第37話【結果は必然】大抵のことは些細なこと【人生のツケ】
静かなBARで、美しく透き通った水色の液体の入ったワイングラスに口をつける
この雰囲気…うーん、最高だ。
これは、傍から見れば誰もいないBARのカウンターで酒を嗜む謎の人物という感じではないか?
ここに主人公のような人物が迷い込み、相談を受けたりとか…いいね。
ちなみにこのBARにいるのは俺と一人の天使だけである。他の客には別の場所で飲み物などを提供して、現在ここは貸し切りとなっているらしい。
「それで、今日は何があるんですか?」
「何がって?」
「いやいや、突然ここを貸し切りにしてお二人で密会なんて…そりゃナニするか気になるじゃないですかぁ〜!」
ニヤニヤしながら俺に質問してくる美女。
彼女の名前はシュエル。ショートの茶髪にきちっとしたタキシードを身に纏っている。
彼女の能力は神酒醸造。簡単に言えばとても美味しいお酒が作れるという能力である。
俺の好みも一瞬で見抜かれてしまった。とんでもない観察眼もお持ちのようだ。
そんな彼女だが、天使の割にとても俗物的である。
俺にも敬意もありながらフレンドリーな感じで…まあ接しやすい女性だ。こういう感じのほうが助かるんだけど…天使のみんな何故か堅苦しいし距離を感じるんだよなぁ…
とはいえ、今日はクールなノスターさんなのである。彼女への返事もクールに決めるぜ!
「ナナナナナニッテソンナコトスルワケガニャイジャナイカ」
「なんでそんな動揺してるんですか…?」
動揺なんてしてないのだが…どうやら彼女はなにか勘違いをしてしまったようだ。とはいえ今日の俺はそんなことを指摘したりはしない。俺は女性に気遣えるイケメンだからね!女性のミスは気が付かないふり…イケメンの基本である。
そこで、BARの扉が開き、一人の美少女が入ってくる。
「すみません、お待たせしましたか?」
「いや、今来たところだよ」
丁寧な口調で俺にそう聞く彼女は、いつもより少し落ち着いた、高級感の溢れるドレスを着ている。
ん〜…完璧ですな。こりゃ惚れる人間も多いだろう…
あのカジノには、当然ギャンブル目的で来る客も多いが、一番多いのはサキ狙いの人間だろう。
彼女は周りの天使と比べても雰囲気が少し違い、なんというか人を引き寄せるような親しみやすさがある。フラムのような人を近づけない神々しいというような美しさとはまた違った、美術品のような感じなのだ。
しかもだ。他の天使はカジノのディーラーとしてでしか話せないのだが、サキは積極的にカジノの人間に話しかけているため、天使と話せる貴重な場だと色んな方面から大人気である。
まあ、当然その間に彼女の仕草や声に惚れて、恋をしてしまう客も多いようだが…
そんな彼女が、いつもよりバッチリと決めているのでそれはそれはなんというか…すごいねって感じだ。俺の語彙力ではこの褒め言葉が限界である。
「………」
「………」
「………」
………さて、気まずい。この空気、一体どうすればいいんだろうか?
デートに誘ったのは俺なのだが…まあデートなんてただの口実だ。今回俺にはやらねばならないことがある。
それは…命令権の回収だ。
現在彼女が保有している俺のことを好きにできる命令権の数は15枚。
普通なら全部没収なんてできるわけはないが…今回は違う。
俺は圧倒的な豪運によって彼女に勝利したのである!
ロイヤルストレートフラッシュ…俺は初めての見たね。
サキはストレートフラッシュというほぼ最強の手札だったが、俺はその更に上を行った。
そして得たのは彼女の全権利。これはもう勝ち確定と言っても構わないのではないだろうか。
というわけで彼女から命令権を取り返したいのだが…なんと切り出せばいいのか…
正直本当に偶然の産物だったので申し訳ないし、1回運で勝ったからと言って全部没収というのは男としてどうなのかという気持ちもある。
でも15回は流石に終盤エスカレートしそうなので減らしておきたいのだが…うぅーん…
「……あっ!そういえば、明日の仕込みしなきゃいけないんでした!失礼しますね!」
「えっ!?ちょっ…」
突然声を上げ、カウンターから奥に引っ込むシュエル。気まずい空気に耐えられず逃げやがったこいつ…!
