青い桜はまだ春を知らない。
朱宮あめ
プロローグ
僕の世界はいつも、曇りガラスの内側にあった。
外は青空なのだろうけど、窓が曇っているせいでうすぼんやりとした灰色の空しか見えない。
青空に恋しさはあるけれど、窓を開けたいとは思わなかった。
だって、僕にはそんな資格はないから。
僕は……みんなと同じ青空の下には行けない。行く資格がない。
だけど、ある日。
締め切ったドアを無理やりこじ開けてきたひとがいた。そのひとは、ガラスの内側でうずくまる僕の手を取って、青空に向かって駆け出した。
優しい陽だまりに目が眩み、怯える僕を、君は当たり前のように優しく包む。
僕たちは、まだ青いつぼみ。
色づく春を待っている。
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