眼鏡越しのきみの笑顔

天雪桃那花(あまゆきもなか)

かっちゃんの笑顔 前編

 わたしは急にめがねをかけなくてはならなくなった。

 お父さんも目が悪いのでたぶん遺伝みたいです。


「あーあ、やだなあ」


 わたしは眼科のある病院の待合室から、憂うつな気分でした。


ゆいによく似合ってるわよ、そのめがね。とっても可愛いから自信持って!」


 お母さんにいくら可愛いって言ってもらえても。

 ぜんぜん嬉しくなかったです。


 だってね。

 このあいだ学校にめがねをかけてきた子が、すごいひやかされてて。


 なんだかその子が可愛そうだったからね。

 わたしと他の女子たちで、そのひやかした男子に文句を言ったの。

 そしたら、軽い言い合いのつもりが、白熱したけんかになっちゃった。


 いつのまにか、クラス全部が大騒ぎの、女子対男子の口げんかバトルになっちゃった。


 その始めにからかった男子が謝ってきて、なんとか収まったけど。


 はあぁ〜、気が重いです。


 

 ――あと、ね。

 めがねをかけたわたしを、かっちゃんに見られたくないな。


 ……かっちゃん。


 あのね、かっちゃんはわたしの大好きな人です。

 彼は、ひとつ年下の幼馴染みなんだ。


 わたしのめがね姿。

 あーあ……、いやだなあ。

 だって、ぜんぜん似合ってないんだもん。

 

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