9話 ママのドレス

そして死を迎えなかった―――


「えっ…?」


俺は自分の体を見て愕然とした。

傷一つない。服は破れてもいない。

まるで、何事もなかったかのようだ。


「ど、どういうことだ…?俺は、確かに…」


「ケンタ!あなたの選んでくれたドレスが、私達を繋ぎとめてくれたのよ…!」

「このドレスの加護は、バフスキルを人にも適用するの」

「たった、1回限りだけどね」


ママが涙を流しながら言う。

今度は俺の頬も、歓喜の涙に濡れていた。


『ケンタ、リエ、あなた達の愛の絆は素晴らしい』

『妾は深く心を打たれた、これからもその絆を大切に生きるのだ』


そう言い残すと、女神は光となって天に昇っていった。


地上に舞い降りた奇跡の光を浴びながら、

俺とママは新たな人生の一歩を、異世界で踏み出すのだった。


―――

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