第32話【遂にダンジョン】サプライズイベント【グランドオープン!】
ざわざわと騒がしい会場は中央に現れた人影によって一気に静まり返る。
「…あ、あーマイクテストマイクテスト………よし。大丈夫そうだな」
ごほんっ!と咳払いをし男は言う。
「会場にお集まりの皆さん初めまして、私…あ〜いや、俺の名前はノスターだ。よろしくね」
1人称がしっくり来なかったのか、私から俺へと1人称を変えたノスターは観客席に向けてフレンドリーに手を振る。
「えーっと…じゃあまずはうちの中でもトップの天使を紹介しようと思う。ま、ここに来てるからには知ってると思うけど…」
すると、ノスターの後ろに、二人の人物が現れる。
「初めまして。私の名前はルエルです」
「人類の皆様初めまして。フラムと申します」
人には不釣り合いな兵器を手に持った真っ白な美少女と、赤い剣と宝玉を持った美女である彼女たちが会場に向かって礼をすると…
『『『『『うおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!』』』』』
その瞬間、津波のような歓声が会場全体を埋め尽くした。
「はーい!落ち着いて下さーい!」
盛り上がりに盛り上がった会場は、パンパンというノスターの開手が鳴り響くと、まるで彼らは示し合わせたかのように大人しくなる。
「落ち着いたかな?…君たちは本当に欲望に忠実だね。二人でそんなに盛り上がってたら心が持たないぞ?」
すると彼はひと呼吸置いて言う。
「俺はこういう場はあんまり得意じゃないし、校長先生でもないのでサクサク進めようと思ってる。ということで早速本日の目玉と行こう。オープン記念と言うことで特別なイベントを用意しているぞ!その内容は……こちら!!!」
彼が大げさに手を広げると、上の巨大なモニターには…
『熾天使召喚!』
という文字が大きく表示されていた。その文字を見た会場の人々はざわめき立つ。
「ま、予想してた人も多いかな?昨日安価取ったしね。とはいえ、これは記念イベントであり、証明でもある。彼女たちが本当に天使なのかここが本当にダンジョンなのか、君たちはまだ疑っているだろう?このダンジョンも実はただの大型のイベント会場で、これはただのイベントだと…」
ひと呼吸おき、ノスターは続ける。
「だからこそ、この場で証明しよう。俺が本当にダンジョンマスターであり、ここが本当のダンジョンだということを…そして、世界の終焉は刻一刻と迫っているということを!」
そしてノスターは、フラムが手に持った宝玉に手を伸ばし…
会場は真っ白な光に包まれた。
「──────初めまして、主よ」
光が晴れると、そこには美しい少女が彼に向けて跪いていた。
白から青へとグラデーションのようになっているロングヘアの髪、金色の瞳はぼんやりとした表情に眠たそうな目をしている。
外見年齢は16歳ほどで、純白のワンピースを身に纏っており、全体的にスレンダーよりの体型。
そして、熾天使としての特徴である薄っすらと赤みがかった白い六枚の翼と輝かしい光輪。
その外見、仕草、声、全てが美しく完璧で、まさしく本物の天使と呼ぶに相応しい少女であった。
最初に現れた二人の天使のカジュアルで親しみやすい服とは違い、純白のワンピースによって引き出された神聖な雰囲気とその姿に、観客は口を噤む。
「ガブリエル…いや、今日から君の名前はユリだ。よろしく頼むよ」
「ユリ…素晴らしき名を与えてくださり、幸甚の至りです」
「さて、彼女には四層のボス役を担当してもらう。彼女に会いたいのなら二層…いや、三層くらいは簡単に攻略してくれよ?沢山楽しいギミックや罠、そしてお宝を用意してるんだからね。それじゃあ…」
ノスターが指を鳴らすと、全観客の目の前に紙が現れる。
「これから抽選といこう。そこに書かれた番号が前に表示されたら、二層の前に転移される。一度に入れる挑戦者は20名まで、脱落者が出ると新しく抽選となる。協力や邪魔、お宝を独り占めとかドロボーとか、ダンジョン内では何をしてくれても構わないが殺人や怪我をするレベルの攻撃は禁止だ。探索中の映像は、ここの大型モニターとインターネットにも公開されてるから、あまり酷いことをすると普通に探索者として生きられなくなると思うから気をつけてね?俺としてはヒールが20人中に1人くらいいても面白いんじゃないかとは思うけどね」
あとは…あぁ、もう一つ言うことがあった。そう言いノスターは続ける。
