育児は小説より奇なり

あかつきりおま

寝相

川の字で寝ているご家庭の母親にあるあるだと思うのだが、何故か彼らは母親にくっついて寝ようとする。いざ寝ようとしたときにどんなに遠くに転がっていても、朝になれば彼らは母親の布団に入っている。自分の布団を与えられているにもかかわらず、だ。なんなら母はその布団から追い出されていることもある。


素晴らしい寝相だ。

その体に万歩計をつけて就寝時間中の歩数を測りたいぐらいだ。一体どれだけ移動しているというのか。寝ている間ぐらいじっとしていればいいのにまだ動くのか。そのエネルギーちょっとおかんに分けてくれよな?


それだけ動くということは、障害物(母)にもぶつかるということだ。

彼らは基本的に障害物は「相手が避けてくれる」という思想の持ち主なので、何かにぶつかったときは全力で排除にかかる。それが母であってもだ。そのため、容赦ない蹴り、頭突き、正拳突きが突如襲ってくるのである。母にとって就寝時間は安全な時間帯ではないのだ。むしろ無防備な状態で攻撃を食らう可能性が高い危険な時間なのである。


一方で寝相が良いこともある。寝心地がいいのか深い眠りなのか、ほぼ動かないこともある。だが、母にくっついているときにそれをやられると、母は一切身動きが取れず寝返りの打てない状態となる。寝返りは体に負担がかからないために行うという説が非常に身にしみる瞬間だ。身動きの取れない状態で長時間横たわるというのはかなり苦しい状況であることを思い知る。それが体がまっすぐの状態であるとは限らず、場合によっては体を折り曲げた状態のまま、横向きのまま、変な態勢のまま、ということもある。また、彼らも母と同じ角度で寝ているとは限らない。突き刺さるようにして寝ていることもあれば、折り重なろうとして寝ていることもある。

体を小さくするしかない態勢の母は時々思う。「屈葬やんこれ」と。



冬場は特にこの現象が多い。母は熱源扱いなのかもしれない。

彼らがくっついていると暖かいのは正直ありがたいし、愛しいことではあるのだ。しかしそれ以上に睡眠時間を確保したい、良質な睡眠を取りたい、途中で起きたくない、その気持ちが勝ってしまう。

母は君たちを産み落としてから、いや身籠もってからあんまり眠れていない日々を送り続けているのだよ。ずっと睡眠不足か残念な睡眠の質で生きている。



そんなわけで「早く誰にも邪魔されない睡眠環境で寝たい」と切に思う。

しかし一方で「子どもと寝られるのも今だけだよな・・・」と思う心もあり。

どちらも正直な母のココロ。

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