第20話 書庫

「まあ、その本の魔法式を読んで書名を特定するのが私の初仕事という訳ね?」

「はい。閉架で保管しているので書庫にご案内しますね」

「お願い」


マリアはパーティーでレディをエスコートする紳士のように私の隣に立った。昨日と同じように奇妙な感じがする。


「?どうかされましたか」

「いえ、何でもない」

「そうですか」


マリアは不思議そうな顔をしていたが、まさか貴方にエスコートされているみたいで奇妙な感じがするとは言えまい。実際、私がここで仕事をするのは初めてだからエスコートでも間違いはないのだろうが。


「ここです」


マリアは廊下の奥に行ったところで立ち止まった。見ると、頑丈そうな扉がある。魔導書を保管するためとはいえありものの建物の中によく設置したものだ。


「ここの鍵は今私が持って来たのと、総督府管理のスペアキーの二本しかないので注意してください」

「わかったわ」


今まで見た中で一番ごつい鍵を使って開錠して入ると、部屋の中には魔力が充満している。壁周りには木製の本棚が置かれており、そこに何冊もの本が収められていた。


「クラスⅣもここに?」

「はい。クラスⅢB以上の魔導書は書庫に保管してあります。もし、閲覧希望者が現れた場合には閲覧室横の個室で閲覧してもらうことになります」


まあ、そうだろう。クラスⅢB以上はけた違いに値が張る。うかっり盗まれでもしたら一冊でも大損害だ。


「それで、発掘図書はこれです」


マリアは棚の中にあった金属の箱を取り出していった。”13”と数字が書かれたラベルが貼り付けてある。


「……ちなみに、そのラベルの”13”という数字にはどういう意味があるの?」

「多分、資料箱の番号だと思います。少なくとも魔法図書館に採用されている本のナンバリング方式とは異なっているので」

「本の番号じゃないの?」

「そうだと思います。領校で箱に入れて管理されてたのがそのまま内に送られて来たのだと思います」


確かに、発掘図書だのなんだのよりは13番の箱の中身、とした方が分かり易くて良いだろう。


「それでは、作業室の方に参りましょうか?」

「ここで作業してはいけないの?」

「万が一魔導書の魔法が暴走して他の魔導書に影響を及ぼしたらいけないので」

「まあ、確かにそうね」


以前、お母様に聞いた事があったのだが魔術的な手法で記述される本にその本に込められた魔力よりもそれを上回る魔力を浴びせられると読めなくなることがあるとか。お父様はそれを聞いて「まるで磁気テープだな」と言ってました。


…………磁気テープって何?

未だにお父様に聞けていない事、その21である。

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