プリンセスナイトと現れる強敵

一週間後のイベント告知が来た。

 イベント内容はPvP戦、ポイント制のバトルロワイヤル。参加者全員が、他のプレイヤーを倒した数と死亡回数で争いあうのだ。

 他にも与ダメージや被ダメージによってもポイントが入るらしい。

 

「セレナは参加するの?」

「そうですね。参加しようと思います」

 

 シロウとセレナはイベントに参加するつもりのようだ。他のみんなはまだログインしておらず、ギルドホームには二人しかいなかった。

 今回のイベントはギルド戦ではなく、バトルロワイヤル制なのでソロでの戦いになる。

 シロウはレベルを上げに行くことにした。

 

「シロウ様どこへ?」

「レベルを上げに行こうかと思ってね」

「お手伝いしましょうか?」

「いや大丈夫だよ。セレナは好きにしてて」

「わかりました。お気をつけて」

「行ってくるぜー」

 

 王都を出てシロウはレメを連れて【クリスタル高山】へ向かう。

【クリスタル高山】には硬いモンスターが出現する。シロウは魔法の熟練度も上げようと思い向かう。

 街を出てフィールドに出て【クリスタル高山】に向かっているとローブと仮面を付けた集団のプレイヤーがシロウの前に姿を現した。PKギルド【カレイドブラッド】だ。

 

「この前は私の仲間をやってくれたな」

「なるほど。敵討ちに来たわけですか」

「いいや。我らのギルドマスターがプリンセスナイトの力をご所望だ。我らの仲間になってもらおうか!」

「お断りします。誰が貴方達のPKギルドに入りますか」

「そうだそうだ! 誰がお前達のギルドに入るかよ!」

 

【カレイドブラッド】に勧誘されたが、シロウとレメはプレイヤーに迷惑をかけるPKギルドに入る気はなく断る。

 

 シロウは自分がプリンセスナイトだと分かったのだろうかと思う。知ってるのはギルドメンバーだけだ。

 ギルドメンバーがプリンセスナイトの力をバラすようなする人間ではない。

 

「最後の忠告だ。【カレイドブラッド】に入る気はないんだな?」

「何度言おうがお断りです」

「……そうか断るというなら、貴様を排除する!」

「レメはセレナを呼んで来て」

「わかった! セレナを呼んでくるからそれまで持ち堪えてくれ!」

 

 レメは街の方向に向かって行く。まだログインしていないヒナタ達には今日はログインしてこないようにとメッセージを送った。

 

「我らの仲間にならなかったことを後悔するがいい!!」

 

【カレイドブラッド】のメンバーが現れて大盾、剣、槍、魔法使い、弓とバランスの良いパーティで襲ってきた。

 シロウは相手を注意深く観察する。相手はそれぞれ同時方向から襲ってくる。

 

「【スラッシュ】」

「【乱れ突き】」

「【ファイアーボール】」

「【スパイラルショット】」

 

 前方からの攻撃をシロウは大きく跳躍し、避けてからスキルを発動する。

 

「【サークル・ソード】」

「【カバーリング】」

「【多重障壁】」

 

 剣の嵐から大盾使いと魔法使いは守りを固めて、攻撃から身を守る。

 攻撃から身を守ったが全て防ぎきれずに剣士、槍使い、魔法使い、弓使いはHPが半分以上削られ、大盾使いはHP少し削られた。

 

「【加速アクセル】【ファントムラッシュ】」

「カバー……」

「防御……」

「スパイラル……」

「くそっ!」

「ぐあっ!」

 

 加速して次々と倒していく。大盾使いが残った。

 

「よくもやってくれたな!」

 

 大盾使いが仲間をやられて怒り、シロウに向かってくる。

 シロウよりAGIが低く、シロウ速さを活かして何度も斬りつけていく。

 

「【クロススラッシュ】」

「ぐはっ!」

 

 最後にトドメを刺して大盾使いはHPが0になり、消滅した。

 

「なかなかやるじゃないか」

「それはどうも」

「だが、いつまで持つかな?」

 

