第44話【大地の試練】届かぬ領域【攻略配信】

「デカすぎじゃね…?」

『第2形態キター!』

『これはラスボスですわ』

『人型のときはあっさりだと思ったがまさかの形状変化するタイプのボスですか…』

『これ動画だとわかりにくいけどめちゃくちゃでかくね?』


 巨大な龍は上に上にと登っていき、目視できないほど上の方に登っていった。


“まさか、分体とはいえ吾の体を一撃で屠るとはな”


 黄金の龍が闇に消えたあと、どこからかそんな声が聞こえる。


“もう手加減はせん。貴様らは、吾が大地に至る時、障害と成り得る存在…生かしてはおけぬ!”


(来るっ!!)

 

 ほぼ勘だけで、横に飛ぶ。


 すると、壁から飛び出してきた龍はさっきまで立っていた場所を通過し、地面に消えていった。


 なるほど…この空間が無駄に広い理由はこの為か。


「……どこにいるんだ…?」


 辺りを見渡すが、奴は見つからない。地面や壁に潜れるようだ。


 それに気配も感じられない。つまり、突然襲われる可能性があるというわけか…


「フラム…後ろで待機だ」

「宜しいのですか?」

「あぁ。ここからは4人でやる」


 まだ余裕はある。サキの言うことには完全に同意だ。ここは楽をするべきではない。


 これは試練だ。強くなるための試練。


 なら、少しくらいチャレンジしてみるのも悪くない。


「さて…どこから来るのかっとおっ!?」


 そんな情けない声を上げながら横に避ける。


 すると、さっきまでいた場所に巨大な尾が叩きつけられた。


「こんにゃろっ!!」


 その大きな尾に思いっきりバールを振り下ろすと、ザッと言う音とともキラキラとした粉が宙を舞い、黄金の尾に傷が入る。


(思ったより柔らかいのか?)


 そう思うが、どうやら違うようだ。


 散った粉が、逆再生のように傷に近づき元通りになる。


 そのまま滑るように振るわれた尾をバールで受け止めるが…


「おっもっ!!」


 圧倒的質量によって吹き飛ばされる。


 これは面倒だな。その大きさもだが、どう殺せばいいのか全く検討もつかない。


 首を落とす?あの太さの首をか?一撃であの首を落とすとか、一体どれだけ巨大な剣が必要なんだよ…


 しかもあの再生能力だ。あんな速度で回復するなら首を落とすなんて現実的ではない。


「水よ!」

「穿け」

「頑張ってくださいー!」


 俺がそんなことを考えている間にも、戦況は進み続ける。


 サキの水は…駄目だな。俺よりは削れているもののどんぐりの背比べという程度だ。同じ弱点のままではないというわけだろう。


 ルエルはパイルバンカーで削るが…駄目だ。どれだけ大きくても一瞬で直されている。


 ラクナは完全に応援をしているだけだ。武器を持たせておけばよかったか?


 と、そんな感じで各々が攻撃をするが、人型を相手にしたときと同じく、弱点を見つけ出せないのであった。


 こんなときは、奇想天外な発想で何かしら見つけ出すのが主人公の役目なのだが…うーん、わかんねっ!


 とりあえず突撃だと足を動かす。


 狙うは…首!

 

 ザシュッという音と、さっきよりも深い一撃が命中するが、そこに生物としての肉体はなく、光る粉が散るばかり…


「ブッッ!ペッペッ…くそ…砂じゃねぇかよ!」


 口に入った砂を吐き出す。


 どうやら、ヤツの体は光る粉ではなく、砂で形成されているようだ。


「このっ…うざすぎるだろおい!」


 バールでやつの体を削れば削るだけ砂が宙を舞い、目に砂が入る。


 大振りの攻撃であるためとりあえずは直撃することはないが、早いし大きいしで厄介だ。


 それに、砂で構築された体はどれだけ削ってもすぐに修復され、ダメージを与えれているとは思えない。


「まじでどう倒せばいいんだよ!?」

『こういうモンスターって核とかがあるんじゃないの?』


 そこでコメント欄のアドバイスが目に入る。確かに、スライムなどの不定形のモンスターには核があるのが定番…って言うけど…


「見えないよなぁ…」


 砂の体には、核がどこにあるのかなんて全くわからない。


 闇雲に探しても途方もない時間がかかるだろうし、動かせるのだとしたらもうお手上げだ。


「おっ…と」


 こんな巨体から繰り出されているとは思えないほど早い一撃。避けるのも一苦労である。


「ん?あれって…」

 

 そこでよく観察すると、部屋の一番奥、入り口から対角線上の場所に台座の上に置かれた小さな宝玉が目に入った。


 俺の心臓であるダンジョンの核より少し小さな大きさの黄金の宝玉。


 ………いや、絶対あれじゃん!?


 何一つ隠されていない、あまりにも堂々と設置されていて全然気にしていなかったが、どこからどう見てもダンジョンの核である。


「油断大敵ぃ!!」


 俺は宝玉に向けて走り、バールを振るうが、下から湧いてきた砂が宝玉を隠す。


「ちょっぉぉぉっ!!?」


 振るったバールは砂を削り取るだけで、宝玉までは届かない。


 そして、真下から更に砂が湧き出し俺は宙に吹き飛ばされた。


「貫きなさい!」


 そんな俺に続いてサキの水の槍が飛来するが弾かれる。


 山のように宝玉を包み込む砂は、まるでとぐろを巻いた蛇のようだ。

 

“はっ…吾の核を傷つけられるとでも思うたか?”


