プリンスナイトと式神召喚
「ただいまー」
「うむ、おかえり」
「おかえりなさいませ」
真白の言葉に反応し、白猫とセレナが玄関まで出迎えてくれた。
やっぱり、誰かといるほうが落ち着く。家も二人で暮らすには大きすぎるのだ
「あれ? オーブがいない」
「庭に全員出てもらった。話せばわかる奴らでな、敷地内に居させてくれるならどこでもいいと言っていたぞ」
白猫には、家の中のオーブ(白い光の玉)をどうにかしてくれと頼んでいたのだ。どうやらオーブと話せるらしく、庭に出てくれるように説得してくれたらしい。
「うわぉ……」
目を凝らすと、庭中を光の玉が飛び交っているのが見える。
家の中に居られるよりかはマシで、これで熟睡できるし、趣味や勉強に集中できる。
「真白様はなにが見えているのですか?」
「んー、幽霊とか小さいおじさんにオーブが見えるよー」
「見える様な素ぶりはしてなかったはずです」
「見えないところで誰かと話してたら怖いでしょ? それに不気味な人と思われるだろうし、反応はしないようにしてたんだ」
最初は見える様になって困ったが、見えないふりをすれば襲ってくることはないだろうと思い、見えないふりをしていた。
「よし。夕食まで時間あるし、ちょっと作ってみようかな」
使い切れず余っていた半紙を物置から探し出し、鳥の形に切ってから筆ペンで術式を刻む。
「何をしているのだ?」
「なんか、帰ってくる途中で式神?を見つけたから、作ってみようかと思ってね」
「お主、見ただけで式神が作れるのか?」
「たぶんねー」
(これで完成っと。あとは、霊力? を流し込めば完成なのかな?)
「ほう、なかなか綺麗な術式を描くのぉ」
「わかるの?」
「まぁな、それは見慣れた術式だ。しかし、残念ながら、お主からは霊力を感じない。おそらく、その式神は動かせんぞ?」
「霊力?」
「うむ。一般的に言うと、生命力だな。妖力や魔力と呼ばれる事もある。おもに魂から生み出される力で、この世界の事象へと干渉できる特殊な力の事だ」
真白が式神を見たときに感じた不思議なエネルギーは、その霊力とやらだったらしい。
(ん、ということは……)
「僕には、霊力……生命力が無いってこと?」
「すまん、説明が悪かったな。あくまでも、体から溢れ出る余分な霊力……が無いだけだ。体内の霊力は儂には感じ取れないが、生きていると言うことは、生命活動に必要な霊力は生成されている。おそらく、生成量と消費量が均衡しているのだろう。それ故に、余分な霊力が無いのかもしれん」
真白は焦った。事実、一度死んだ身だなので、自覚がないだけで、実はまだ死んでるのかと思った。
「だがな。式神然り、術式の使用には体から溢れる余分な霊力を使用しなければならないのだ。それが無いということは、お主には式神を始めとしたあらゆる術は、使えぬ」
「そうか……」
結構ショックで式神召喚!とか一度真白はやってみたかった。
やってみないとわからないので真白は好奇心には勝てず、試してみる。
「式神召喚」
半紙に手を置き、真白は霊力?っぽいものを流し込んだ。すると、半紙の鳥が徐々に立体的な形状となり、白いカラスが生まれた。
「おお……出来たー」
「できましたね……」
「お主、何をしておる!」
セレナは驚き、真白はできたことに喜んだ。しかし白猫がキレた。
「体調は!? めまいやふらつき、脱力感などはないか!?」
「だ、大丈夫。何ともないよ?」
薬の副作用みたいな項目で白猫がすごい心配してくる、一体どうしたんだと真白は思う。
「まったく……霊力の無いものが無理やり術を使おうとすると、体内の霊力を使用する事になる。それはつまり、生命維持に必要な霊力を消費するということだ。下手をすれば、死に至る」
「マジですか……」
「真白様、本当になにもないんですか?」
「大丈夫だよ。この通り元気」
危なく真白はまた死ぬとこだった。セレナは体調に問題がないか心配してくる。
「しかし……体内の霊力を使ったにもかかわらず、お主の体調に変化はなさそうだな。ほんのわずかな量でも、使用後は何かしらの症状や後遺症が出るはずだ」
「我慢してるわけじゃ無いけど、本当に何ともないよ」
「ふむ……」
白猫は少し考え込みながら、真白の作った式神を見る。
「まさか……いや、そんなはずは……うむ……」
白猫は何やら独り言をぶつぶつと呟いている。
「どうやら、先ほどの説明は間違いだったやもしれん。お主は術を使える」
「え、本当?」
「ああ。しかし、体調が悪くなったらすぐにやめるのだぞ?」
「了解」
真白もオタクの端くれとしては、こういった不思議な力には目がないのだ。
ふと思った式神を召喚できるならアストラルのスキルを再現できるんじゃないかと。試してみる価値はあった。
「それじゃあ早速。この式神は、どう動かせばいいの?」
「うむ。霊力を細い糸のようにして繋げば、思った通りに動かすことができるはずだ」
「こ、こう?」
指先から霊力の糸を伸ばし、鳥の尾にくっつける。すると、頭で念じた通りに鳥が動いてくれた。
「この式神はどんな事ができるの?」
「そいつは偵察用だ。式神の中で、最も戦闘力の無い種類だな。その代わり、遠くまで飛ばせるうえに、そこそこ速い」
「おぉ……」
習得能力向上のお陰で真白は薄々感じてはいたが、偵察用の式神だった
「だが、感覚を共有して遠くのものを見る事ができるぞ」
「感覚を共有できるのは凄いね、早速試してみるよ」
「まてまて。遠くへ飛ばす前に、接続が切れた時のための命令を与えておいたほうがいい」
「命令?」
「何らかの影響で接続が切れれば、ただの動かない白い鳥になってしまう。じゃから、『接続が切れたら帰ってくる』といったように命令を与えておくといいぞ」
「なるほど……」
それは便利だなと思い白猫の言う通りに、『接続が切れたら帰ってくる』と言う命令を与えておいた。
ついでに、『誰かに襲われたら殺さないように反撃する』という命令も与えておく。
「その命令は無駄になるかもしれんぞ。その種類の式神は本当に弱い。野生のカラスのほうが強いかもしれん」
「そうなんだ」
ま、いいかと思う、戦う機会とかないだろうと。
「よし、飛んでけ!」
カラスは元気よく羽ばたいていった。
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