第4話フクロウ

 チィチィは地面のくぼみにすわって、こっくりこっくりいねむりをはじめました。

 まわりに体を隠すような草さえ生えていない場所です。おかあさんが見たら、『なんて危ない』とおどろいたでしょう。


 でも、おかあさんはいません。まだ子どものチィチィにはそんなことはわかりませんでした。


 あたりが暗くなって、まわりが静かになりました。

どこかでチチチチ、ホーホーホーと鳴く声が聞こえてきました。


 メガネザルの耳には、人間には聞きとれない高い音も聞こえます。あちこちで夜の生き物が動く気配が伝わってきました。


 そんなたくさんの音の中から、チィチィはなつかしい音を聞き取りました。

 おかあさんの声です。チィチィを呼んでいます。


 チィチィは、ピョンとジャンプして、おかあさんの声がする森の方へかけ出そうとしました。


 チィチィがすわっていた地面のくぼみを飛び出したと同時に、空から大きい鳥が降って来ました。フクロウです。


 幸運なことにチィチィが飛び出したので、フクロウの爪につかまらなくてすみました。


 フクロウはネズミやメガネザルのような小さな生き物をつかまえて食べてしまいます。チィチィが虫をつかまえて食べたのとおなじように、フクロウは空の上からチィチィを見つけてつかまえようとしたのでした。


 チィチィはピョンピョン飛ぶようにしてかけ出しました。


 お昼は木の枝に止まって動かないフクロウも、夜にはすばやく飛びまわって獲物を捕まえます。

 チィチィは、草むらに飛び込んで体をかくしながら、必死で走りました。

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