「……それで、ノスターさん?」
「は、はい…」
「私はノスターさんの物となりましたが…どうしますか?」
上目遣いを駆使して俺に確実にダメージを与えてくるサキ。うっ!この小娘、先手を打ってきやがった!
だが、別に返答は決まっている。
「別にどうもしないよ。というか別にお願いすれば聞いてくれるでしょ?」
そうなのである。ある程度個体差はあるが、天使の皆はどんな命令もだいたい受け入れてくれるのである。
そのため、彼女を物扱いする必要なんてどこにもないのだ。
「そう…ですか…いや、そうですけど…」
だが、彼女は少し不服そうだ。
なにか選択肢をミスったのか…?いや、ここまで選択肢という選択肢なんてなかった。
うーん、わけわからん!よし、ここはもうさっさと本題に入ろう!
「それで、サキ。今回の勝負は俺が勝ったわけだけど…これで命令権が無くなるってわけには…」
「いきません」
「ですよねぇ…」
俺がデートと称してサキを呼んだ訳をしっかりと理解していた彼女はすぐさま俺の提案を切り捨てる。やはり流石にそれは駄目なようだ。
「これって命令権何枚分?」
「…3枚程度では?」
「3枚!?流石に少なくない!?」
「いえ、ノスターさん。命令権はどんなことよりも優先される絶対的な権利だと話し合いで決めたはずです。確かに私はすべてをノスターさんに捧げましたが、だからといってその一勝で命令権15枚と価値が釣り合うでしょうか?」
「ん?ん〜…たしかに…?」
「それに、ノスターさんに私の願いを叶えられないことはないでしょう?なんだって創ることができるのですから」
「まぁ…そうだけど」
……確かに、少し俺も欲張りすぎていたのかもしれない。彼女が俺の言うことを何でも聞いてくれる天使だからということで少し無理を言ってしまった。反省せねば。
それに、今まで彼女は一度も命令権は使用していない。なのに全部没収というのはあまりにもパワハラが過ぎる。
レディーの願いの1つや2つ、叶えてやれなくて何が男かって話だ。
「それに、私達天使はもとより全てをノスターさんに捧げています。今までと何も変わらないのに、命令権と同じ価値があるのでしょうか?」
「ふむふむ…」
「で、あれば私の命令権の数は変わらず、ノスターさんも命令権を1枚得る、というところが落としどころではないでしょうか?」
「………そうだね」
うん。彼女がそこまで言うならそうに違いない。
よし、命令権を手に入れたぞ!
これはなかなかの成果では…
「あれ…?でも、それだと、1枚分しか…」
「ノスターさん…そんなことより、今日はデートですよね?一緒にお酒でも楽しみませんか?」
「え?あ、まぁ、そうだけど…」
「シュエルもいませんし、私がお酒を入れますね?」
そう言い、彼女は俺のグラスにお酒を注ぐ。
………まあいいか!こんな可愛い女の子にお酌してもらえるなら大体のことが些細なことだよね!
そうしてノスターは、考えることをやめたのであった。
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以外特に本編に関係のないあとがき
えぇ〜ちょっとリーリヤちゃん可愛すぎませんかねぇ…?
推しが増え過ぎて困るんですが?
自分の良いところでもあり悪いところでもあるんですが、どんなキャラでもエンドを見ると好きになっちゃうんですよねぇ…白線、凄いいい歌だった…
リーリヤ最高!リーリヤ最高!リーリヤ…はっ!危ない…あと少しでリーリヤ専属Pになってしまうところだった…リーリヤ、恐ろしい娘!
というか、ことねも広もリーリヤもあたしのこと好きすぎ!?
と、そんなこんなでプロデューサー活動が忙しくて最近小説を書くのをサボってましたね。これからがんばります。
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