第30話【ダンジョン制作】ダンジョンの確認をしてみようと思う【31日目】


『──か──けて───い─ぁ─』

(………?)


 声が聞こえる。


 遠くから微かに、だがはっきりと人の声だと認識する。


(昨日はダンジョンの最終調整をしてたから…寝落ちしたか?……………は?)


 目を開けるとそこは赤い大地であった。


 何千何万の人の死体、至るところで燃え盛る炎、硝煙と血の臭いが鼻を刺激する。


「…一体…何が…?」


 近くに倒れていた死体にゆっくりと近寄る。


 それは黒く焼け焦げた……天使であった。


 黒くボロボロとなった体のそばに散った翼が目に入る。


 誰かはわからない。だが、俺は彼女を知っている。いや?知らない。知らないはずだ。知らないはずなのに…


「………───」


 …名前を呼んでも返事はない。そりゃそうだ。ここに倒れているのは魂の無い死体なんだから。


「ぁ…」


 すると、視界の端で何かが光る。なんだ?そう思いその光に目を向けたと同時に…


 その光に呑み込まれるのであった。



………………………………


……………


……




「………んぐぼぁっ!?!?」


 突然腹の上に衝撃を受け目を覚ます。


 そこには、大きな犬…ではなく狼がいた。甘えるように俺の胸に顔をスリスリとしてくる。かわい…くない…!


「マナ重い…!折れる折れる!!!!」


 とんでもない重量の黒い狼をどうにか退けて立ち上がる。


 骨は…折れてないな。危ない。あと少しで骨ごと内臓も潰されるところだったぜ…


 そんなことを考えながらマナの頭を撫でると、マナはゴロンと転がり腹を見せもっと撫でろとねだって来る。


 この可愛い狼の名前はマナ。2週間ほど前に召喚したうちの番犬である。


 ちなみにマナは天使でなく、北欧神話?の伝説の狼で確か元の名前はマーナガルムである。月の犬という意味らしい。ネットで調べただけなので正直合っているかは微妙だがな。


⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯

 名前︰マーナガルム

 詳細︰月を喰らう者

 能力︰影法師

 消費︰300,000DP

⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯


 DPはそこそこしたが、FWは必要なしであった。コスパがいいね!


「ごめんな、今日はちょっと忙しくてな…遊ぶのはまた今度な?」

「くぅーん…」


 そんな可愛い声で鳴いても無駄だ。俺の心は鋼のように硬いのである。黒い毛はもふもふでもっと撫で回したくなるが…ここは我慢だ。


 今の時間は10時か。よし、これからダンジョンの最終チェックとしようか。


 そうして俺は一層に転移を使って移動する。


 そこは沢山の騎士に囲まれた巨大なコロッセオであった。


 このコロッセオに配置した騎士は117人。DP換算で約5,000,000DP…少しやり過ぎたかと思うが、一応ここはダンジョンだ。娯楽施設や宿泊施設を設置しているため人が運営していると思われて舐められると困る。ある程度威圧感は必要だろう。


 騎士天使はFW消費は個体差はあるものの10前後と結構少なく済むのでこれだけの数を用意できたというわけだ。


 コロッセオの中央天井にはダンジョン内部の探索者を追う中継カメラに接続された巨大なモニターが四枚、座席から見れるように吊るされている。


 座席は数万席を用意していて、しかも全て結構質のいい高級な座席にし、定期的に飲み物を売る売り子の天使がコロッセオの治安維持も兼ねて見回る予定だ。


 売り子やカジノなどの接客業を行う天使は意思疎通のできる大天使を数十人召喚した。売り子兼見回りのまとめ役は最初に召喚したラクナに行ってもらっている。


 あれ?FW足りなくない?と思った者たちも多いだろう。俺も正直ここまでの数を召喚できるとは思っていなかった。だが…


「まぁ、流石七億だよなぁ…」


 最近は現場を見ながらの作業をするために常に手に持っていた宝玉に触れメニューを開く。そこには…


──────────────

DP︰1,000,000 DP

FW︰886,000

『召喚』『調整』『交換』

──────────────


 FW886,000。FW消費は大天使一体10,000なので…この一ヶ月で稼いだFWの合計は1,000,000を優に超えていた。


 簡単に言えばバズったのである。その理由は…神薬。つまりエリクサーだ。


 5日ほど我慢し購入したエリクサーを撮影し、その写真をネットに投稿しただけである。


 その日のうちにその写真は、日本だけでなく瞬く間に世界中に拡散された。


 それで興味を持った人たちがネットで情報を調べて俺の配信やスレに辿り着いて…あとはいいね信仰でFWが増えたというわけだ。まあ、深く話すともう少し色々あったが、それは後で話そう。


 最近はFWを無駄にしないように寝る前に宝箱の中身の在庫を購入していて、結構うちのダンジョンも余裕ができてきた。


 熾天使を購入してもいいかもと思ったが、今はアイテムのほうが重要なので手はつけなかった…が、オープン記念も兼ねてそろそろ安価であと三人のうちの誰を召喚するか募集してもいいかもしれないな。


「カルマ、リマエル。どう?覚えれた?」

「主殿!!勿論ですとも!」

「私も問題ありません。というより…カルマさんは覚えることもないでしょう」


 コロシアムの中央、二層に行くための階段の前に立つカルマと、もう一人の大天使に声をかける。


 名前はリマエル。


 灰色の髪と瞳のタイトなスーツを着た天使だ。ヒールを合わせるとカルマと同じくらいの高身長で眼鏡と右目の下の泣きぼくろが特徴的だ。


 ステータスはこんな感じである。


⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯

 名前︰リマエル

 詳細︰順序を司りし大天使

 能力︰日程管理スケジュール

 消費︰100,000DP

⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯


 能力は、簡単に言えばこの時間集まって欲しいと彼女に伝えると他の天使にも共有されるというものだ。


 全体のスケジュール表といえばいいか?


 念話によるアラームなどもしてくれる便利な天使である。


 あ、ちなみに彼女の名前がデフォルトなのは大天使への名付けもフラムに禁止されたからだ。理由は流石に数が多いから。代表的な存在、まとめ役、主要戦力、優秀な天使のみ名前をつけましょうということになった。


 まあ、これから頑張ってもらおう。


 そんなリマエルのその手には一つのタブレットが握られていた。


 カルマの仕事が階段の防衛で、リマエルの仕事はダンジョンの挑戦者の数と回数の上限等の事務作業なのである。


 防衛用の騎士17名も合わせて、合計19名でこの二層の入り口の管理をしてもらう。


 正直ここが一番大変になると思うが…まあ頑張ってもらおう。


「それじゃあ、数日後には人が来ると思うから、しっかり頼むよ?」

「「はっ!」」


 彼らにそう言い、次の現場に向かうことにする。さて、次はラクナの方にでも…


「主様!!おはようございます!!!」

「おっ?ラクナか」

 