【カレイドブラッド】は仲間を呼んでおり、数が多くなり十人以上いる。

【カレイドブラッド】のメンバーはかなり多いと聞く。シロウは面倒だなと思いつつ、人数が増えたことにより気を引き締める。

 

「うへー、めんどくさいなぁー」

「ふふ、いつまでもその余裕があると思わない方がいい」

 

 次から次へと倒しても【カレイドブラッド】のメンバーは増えていき、五十人以上を倒してからは数を数えるのはやめて一心不乱に倒していった。

 

「そんな……この数を相手に一人で戦えるなんて……」

 

 残りは一人となった。

【カレイドブラッド】のメンバー自体はそれほど強くはないが、倒しても倒しても敵が増えていくのにはシロウうんざりしていた。

 シロウはこれで終わりかと思った瞬間。

 

「いやー、すごいですね。一人で大勢のメンバーを倒すなんて」

「そうだなぁ。お前結構、強いみたいだな!」

「君たちは誰?」

 

 なにやら胡散臭そうな女の子とシロウと身長が同じくらいの男の子が現れた。

 

「初めまして私はヤエ。私としてはこのまま倒れてくればよかったんですけどね」

「俺はノウェムだ。ヤエ、それじゃあつまらないだろう!」

 

 新たに出てきた二人は先程の人達より、明らかに別の奴らとは違うように感じる。

 

「もう知ってるとは思いますが、この間の闘技場での戦いを見たうちのギルドマスターがキミに興味津々なんですよ」

「お前の力がどの程度なのか、 調べて来いって言われたんだ!」

「僕としてはこのまま逃してくれると嬉しいんだけどなー」

 

 他の【カレイドブラッド】メンバーと違って、この二人は明らかに実力を感じる。

 

「ふふっ、別に逃げても構いませんよ。私達から逃げられたらの話ですが」

「俺達から逃げられると思うなよ! おりゃあああ!」

 

 クノウは自分より大きい大剣を軽々振り回し肉薄して、大剣を振り下ろしてくる。シロウは向かってくる勢いを横へと受け流し、ガラ空きになったクノウの背中へ【クロススラッシュ】を放とうとした。

 

「させませんよ」

「くっ……」

 

 ヤエから放たれた鞭がシロウの右腕を拘束する。

 

「もらったあ!」

「【サークルソード】」

 

 拘束されて動けないシロウに大剣を振り下ろそうとした。シロウはスキルを発動して剣の嵐が降ってくる。

 

「やっべー」

「厄介ですね」

 

 剣の嵐を二人は掻い潜っていく。シロウは厄介そうなヤエを狙う。

 

「【加速】【クロススラッシュ】」

「私を狙いますか」

 

 シロウは加速からの【クロススラッシュ】を放ったが紙一重で躱せられる。剣を繰り出しても、ヤエは全て紙一重で躱す。

 

「いい加減疲れてきました」

「それなら素直にやられてくれませんか?」

「それはできませんね」

「俺も忘れるなよ! 【メテオストライク】」

 

 大きくジャンプし、大剣がシロウに迫る。

 

「【シグナス・スライサー】」

 

 スキルとスキルがぶつかり合う。防御せず、純粋にスキルで力負けしたシロウは後方へとバランスを崩した。

 

「もらった! 【アバランスラッシュ】!」

 

 大剣を横薙に振り抜く。シロウはギリギリで上体を反らして紙一重で躱し、後ろに跳ね飛んで距離を取る。

 変幻自在を【形態変化】させる。

 

「【多重連弾】」

 

 距離を取るためにノウェムに魔法を放つがものともせずに突っ込んでくる。

 

「おらおらっ! どうしたそんなものか!」

「くっ」

 

 クノウは次々と猛攻を仕掛けてくる。ギリギリのところでかわしていく。突進するクノウの勢いは止まらず、後ろへと押される。堪えきれずにバランスを崩しそうになるが、シロウはなんとか踏み止まった。

 

「【スネークショット】」

「らあっ!【アバランスラッシュ】」

「【防御障壁】」

 

