プリンスナイトとお出かけ
「確かにこれは【追撃】だね。一度目の攻撃と同じ場所にわずかに遅れて同じ攻撃がくるみたい。二回攻撃されてる様に感じるよ」
大盾でシロウの攻撃を受けながらサキが答える。
【レイザ渓谷】の一目のないところで、シロウらは【PvP】によるちょっとした実験をしていた。
ラピスから貰った二つ星スキルの検証である。
【追撃】は単純に一回の攻撃が二回分になるスキルだ。
まず、今のところ、このスキルが発動する頻度が低く、追撃になったりならなかったりだ。これはおそらく熟練度を上げていけば発動率も上がると思われる。
そしてもう一つの【ソードビット】だが。
こちらは二本の剣が現れて相手を自動追尾する能力がある。
操作もすることができて、命じればきちんとその通りに動くことができる。使い方次第では攻撃を弾いたり防御したりすることも可能だろう。
熟練度を上げていけば剣の本数も増えていき威力も上がっていく。スキルのクールタイム短縮付きだ。
二つのスキルはかなり使えるスキルであることに間違いはない。
セレナの貰ったスキルは。
【影移動】はそのまま影を使って移動することができるスキルで攻撃に使うよりも、逃げたり、避けたりする時に使えそうなスキルで、不意をついて強襲をすることにも使えそうだ。
もう一つのスキル【影使い】はこれもまたそのままで影を自由自在に操り、攻撃防御妨害に使えるスキルだ。
「……ねえ、シロウ。そのスキルって、ラピスってNPCから貰ったんだよね?」
「うん、そうだよ。偶然シークレットエリアに転移できてさ。そこにいた【魔族】の女の子に……」
じっと視線をシロウとセレナとレメに向けてくるウェンティにシロウは言葉に詰まる。
「その体に覆ってる……ううん。なんでもない。いいなーシロウとセレナさん。私も星付きのスキルとか欲しいー」
ウェンティが手に持った剣で地面を突きながら口を尖らせる。
ウェンティに追従して横にいたヒナタまでも口を尖らせた。
「私もシークレットエリアに行きたかったなー。今度私も連れてってよ」
「僕は構わないけど、ラピスが了承してくれたらいいよ」
「うん、わかった。約束だからね!」
ラピスが了承してくれたらヒナタをシークレットエリアに連れて行く約束をしたのだった。
セレナと出かける約束をした当日。
普通人とのお出掛けというのは待ち合わせから始まるものだが、セレナの場合うちに住んでいるので々待ち合わせなんてしなくてもいいだろう、という合理的判断だ。
「おはようございます、シロウ様、瑠璃様、紗希様」
「おはよう、セレナ」
「おはようございます!」
「おはよう、セレナちゃん、もしかしてその格好で行くつもりなの?」
「はい、そのつもりですが何か問題でも?」
「問題大有りですよ! せっかくお兄ちゃんとお出かけするんですから、メイド服じゃなくて私服にしましょう」
「セレナちゃん、メイド服以外の服はある?」
「申し訳ありません、私服は持っていなくて……」
「せっかく出かけるんだから、女の子はおしゃれをしなきゃね! セレナちゃん、出かける前に服を着替えようか」
「お兄ちゃん、ちょっと待っててください」
「うん、ゆっくりで大丈夫だよ〜」
紗希と瑠璃はセレナを連れて自宅である四條家に行き、紗希の部屋に案内した。
「セレナさんに似合いそうな服を選びましょう、お姉ちゃん」
「うん、そうだね」
二人はセレナに似合う服選びにやる気満々だった。
あれでもないこれでもないとセレナの服を選んでいく。
「セレナちゃんは可愛いからどの服も似合うね」
「そうですね。どれも似合うのでなかなか決まりませんね」
「お二人共、そこまでしていただかなくても……」
「セレナちゃんには楽しんでもらいたいから、気にしないで。私達はやりたくてやってるんだから」
「そうですよ。セレナさんの服を選ぶのはけっこう楽しいですよ♪」
一時間後、セレナに似合う服を選び終わった。
