タイツロス~タイツときどきドキドキぱんつ~

風若シオン

第1話 誰がためにタイツを履く

 気がついたらタイツを奪われていた。

 これは一大事だった。なんせこの星ではタイツ無しの状態では1時間も生きれないのだ。

 それに、1時間経って唐突にしぬのではなく、空気によって脚が蝕まれることが原因でタイムリミットが1時間。というだけだから、いまこの瞬間にもおれの寿命は減り続けていた。

 こんな適当なことを考えてタイムロスしている場合じゃないのだ。いや……タイツロスといったところか。

 どうでもいい。

 とにかく、おれは警察に駆け込むことにした。自分で犯人を探しても見つかるわけないし。どれだけの人がいると思ってんの?

 警察署にいくと、タイツを支給された。おれの寿命の減少は止まった。後遺症もあんまり残らないらしい。

 当然の対応だった。そもそも、予備のタイツを持っていないおれが異常なのであって、たいていの人間は予備のタイツを持っている。みんなタイツが破れたとかで死にたくはないのだ。

 犯人はまだわからないが、警察の全力を持って探してくれると約束してくれた。まあ、ちょっとテレビのニュースになって終わりだろう。

 命の危機に瀕したのにこんなもんかぁ、と日常の強さに辟易して、おれは自分のタイツを脱いだ。

***

―私が彼のタイツを奪ったとき、彼は気付いていなかった。あの後、彼はどうしたのだろうか。私はタイツ会社によるプロパガンダに洗脳された世界の人々の目を覚ますため、タイツ強盗として日々精進している。なんでタイツ履かなきゃしぬ、なんてバカなコトがあると信じているのだろうか。タイツリーパーの私は未来からタイツ財閥の横暴を防ぐため過去に来ている。全くバカな時代である。履かんでええっちゅうねん……

あ、仕事の時間だ。腕時計、盗んだタイツを入れる袋、携帯、予備のぱんつ、鍵、昼食の弁当を忘れていないか確認。あ、ぱんつ履くの忘れてた。この惑星に蔓延してるの、実はタイツが必要なんじゃなくて、ぱんつ履かないと死ぬ病気なんだよね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る