「天使を殺すのか、捕まえるのか、当然和解という選択肢もある…が、全ては君たち次第だ。天使は君たちに攻撃はするが、絶対に殺しはしない。とはいえ、もし彼らを殺そうとした場合は執行者である彼女…フラムが出向くことになる。死にはしないのだからと馬鹿な真似をするなら、覚悟しておいてくれよ?フラムに勝てると思うのなら…まぁ、頑張ってくれたまえ」
そのままノスターは息を呑む探索者たちをぐるっと見渡し、告げる。
「────さぁ、始めようか。友情、勇気、愛情、裏切り…沢山の
ノスターは三人を連れて階段を降りていく。そうして四人が見えなくなると…中央には、選ばれた20人の探索者が立っていたのであった。
………………………………
……………
……
「うん、上手く行ったんじゃないか?」
「素晴らしきお話でしたかと」
彼女たちにそう聞くと、フラムだけがそう賞賛の言葉を返してくれる。二人は…一人は何も返事はなく、もう一人は不貞腐れた顔をしている。
「あ〜…ユリ、召喚して早々こんなことお願いしてごめんね?」
「…構いませんよ。私は主様の配下ですからね」
そっぽを向きながら、そう答える彼女だが、その表情はどう見ても不満そうな表情をしていた。
まぁ、お願いしたときからすごい嫌そうだったからなぁ…申し訳ないことをしたが、こういうことは今回だけだ。許してもらいたい。
彼女を召喚したのは、昨日の夜、安価を募集してからすぐだ。いまさっき召喚したんじゃないのかって?そんなわけ無いだろう。召喚したら高確率で全裸なのに、突然あんな人前に召喚して命名なんてできるわけがないのだ。配信もされてるし、動画で撮影もされてるだろうしな。
なのでいまさっきのは完全な茶番というわけだ。
昨日の夜、彼女を召喚してからリハーサルを何度か行いほぼぶっつけ本番での式典だったのでとても緊張した。成功したので良かったが、失敗してたらどうなっていたのか…
「それじゃ、ここからは自由行動で。外に出なければ人間と交流しに行ってもいいよ」
「そうですか」
ユリは俺の言葉を聞くとすぐにスマートフォンを取り出し、部屋の中心にあるこたつに潜り込みネットサーフィンを始める。
………うーん、スマホを与えたのは間違えだったか?
今回熾天使を召喚した理由は、新しい天使をこの式典で発表したかったからだ。
なので昨日の夜、召喚して名前をつけたあと、すぐに台本を渡したのだが…
『嫌っす』
断られたのである。天使って別に全員が忠誠心を持ってるわけではないんだね。びっくりだよ。
フラムはもちろんのことサキなど、今まで召喚した天使は自分で言うのもなんだが言葉の節々から俺への忠誠心が伺えるのだが、ユリは全くの無関心、というか敬意がない感じだ。まあ初対面で敬意云々がある方がおかしいんだけど…フラム基準で考えていたため結構困った。
そんなときに、ユリはスマホに興味を示した。使い方、遊び方などを彼女に教えると、ユリはスマホを与えてくれるならという条件で、どうにか式典に協力してくれたというわけだ。
ジトーっと言う音がしそうなダラダラとお菓子を食べながらスマホを眺める彼女を眺めながら、そんなことを考える。
ちなみに不機嫌というわけではない。彼女はデフォがジト目だからだ。
召喚したときは何か気に入らないことでもあったのかと勘違いしてしまった。
ま、今は彼女には仕事はないし、いくらでもダラダラしてもらっても構わないのだがな。
「さてさて、んじゃこっちもダラダラタイムと行こうか」
机の上に置かれたリモコンを操作し、この日のために購入した大画面のテレビを付ける。
そこには、カジノや観客席、そして20人の探索者を映した画面が表示されていたのだった。
──────────────────────
以外特に本編に関係のないあとがき
まさかの3時間で感想が100を余裕で超えるとは思いませんでしたね。そして1日で200超えって…確かに名前言うだけなので簡単に増えるだろうなとは思っていましたが…えぇ?
投票終了 5/11 午前10:10
総投票数 242票
結果
ガブリエル 86票
ミカエル 83票
ラファエル 72票
で、接戦でしたが、最終的にはガブリエルとなりました。正直こんなにもらえるとは思ってませんでしたね、はい。君たちがちょっとだけ自我出してくるので集計がとても大変でしたね。
とはいえ、こうやって見てくれているんだと知れる機会は私の力となります!これからも一生懸命投稿続けていきたいと思いますので、応援のほどよろしくお願い致します!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます