約束の強制

華来 印

第1話 一番分かってあげられる人になりたかった。

 別れたのは、俺のせいだった。

 俺のせいというのは、俺が何か特別に暴力を振るったとかそういうのではなく、

ただ、「一番分かってあげられる人になれなかった。」それだけのことに思う。


 

 別れる日の朝、俺は髪を切りに行った。 

髪が長くなって鬱陶しくなったのもあるが、彼女が「髪が短いのも絶対似合うよ!」

というので、いい機会だからイメチェンしてみようと思い、美容室に向かった。

 美容室に着き、彼女の好きと言っていた髪形をオーダーして、髪を切ってもらった。  


一通り終わり、会計を済ませると彼女から連絡があった。

 「髪の毛切り終わった?写真で送って!!」

 サプライズにしようと思っていたのだが、言う通りにしないといじけるので少し人気のないところで自分の写真を撮り、送った。

「やっぱかっこいい…。早く会いたいな」

自分でも結構気に入っていたので,そう言ってもらえてとても嬉しかった。


 時間は15時を回ったころ、18時からバイトがあったので、帰ることにした。

 彼女にそろそろ帰ることを伝えると、「帰ったら電話しようね!」返信がきた。

俺は、「あいよ。」送り、スマホを閉じた。 


 帰り道、少しバイトまで時間があったのでリサイクルショップに寄って時間をつぶした。せっかくだから彼女に何かプレゼントしようと思ったが、後々考えてみれば、

彼女は変なところに潔癖があって、見知らぬ人が使ったものなどは好まないことを思い出し、自分のギターのピックだけを買い、店を出た。


 16時半頃に帰宅し、彼女と電話する約束を忘れていたのを思い出し、慌てて電話すると、寝起きの声で「おそい。」と一言怒られた。

 遅れた理由を話して、プレゼントしようと思っていたが、人が使ったものは嫌かなと思い辞めたことを話すと、「よく分かってるじゃん、さすがだね」と言ってくれたのを覚えている。 


 17時頃だっただろうか、前日夜更かしをして一睡もしていなかったのもあり、どうしてもバイトに行きたくなくなった。

 そのことを彼女に話すと、「休んじゃえ」と悪乗りのような形でバイトを休んだ。


 そのあとはいつものように他愛のない話や、将来の話、好きとかそんなことを言い合って楽しく電話をしていた。

 将来の話になった時、俺たちは高校二年生で、将来のことについて真剣に考えだす頃だったのもあり、大学の話になった。

 俺は、美容の専門学校、彼女は教員免許の取れる大学、そのことについて話した。

 

 なぜだったのだろうか、彼女の言葉、今思えば怒るほどのことでもないようなことで喧嘩をしてしまった。  

 俺は、前日「夜更かしをした。」といったが、それは彼女と大きな喧嘩をして、

そのあと眠れなかったのが原因だったのだ。

喧嘩の内容というのは、二人の間で守ると誓った「約束事。」

それを彼女が破ってしまったのがすべての始まりだった。












  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

約束の強制 華来 印 @toshioda

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る