 そして、その壁を突破できない俺達を嘲笑うケリオ。


 そのままどんどんと砂の球体は大きくなる。攻撃の手はない。どうやら守りに力を注ぐようだ。


 そんなに守りに力を注ぐならはじめからこの部屋に宝玉を置いて置かなければいいものを…


 そう思うがどうしようもない。俺やサキでは火力が足りなさすぎる…が、こちらにもまだ手はある!


「ルエル!」

「了」


 後ろを振り返りそう声をかけると、しっかりと準備をしていたルエルが巨大な砲の引き金を引く。


 先程のよりも高威力の光が放たれ、砂の壁に直撃する。


“ォォォォォォォオオオ!!??!!”


 まるで花火のような閃光が辺りを照らす。


「駄目……じゃない!?」


 光が晴れるとそこには砂ではない黒ずんだ壁。


「あれは…ガラスか!!」


 周りから砂はゆっくりと集まってきているが、周囲の砂はすべてガラスとなっていて修復は遅い。


 ここしかない!


「サキ!ラクナァッ!!」

「お任せください!」

「はいぃぃっ!」


 何も言わず、ただ名前を呼ぶだけで俺の意図を理解したサキは水を放ち、ラクナは俺に向けて鎮静化を掛ける。


 そのまま俺は、黒ずんだ壁に向けてバールを振り下ろした。


 水で冷やされたとはいえ、千度を超える超高温のガラス。普通なら触れることすらできないだろうが、今の俺は違う。


 そう、今の俺は鎮静化を受けているのだ。どれだけ傷を受けても、痛みも熱も感じない。


「おりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃ!!!!」

“その手をトメロオオォォォォォォォォォ!!!!”


 ガラスを砕き、砕き、砕き砕き砕き砕き砕き、核に向けてバールを振るい続ける。


 そしてついに…


「どっこいせぇゃァァァァァァァ!!!!」


 中が見え、ついに核が顕になる。バールの釘抜きが触れるか触れないかのギリギリ。そして…


「あと一発ぁつっっ!!?」


 その瞬間、内側から更に砂が吹き出し、はじき出されて俺は受け身も取れずに地面を転がる。


“よくも吾の体ヲォォォォォォォォ!!”

「くそっ…」


 核からどんどんと砂が湧き出る。なるほどね…宝玉は砂を出す為に必要だからこの部屋にあったってわけかよ…


 もう一度、そう思い立ち上がろうとするが…


「いっ…」


 どうやら転がったときにちゃんと折れていたようだ。


 あらぬ方向に曲がった足…うへぇ…グロすぎワロた。


「主よ。申し訳ありませんが…これ以上は厳しいと判断します」


 そこで、フラムがそう俺に声を掛けてくる。


 情けない。あんな堂々と後ろで待機だとか言っておいて結果がこれか…武器は砂に飲まれ、チャンスは俺の実力不足で逃してしまった。


 諦めたくない…が、これは引き時だろう。


「…ごめん、フラム。あとは任せてもいいか?」

「勿論でございます」

「──────っ!!!?」


 その瞬間、目の前から光が溢れる。天使を召喚するときと同じ、いや、それ以上のエネルギーを感じる。


 今までの強い、頼もしいという安心感とは違う、圧倒的な力に対する恐怖が全身を支配する。


 膨大な光を纏った剣の切っ先を持ち上げ、彼女は剣を真っ直ぐに構えた。


 彼女の動きのすべてが、スローモーションのように見える。


 まるで、本物の芸術を目の当たりにしているかのような、彼女の一挙一動が魂を震わせる。


 一歩、彼女から少しでも離れようともう動かないと思ったボロボロの体が無意識に後ずさる。


 畏怖、というものなのだろう。

 

 これは彼女と俺の…いや、人間と天使の明確な違い。努力だけでは届かぬ生まれながらの才能による力だ。


『ヒエッ』

『鳥肌ヤバイ』

『なんかヤバくね?』

『ちょっとトイレ行ってくる』

『母さん!俺の布団濡れてるんだけど!?』

『あぁ、これが死か…』

『ぇ?ナニコレ夢?』

『逃げてノスター!超逃げて!』


 カメラから見ているはずの視聴者すら、彼女に明確な恐怖を抱いていた。


 そうして、彼女はそのまま剣を振り下ろす。


“なんだ…その力はァっ!?今まで、いや、アノ時から隠しテいたノカ!貴様、神の使徒ではないな…!!!もしや人間ノ─”


 























「────────神炎フラム




















 そうして、美しき太陽が大地を照らした。
















──────────────────────

以外特に本編に関係のないあとがき

というわけで、どうにか一章を終わらせることができました。

正直戦闘シーンは苦手で駆け足です

自分なりにどうにかしたつもりですが、やっぱり下地も何もないスタートだったので設定が固まってないです(泣)

自分でも見れたもんじゃないなと思いますね


ルエルのバスターランチャーの威力とかフラムの一撃とか色々わかりづらいなと自分でも思います

砂をガラスにするほどの威力をルエルが出せていいのか?とは思うでしょうがこっちは二章で明らかになるかと。

一応フラムの力にもワケがあるので後ほど…説明するかなぁ…?


一章で40話かかるのは予想外でした。これからはサクサク行きたいと思いますが、試練編以外にも色々入れたいのあるので数百話は覚悟しておいてください

完結してから見に来てくれてもいいよ!!というか完結したらでいいので見に来てください!それまでにはもう少しまともな文を書けるようになってるので!


というわけで…私の成長はこれからだ!


〜Fin〜(終わらないよ!)


【重大告知?】

本日の夕方、新キャラの安価を取ります!

情報は先行公開でサポ限定で投稿しています

時間はそちらで見たい方はどうぞ

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