美少女魔王と人類最後の僕の日常8

もるすべ

第8話 めがね

「どうかな? お兄ちゃん」

「えっと…… めがね、どうしたの?」

 何故か眼鏡をかけている、美少女な魔王イヴリス。

 見たことない姿が新鮮で、ちょっと知的に見えるところが大人っぽい。しかし身長は変わらず百四十未満なので、その辺のギャップがなんとも言えず可愛らしい。


「サラフィエルに借りたのじゃ、似合うかの?」

「そうなんだ。うん、似合ってるよ可愛い」

 褒められてニッと八重歯見せて笑うのが、また可愛いんだよね。

 小っちゃくて華奢な体に、羊角と月白色に輝くサラサラ長い髪、褐色肌に緑色の瞳、初めて見せてくれた眼鏡姿が新鮮だね。ホント、世界を滅ぼした魔王だなんて信じられない。


「あら、眼鏡フェチなのです? ノア様」

 天使サラフィエルこと、サラさんがお茶を持って……

 サラさんの素顔を見て固まっちゃった。整ってるとは思ってたけど、眼鏡をハズすと造形の完璧さがヤバい。黄金律か、神の御技か? 目が離せない。引き寄せられる。


「いかん! サラフィエル、顔を隠せ! お兄ちゃん見ちゃだめ!」

「あらあら、ごめんあそばせですわ」

 ヴェールで隠してくれて、僕はなんとか落ち着けた。

 あと少し遅かったら、我を忘れて抱きついていたかもしれない。あぶない!


「サラフィエルの美貌は天使一番じゃからの、もはや危険物じゃ」

「その表現、酷すぎますわ」

「……僕も、そう思う。めがね、返してあげた方が……」


 スゴく残念そうに、サラさんに眼鏡を返すイヴリス。

 ちょっと可愛そうだけど、サラさんから眼鏡とったら危険すぎるからね。いっぽうで、受け取ったサラさん、眼鏡を手に暫し何やら考えていたかと思うと、


「ノア様。めがね、かけてみてくださいません?」

「ぼっ 僕?」

 受け取った眼鏡を、戸惑いながらかけてみる。

 これ、度が入ってない伊達だて眼鏡なんだ…… とか思ってると。


「おおぅ! お兄ちゃんカッコいい! 最高なのじゃぁあ」

「はぁああ! ノア様……ス・テ・キ ……じゅるり」

「! なっ ちょっと待って! ダブルハグ禁止ぃいい!」


 僕が眼鏡かけた途端、二人して猛烈に抱きついてくるし。

 花のような薫りさせて、大小のフニフニ押しつけられて、頰っぺにキスまで! 待ってよ、また鼻血噴いて倒れちゃうよ、僕。救けて~


(まったく…… 君らの方こそ、眼鏡フェチじゃんか)




「もう…… お昼ご飯、これでいいよね」

「やたっ! カップラーメン醤油味なのじゃ」

「面目もありませんわ」


 イヴリスにサラさんまで興奮し過ぎて役に立たないもんだから、僕がお湯を沸かしてカップラーメンを用意した。

 世界が滅んだばかりの頃を思い出して、なんだかちょっと懐かしいね。あの頃はイヴリスと二人ぼっちだったけど、今は三人。ずいぶんと賑やかになったよね。


「うまいのう! ワシはこれに、目がねめがねぇのじゃ」

「めがね だけに? ……ですわ」

「おあとがよろしいようで」

 僕はカップラーメンの湯気に、めがねを曇らせながら小さく呟いた。

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