 蛇のようなしなやかな動きをし、シロウの腹に入り、追い討ちをかけた横薙の一撃が入る寸前に障壁を展開するが、壊されてシロウの脇腹に入る。痛みとしては少し叩かれた感じの痛みだが、HPが減っていく。

 ゴロゴロと地面を転がって、立ち上がった時にはシロウのHPは半分削られた。

 あと一撃でもクノウの攻撃を喰らったらシロウは終わりだ。

 シロウは立ち上がり。この場をどうするか考える。圧倒的に不利だが、シロウは諦めずにいた。

 

「なかなかやりましたね。ノウェムやっちゃってください」

「何言ってるんだよ!  ちゃんと報告しなきゃいけないのに、 倒してどうすんのさ!」

「私達に勝てないくらいなら、 別に倒しても怒られないと思いますよ?  だからー、ズバッとやっちゃってください」

「……それもそっか。よし決めた!  ここで倒しちゃおうっと!」

 

 とどめを刺そうとしたその時。

 

「──間に合えパーンチぃぃぃっ!」

「ぶべらばっ!」

 

 ヒナタが走ってくるとノウェムに拳を入れた。

 

「騎士君大丈夫!? 今、回復するね! 【ファーストヒール】!」

「無事間に合いましたね」

「ギリギリ間に合って良かったぞ!」

 

 助けに来てくれたのはヒナタ、ユキ、セレナ、レメだった。

 

「どうして……ヒナタたちが?」

「へへん! オイラが助けを呼びに行ったらちょうどヒナタらがログインして来てくれたんだ!」

「そっか……レメ、皆助けてくれてありがとう。でも……ヒナタ、ユキ。なんで来たの。 ログインしないようにって、 あれほど来ないでって書いたのに……」

「思いっきり逆効果だからね! あんなメッセージ送られたら心配するに決まってるでしょう!」

「でも良かった、騎士君が無事で。 本当に良かった……」

 

 シロウが送ったメッセージは逆効果だったみたいで、心配でログインしてきたのだ。

 

「これは多勢に無勢です。ノウェム、面倒になってきましたから逃げますよ」

「なに言ってるんだよ! 俺はまだまだ戦い足りないぞ!」

「今回は彼の力を試しに来ただけです。また次回に備えましょう」

「ちぇっ! 仕方ないか…… 今回は命拾いしたな!  次に戦える時を楽しみにしとけよ!」

 

 そう言って、【カレイドブラッド】のヤエとノウェムは撤退しようとする。

 

「アンタ達を逃すとでも?」

「止められるものなら止めてみてください」

 

 ヤエは手に持っているものを投げると光を放ち、視覚が悪くなる。視界が回復する頃にはヤエとノウェムはいなくなっていた。

 どうやら逃げたようだ。

 

「あの人たちは一体何者なの?」

「わからないけど……僕の実力を知りたがってたみたい。 それだけじゃないかも知れないけど……」

 

(……あの人たち本当の狙いは一体……?)

 

 疑問は残るが、シロウが無事なことにみんなはほっとするのだった。

 

 ここはカレイドブラッドの拠点。そこにはヤエとノウェム、【カレイドブラッド】のギルドマスターと一人の男がいた。

 

「……彼の力はどうだったかな?」

「そうですね……彼のプレイヤースキルはなかなかのものでした。ただ……何やら実力をまだ隠しているようにも感じました」

「仲間さえ来なければ、俺はもっともっとやりたかったぜ」

「……なるほど。 引き続き監視を頼むよ」

「へぇー、面白そうじゃん。次は俺も戦ってみたいね」

「そうですか。めんどくさいので。次の戦いはあなたに任せてもいいですか?」

「何言ってるんだよヤエ。お前も戦うんだよ」

 

 ヤエは気怠げに言い、次の戦いを男に任せようとする。そんなヤエにノウェムは呆れている。

 

「……ついに全てのプリンセスナイトとプリンスナイトがこの地に現れたか。 今後が楽しみだね──」

 

 これから先、シロウ達はアルテミスを賭けた戦いと陰謀が始まるのだった。

 

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