな。やっぱり母猿が育児放棄したせいでメーちゃんの世話はずっと人間がしてたからね。あの子は自分が人間だと思っちゃってるんだろう。でも繁殖させなきゃいけないから、何とかしないとな」


 めがねざるの檻をモニターで見ていた飼育員たちは、これからのことを考えてため息をつくのであった。

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