"Wednesday's Loop"ループする水曜日
@kaiji2134
第一回目の水曜日 時の祠
「はあ?探検だと小学生じゃあるまいし……」
「別にいいじゃねーか。それに提案したのは晋也だよ。陽菜も来るぜ」
目の前にいるこの男、東龍二は俺の幼馴染みで、こいつが居るだけで気温が三度は
上がるくらいの暑苦しい熱血野郎だ。晋也と陽菜というのも幼馴染で腐れ縁だ。
「それに探検と言ってもどこに行くんだよ」
「今日の水曜日の夜に宿直がいねーから、その時に学校の地下の『時の祠』って場所に忍び込むんだと」
「『時の祠』だと、どこだそれは?」
俺は龍二に聞いた。
「学校の地下にあって心霊スポットで有名な場所なんだと」
「お前ら相変わらずそう言うの好きだな……」
俺は肩をすくめた。
正直、心霊スポットだの怪談だの非科学的な物には俺は全く興味がないし、そんなものは信じちゃいない。
どちらかというと龍二や晋也、陽菜は昔からそういう話に目がない連中だ。
「楽しみにしていてくれよな」
「相変わらずのバカだなって……おい何勝手に俺をメンバーに入れてんだ!?」
「え?どうせ夏休み中暇だろ」
龍二が俺に聞いて来た。
「まぁ……確かに暇だが」
俺は少しばつが悪そうに答えた。
実際、夏休み中の俺は夏期講習も宿題も終わり、特にやることもなく、時間を持て余していた。
だからといって、あいつの誘いに乗るのが正しい判断かどうかは別問題だ。
本来なら、この暇な時間を有効に使って、何か有益なことでもすべきなんだろうが、そんな気力もない。
結局、俺はただダラダラと過ごすことしか思いつかなかった。
「どうせ何か無茶なことに巻き込まれるのは目に見えてるんだが……」
俺は頭の中でそう考えつつも、龍二の誘いを断る理由が見つからない。あいつのことだ、俺が何を言ってもどうせ強引に連れ出すんだろう。
「暇だろ?じゃあ決まりだよな」
そう言って龍二は食堂から去っていった。
「はぁ……暇だったしちょうどいいか」
実際、何もすることがない夏休みをただ過ごすよりは、少しの冒険心に身を委ねるのも悪くない。どうせ龍二に付き合わされるなら、少しでも楽しむことにしようと、自分に言い聞かせる。
水曜日の夜───
俺と龍二と陽奈と晋也は校門前に待ち合わた。
涼しい夜風が吹いているはずなのに、龍二がいるだけで妙に暑苦しく感じるのは気のせいではないだろう。
「『時の祠』は地下にあるとか言ってたが、どうやって行くんだ?」
「ああ、それなんだがな。普段は入口に宿直がいて入れないだが、水曜日の夜だけは居ないから入れるんだ」
「そんな偶然があるのか?」
俺は少し疑わしげに晋也を見る。
何か裏があるんじゃないかと思ってしまうのは、これまでの経験からだ。
「まぁ、正確には偶然じゃないんだ」
晋也はニヤリと笑う。
「何だよ、その言い方」
俺が問い詰めると、晋也は少し得意げな表情を浮かべながら説明を始め
「この学校さ、水曜の夜だけ宿直の奴どっか行くんだよ」
「いいじゃねーか入れんだから。さっさと入ろうぜ」
龍二がせっかちそうに言い放つ。
その瞬間、俺は思わず心の中でため息をついた。
やっぱりこいつはバカだなと思わずにはいられない。
だって、こいつはいつも後先考えずに行動するんだ。
「おい、せめて様子くらい見ようぜ。中で何があるかもわかんねーんだぞ?」
俺がそう言うと、龍二は面倒くさそうに振り返った。
「大丈夫だって。入ってみりゃわかるだろ?もし何かあったら、そん時逃げりゃいいんだよ」
お前さ……そんな安直な考えでいいのかよ」
俺が呆れていると、陽奈が楽しそうに笑いながら言った。
「でも、龍二の言う通りじゃない?こういうのって、考えすぎると面白くなくなるんだよね」
「それもそうだな」
晋也も陽奈に乗っかるように軽く笑う。
「……お前らまで龍二に流されるなよ」
俺は肩を落としながら呟いたが、誰も気にする様子はない。
「それもそうだな」
晋也、陽菜お前らまで龍二に流されるな。
俺は洞窟の前で晋也と龍二と陽奈に声をかける。
「結構不気味な所だな」
そこには立ち入り禁止の看板が立てかけており、洞窟もまさに廃墟と言ったような場所だった。
「雰囲気あるだろう?」
確かに心霊スポットとしては何か出そうな雰囲気でそうな場所ではある。
「立ち入り禁止って書いてんのに入っていいのかよ」
俺は看板を指しながら、半ば呆れたように龍二に問いかけた。
俺たちは確かに興味本位でここに来たが、それでも法律や規則を無視するのは気が引ける。
もうこのバカの龍二に注意しても意味がないと思うが、今回は引っかかる部分がある。
「後で謝ればいいだろ」
そういうものではない。
「何かあったら逃げればいいじゃない!」
俺たちは晋也の後について行くと少し開けた場所に出た。
「ちょっと待て、あれを見ろよ。『時の祠』ってあれじゃないか?」
晋也が指さした先には祠らしき物がポツンと一つ立っていた。
「じゃあ行くぞ」
俺たちは晋也の後について行くと少し開けた場所に出た。
「ちょっと待て、あれを見ろよ。『時の祠』ってあれじゃないか?」
晋也が指さした先には祠らしき物がポツンと一つ立っていた。
「つーかなんでうちの学校はこんなもん隠してたんだ?ただの祠じゃねーか」
龍二の言う事にも一理ある。なんでうちの学校はこんなもの隠してんだ?
「来て損したわね」
俺と龍二と陽菜と晋也が帰ろうとした瞬間に背後から女性の声が聞こえて来て、
「あなたにしか助けられないの……」
「なんだ………この声は!?」
その瞬間、俺達は気絶してしまった……
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