「うん、セレナちゃんバッチリ似合ってるよ」
「私達が選んだかいありましたね」
「セレナちゃん、服がきついとかない?」
「その……胸がほんのちょっときついです」
「……」
「……」
セレナは恥ずかしそうに答える。
紗希は胸の大きさに自身はある。セレナはの胸は紗希よりちょっと大きかった。
瑠璃は自分の胸と二人の胸を見比べて、落ち込んでしまう。瑠璃はまだ成長途中なので見込みはあった。
セレナの服を選び終わり戻ってくると、瑠璃が落ち込んでいることに気づく。
「何かあったの?」
「まあ、ちょっとね。大したことじゃないから大丈夫だよー」
「それならいいけど……」
気になるところはあるがなんだか深く聞かない方がいいと思い、それ以上は聞かなかった。
「それより、セレナちゃんに似合う服を選んだけどどうかな?」
「うん、とっても似合ってるよ」
二人が選んだだけあって、セレナに似合う清楚系の服装だった。
「それならいいのですけど……そ、その、……笑うなら笑ってください」
「笑わないよ。いつもより可愛いとは思ったけど」
「……真白様はそういう事をさらっと言えるのですね」
「真白君には女の子はおしゃれしていたら褒めるものだって教えたからね」
ほんのりと顔を赤らめてジト目を向ける。
「その……真白様も似合っていますよ」
「ありがとう」
隣に並んだ時に見劣りしそうな気がしているのだが、こればかりは顔の問題もあるので仕方ないだろう。
「真白様、行きましょうか」
「うん」
「楽しんできてね」
「お兄ちゃん、セレナさん、楽しんできてください」
「行ってきます」
「行ってまいります」
二人で同じ場所から出かけるのはなんだかくすぐったいな、と思いつつ、セレナを伴って家を出る。
一応下調べをある程度してはいたが、実際に猫カフェに入ってみると、想像以上に広々とした空間が広がっていた。
受付と手洗いアルコール消毒を済ませた二人がカフェに足を踏みいれれば、猫達がそこかしこに歩いていたり丸まっていたり客と戯れていたりしているのが見える。
「初めてきたけど、割と広くて綺麗だな」
飲食物を提供するのだから当然と言えば当然なのだが、それでも思ったよりもずっと清潔だった。
動物特有の臭いというものはほとんど感じられず、ほぼ無臭。
ネットでの口コミを見たが、衛生的で猫にも配慮した猫カフェだそうだ。
一応下調べをある程度してはいたが、実際に猫カフェに入ってみると、想像以上に広々とした空間が広がっていた。
受付を済ませた二人がカフェに足を踏みいれれば、猫達がそこかしこに歩いていたり丸まっていたり客と戯れていたりしているのが見える。
このカフェは時間制であり料金はお高めではあるものの、それを払っても全く惜しくないと思えるくらいには綺麗で落ち着いた空間だった。
「猫……見て真白、どの子も可愛い」
他の客と猫が居るために小さな声で、それでいて興奮が乗った弾んだ声でセレナは真白の袖を引っ張る。
様々な種類の猫がいて、彼女はきょろきょろしながら瞳を輝かせていた。
普段はクールな彼女だが今は浮かれているのかどこか幼く見えて、こっちが本来の素の彼女ではないかと思うのだ。
微笑ましく見てると彼女は、はっとして自分が浮かれいることに気づいて普段の彼女に戻る。
「……大変お見苦しいところをお見せしました」
「ん、いーよーいーよ。別に普段通りじゃなくて、今日はセレナに楽しんでほしくて出かけてるわけだし、敬語じゃなくてもいいよ」
「……浮かれてるって思ったでしょう」
「思ってないよ。クールなセレナもいいけど、今のセレナは素が出ていて可愛いと思うよ」
「真白はそう言うことをさらっと言えるのはいいけど、そのうち女の子に刺されないでね」
顔を赤らめて、ジトとした目を真白に向けるのだった。
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