 そう次の目的地のことを考えながら移動していると、偶然彼女と鉢合わせになる。


 無駄に歩かなくて良さそうで助かった。


「今の所ラクナが一番部下が多いけど…大丈夫そう?」

「えーっと…はい、大丈夫だと思います!」


 ラクナの担当する売り子&見回りのメンバーは20人。


 しかも全員が自我持ちの大天使でしかも女の子である。同じ大天使である彼女に任せて大丈夫なのかと思ったが…問題はなさそう…だと思いたい。


 まあ一応この一ヶ月、しっかりと教育したつもりだし、その時の感触からして個性はあるがいじめなどを起こすような天使はいなかったと思うし…


「とりあえず最後だし顔出しもしとくか。みんな集まってる?」

「はい。今は全員控室にいるかと」

「おっけー、じゃ見に行こうかな」


 今日一日は部下を応援する日だ。しっかりと挨拶をしていこう。


「みんなー、元気しておぅっっ??!!!」

「「「「主様ぁぁぁっ!!」」」


 そんなふうに気楽な気持ちで向かい部屋の扉を開けた瞬間、油断していた俺は簡単に彼女たちに捕らえられるのであった。




………………………………


……………


……




「……散々な目にあったな」


 ボロボロになった体でどうにかフラフラと廊下を歩く。


「元気なのはいいことなんだけど…流石についていけないな…」


 好いてくれていることはわかるが、なんというかここの女の子たちはスキンシップが激しく遠慮がない。


 そのためすぐにもみくちゃにされるのだ。


 モテる男は辛いぜ…


 と、そんなことを考えているとすぐに次の目的地につく。


 コロッセオの左側にある黒い扉を開くと、そこにはさっきまでのコロッセオとは打って変わって近未来的な大人の空間が広がっていた。


 ルーレットやポーカー、ブラックジャックやバカラなどのトランプゲームに、ダーツやビリアード等の多種多様な遊びを詰め込んだカジノだ。


 軽やかで楽しげな最近話題の有名アイドルの曲が流れている。


 当然無許可だ。こちとらダンジョンなので訴えられても関係ないのである。


 こちらに配置された天使は男性15名、女性24名の計39名という大人数でサービスなどもとても充実させておりダンジョンの中で一番DPが掛ったが、それだけの価値があると俺は読んでいる。見栄え重視のため騎士は配置していないが、大天使の彼らのほうが強いのでその辺りは安心である。


 普通の人は普通のカジノと同じチップと交換システムで、VIPルームという多額の現金を賭ける部屋もあり、いろいろな人が楽しめるような作りとなっている。


 またチップや現金で交換できるものにはダンジョンで手に入る装備やポーション、スキルオーブなどもあり探索者からも人気が出ること間違いなしだ。


「少しいい?サキに挨拶しときたいんだけど」

「主様!?すぐにお呼び致します!」


 台の清掃をしていた天使の少年に話しかけると、少年は慌ててとある人物に連絡をする。


 ここは他と違って結構距離がある。上下関係を重んじているといえば聞こえはいいが、少し寂しい気もする。


 そして数分程度ぼーっと待っていると…


「ごめんなさい。少し遅れたわ」


 青を基調としたドレスを身に纏った、青みがかった白い四枚の翼を持った青い髪と瞳の…青づくしの美少女が現れた。



──────────────────────

19話のフラムの翼について変更しました

白→薄っすらと赤みがかった白に

理由は上位階級で翼に特徴がほしいなと思ったからです

熾天使の光輪は普通です。

理由は一番最初に作られた天使だから特に特徴がないということにしてください(ストーリーには特に関係ありません)

熾天使は薄っすらと赤みがかった6枚の白い翼が特徴です



以外特に本編に関係のないあとがき

オリジナルの場合は〇〇エルなど天使名も書いていただけると助かります。ちなみにオリジナル天使はわかりやすいように〇〇エルでいきたいと思います。

私は命名センスがないので


ここから一気に数が増え、影の薄い天使が増えていくと思いますが、どこかで必ずその天使が中心で登場する閑話を作ろうと思っているので安心してください。


日常パートには登場させますが、シナリオに関わるとなると不明です。


 元ネタのある天使であれば本編にも使用する可能性はあります。


しっかりとどんな設定か考えてくださるとこんな感じでまとめやすいし紹介しやすいので助かります


以下、採用されたオリジナル天使です

⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯

 名前︰リマエル

 詳細︰順序を司りし大天使

 能力︰日程管理

 消費︰100,000DP


灰色のショートヘアと灰色の瞳

タイトなレディースのスーツ

右目に泣きぼくろ&メガネ

キリッと甘々なお姉さん


オリジナル天使 @udon200yen さんより

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