たとえば


そこら辺の廊下に住むカメムシを

何の迷いもなく潰すくらいの狂気が欲しかった


二酸化炭素で飽和した満員電車の空気を

栄養として好んで吸うくらいの狂気が欲しかった


突然傘を投げ出して足元の水溜りを

ひとつひとつ踏み倒して歩くくらいの狂気が欲しかった


静寂が張られた講義室の中を

前触れもなく絶叫して走り回るくらいの狂気が欲しかった


狂い方を忘れた僕等ぼくら

規範ルールの奴隷となって

狂ったように

毎日同じルートを辿る


それを蹴破るくらいの

狂気が欲しかった


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る