縄文文書(もんじょ)で世界を救え!! ― 01
幸田 蒼之助
プロローグ
プロローグ
都内某所。――
路地裏にひっそりと佇む、四階建ての古びたビル。
ひょろりと細く、外壁のあちこちにひび割れが目立つ。大きめの地震でも発生すれば、あっさり崩壊するのではないかという、儚さを感じさせる。
秋の夕日は、既に随分と傾いていた。
路地裏ゆえもう殆ど真っ暗で、あたかもお化け屋敷の如きおどろおどろしさを醸し出している。その、ビルの四階の一室にて。
「オシャンティ様、オシャンティ様! これですこれです、これですねん。これちゃいまっかー?」
プロレスラーの如きガタイの、怪しい人相の男が
「あまり騒ぐんじゃないよ、バーボイっ! ご近所様に声を聞かれちゃマズいだろう!?」
オシャンティ、と呼ばれた八頭身ボンキュッボン美女が、眉をひそめつつ小声でそう嗜める。
「まあまあまあ、そう怒らないで下さいよ~オシャンティ様。とうとう見つけたんで~すよ。例の、ワルプルギス様がおっしゃっていた連中の、動画を見つけちゃったんで~すのよ~ぉ」
痩身、出っ歯の男が、のんべんだらりとオネエ口調で横から宥める。
「ああ、そうかいそうかい。良くやったわねカマエル。お手柄じゃぁないの~♪」
どれどれ、と言いながらオシャンティが、PCの前に座る男二人の横からモニターを覗き込んだ。仄暗い室内にモニターの明かりだけが灯っており、三人の顔を怪しく照らし出す。
「あららら。“タマキンのブラブラ日本男児Ch.”ですって!? 品のないチャンネル名だねえ」
「オシャンティ様は何を想像してるんですかねぇ~。ダ~メですよ~」
「ホンマでっせー。この動画チャンネルの主が、“
「おやまあ、そういうことかい。紛らわしいわねえ」
「そ~んなお下品な事ば~っかり考えてるから、行き遅れるんですよ~オシャンティ様ぁ」
ニヤニヤしながらカマエルがツッコんだ0.13秒後、オシャンティの右フックがカマエルの出っ歯アゴに炸裂した。
「アイタタタタっ!」
「行き遅れとか言うんじゃないよ! あたしぁ、まだ二六歳だよ!」
「二六でも三六でも、どうでもいいんで~すのよぉ。それより、これ……」
カマエルはモニターに映し出された動画を指差す。
三人の男が、何やら地面の下の穴蔵から、大きめの壷らしき物を幾つも取り出す様子が映っていた。
彼らはそれを家の座敷に運び込み、四苦八苦しながら開封し始める。
「おやおや。何だい、これは? 大昔の漬物だか梅干しでも入っているのかい?」
「違いますよ~オシャンティ様。これですよこ~れ。ワルプルギス様の仰っていた、『世界をも支配出来る、古代の叡智』ってヤツで~すよ~」
なるほど彼らが開封した壷から、粘土板だか瓦らしきブツが次々と出てくる。
動画を拡大しつつよく見ると、その表面には、何やら文字らしきものがビッシリと刻まれているではないか。
「ほうほうほう。なるほどねえ……」
モニターのバックライトに照らされ、ニヤリと笑うオシャンティの表情が、闇に映えた。
ハリウッド女優さえつとまりそうな、妖艶なる美女顔ではあるが、悪巧み中であることがひと目で判る、何ともワルい表情である。
「よ~し、分かった。早速、アレを奪うわよ~っ! いつも通り、作戦はカマエルに任せた! いいわね? バーボイはカマエルをしっかりサポートしな! さあ、いくわよ~っ!!」
「「ガッテンだ~っ!!」」
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