ゲームの裏ボスに転生した俺、勇者を弟子にする~俺の討伐に燃える弟子が、懐いてきて辛い件~

鬼怒藍落

第一章:王都到着

第1話:転生邪神、道場開いた

 俺の名前はエスタ。

 詳細は省くけど、前世持ちの一般人系の邪神であり、とある道場の主をやっている……え、省きすぎ? そう言われても今の俺の肩書きなどそれぐらいしかないし、本当にそれしか語ることがないのだ。

 俺の住居であった神殿を出て十数年、俺は念願の道場を開いて色んな子の師匠をやっていた。

 教える内容は主に剣と刀だが他の武器や魔法の才能がある子には魔法を教えたりしているので詳細としては戦闘万能道場って感じだ。

 頭悪く聞こえるかもしれないが、大体そんな感じなので仕方がない。


「ししょーお客さん!」

「え、まじ……誰だろ?」


 そして今日も今日とて弟子を育てて飯を食う生活を続けていたら、弟子の一人がそんな事を伝えてきた。

 今俺がいるのはめっちゃ辺境の田舎であり、普段来客なんかは絶対に来ない。

 それにこの道場の子供は基本が孤児で親戚などもいないはずだし……誰なんだろうか?


「どんな人だった?」

「びじん!」

「……そっか美人さんか。剣とかもってたか?」

「なかったよ?」

「じゃあ、なんだろうな」

 

 一応の可能性として道場破りは考えたが、剣も持たない美人が道場破りだとは思えない。だから疑問に思いつつ道場の入り口まで向かい誰かを確認した。


「師匠ーたっだいまー!」


 で、次の瞬間に俺は何者かに突撃されて壁まで吹っ飛ばされた。

 顔を確認する間もなく、すり寄るようになんかめっちゃ甘えられる俺。何事? と思いつつ、顔を見ればそれは見知った少女だった。


「グレア?」

「そうだよ、このエスタ師匠の一番弟子のグレアだよ! 久しぶりだね!」

「おう、久しぶり……なのはいいんだけどさ、退いてくれないか?」

「あ、ごめんね今どくよ」


 そして退いてくれた彼女を改めて見る。

 深紅の髪色に蒼い瞳、色々と彼女は成長していて明らかに実力がついており、見違えるようになっているが……なんか幻視してしまうイヌ耳と尻尾はそのままだった。


「三年ぶりか?」

「そうだね師匠、魔王討伐の旅終わったから帰ってきたんだー!」

「魔王……とう、ばつ?」


 ……魔王って、なんだ?

 彼女から告げられたのはそんな事、昔から嘘をつくよう子ではないし本当なんだろうが……いまいち理解したくなかった。

 え、そもそも魔王いたの? ――いつの間に? 知らないんだけど。あ、そういえば三年ぐらい前から魔物活発になってたけど、それのせい?

 いや、そもそも――。


「魔王ってあれだろ? 勇者じゃないと倒せないっていう……」

「うん!」

「ってことは、お前勇者なのか?」

「そだよー! まあ知ったの二年前だけどね」

「……そっかー、勇者だったんだお前」


 ってことはあれか? 俺は勇者拾って育ててた訳か? 

 なんだそれ、邪神仲間に言ったら爆笑されそうなんだが? ……いや待て落ち着いて欲しい、あれ……これ俺が邪神ってバレたら滅ぼされるくないか?

 あば、あばば……勇者は邪神とか魔王に特攻がある女神の加護を持ってるしバレたらヤバイぞ、えどうすんの? なにそれ新手の自殺?


「あれ、師匠? どうしたの震えてるけど……」

「……いや、なんでも。それで何の用なんだ?」

「あ、そうだった。えっと聖都の学園の先生やって欲しいんだー!」

「えっと誰が? どこの?」

「師匠が聖都のだよ?」

「……なんで?」

「私が推薦したからかな?」

「ご冗談でしょうグレアさん?」


 聖都と言えば数多くの神を祀っている場所で、完全なる敵地である。

 そんな場所に行けとか正気じゃない。そもそもだ……そんな場所で教師をやれるほどの実績なんて持ってないぞ俺? 

 聖都の学園は世情に疎い俺でも知っているが、この世界最高峰のものであり一般人の身分を偽装している俺からすると足なんか踏み入られない場所だ。

 それに俺が行くのか? いや、ないって。

 俺は邪神とは言え、前世は一般人メンタル。

 昔は良かったが、発達したこの時代で貴族とかエリートが通う学園の教師をやる? ……なんの冗談なんだろう?


「というか、よく許可通ったな……」


 再三いうが聖都はこの世界の要、そんな所に素性も知らない田舎の奴が入れるとは思えない。

 勇者の推薦があるとはいえ、過去にも聖都には数多くの勇者が在籍していた訳で早々認められる事ではないはずだ。それこそ、俺を聖都に通して良いと許可した馬鹿と推薦したアホが数人いないと許可など出ないはずで……。


「だって聖都には師匠の弟子が結構いるからね! 皆に掛け合ったら結構簡単に通ったよ? なんなら教皇はアリアさんだよ」

「……まじ?」

「おおまじ?」


 ……アリアというのは俺の弟子の一人で魔法が得意な優秀な子だった。

 ハーフエルフという立場故か一人だったが、偶然見つけて数年過ごし……じゃなくて――なんで教皇やってるんだよ!?

 え、あれって相当な血筋か能力がなければなれないはずだよな……。


「これ教皇の御璽。ちゃんと連れてきてって言われてるし、来なかったら泣くって」

「それ……断れないやつぅ」


 聖都の教皇と言えば、国の王と殆ど変わらない。

 それを断れば待っているのは死であり、そもそも断れる選択肢が存在しないというか? え、なに……俺今から敵地に行くの?

 邪神とは言え、今の俺は一般人。

 断る事など出来ず敵地に向かう事になった。

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