プリンセスナイトと闘技場での戦い
時間になり指定された闘技場に真白達は向かった。
【闘技場】
少年、少女達がプリンス、プリンセスになるための頂点の一つ。
三人から五人のパーティーを組み、日夜争い合う。
選出はランダム、または任意で選ぶことができる。
「よう、逃げずによく来たなぁ。威勢が良いだけかと思ったぜ」
「ふん、アンタこそよく逃げずに来たじゃない」
男とヒナタは顔を合わせるとバチバチと睨み合う。
「ううっ……ヒナタが怖いぞ」
バチバチと睨み合うヒナタを真白は落ち着かせようとする。
「はいはい。ヒナタ、相手の挑発に乗らないの」
「ううっ……ごめん騎士君」
「絶対にみんなで勝とうね」
「うん! みんなで絶対に勝とうね!」
「「うん!」」
「はい」
「おう!」
時間となり、真白達は光に包まれてフィールドに転移された。光が薄れていくと周りには客席があり、プレイヤー達が観戦している。
客席の周りには結界が張られて、プレイヤーに被害が及ばないようになっている。
真白は闘技場に来る前に変幻自在を形態変化させて神秘書庫アルカナに変えていた。セレナは短刀を抜き、ヒナタはガントレットを装着させて、ユキは杖を構えて決闘デュエル開始を待つ。
「皆さん、出番です!」
男の後ろにいたプレイヤーが前に出てくる。
「金に物を言わせただけじゃねえか!」
「うるさい! いいか! ちび、この方たちは上位に食い込む猛者ばかりなんだぞ!」
「ふんっ! 金を言わせただけのアンタなんかに負けるわけないじゃない!」
「ふっ、言ってろ……へぇー、よく見たらお前も意外と上物じゃねぇか。そこにいる女達より胸は残念だが。そうだな……お前達が勝てたらギルドを解散でもなんでもしてやるよ。俺達が勝ったら女は俺のものになってもらうぜ」
男は下卑た笑いを浮かべて女の子二人を舐め回すようにな視線を向ける。
「ひっ! 気持ち悪い!」
「アンタ女の敵ね」
「……気持ち悪いですね」
「コイツは運営に通報した方がよさそうだなぁ」
「んー……これはわからせた方がいいね」
二人を舐め回すように視線を向ける男にユキとヒナタ、セレスの三人は気持ち悪がり、レメとシロウは呆れた。
「お前ら! あのガキと小娘をぶっ潰すぞ!!」
「「おう!!」」
【獣人族】の黒髪の大男は斧、【獣人族】の金髪男は大剣、【魔族】の茶髪男は槍、シロウ達に決闘を仕掛けてきた【人間族】の男は片手剣を手にしている。
どうやら魔法使いや弓使いはいないようだ。前衛ばかりで真白達と同じようにバランスが悪いパーティーだ。
ニヤついている四人を真白達は冷めた目で見ていた。
舐められているようで、真白としては好都合だ。ああいう輩は格下相手には油断しやすいので、
「それじゃあ作戦通り、僕が相手にデバフをかけたり動きを拘束するから、セレナは相手を撹乱して、ヒナタはその隙をついてどんどん攻撃していって。ユキはバフと回復魔法をお願い」
「お任せください」
「頑張るね!」
「はい! サポートと回復は任せて」
『決闘開始デュエルスタート!』
「【加速】【ファントムラッシュ】」
「【鈍足《スロウ》】」
宣言と同時に、セレナが加速してしかけ、シロウは相手に動きが鈍くなるデバフかけた。
「のやろおっ!」
「このおっ!」
「うぜえ!」
「鬱陶しい!
四人はセレナに向かって武器を振り回し迫ってくるが、どの攻撃もセレナに当たることなく空を切る。自分達の動きが鈍く、攻撃が当たらないことに怒りと焦りを覚える。
「私も遠慮しないでやっちゃうよー! 【バーニングラッシュ】!」
「サポートは任せて! 【属性強化】!」
「ぐあっ!」
ヒナタは炎の拳を纏うと、ユキのサポートで属性強化がされて威力も上がり、男達に攻撃を入れた。
属性強化は属性を持った魔法でもスキルも強化される。
「このやろうぉ! くらいやがれ! ……スラッ」
「メテオ……」
「乱れ……」
「ワール……」
「【アストラル・バインド】」
男達はスキルを発動しようとしたが、シロウは拘束魔法を使い動きを封じてスキルをキャンセルさせる。拘束されて動きが止まった。
「今だよみんな! 【多重連弾】】
「【アクセル・ファング】
「【フレアインパクト】!」
「【スターブラスト】」
拘束されて動けないところを狙い、全員で一斉にスキルを放つ。
全員で一斉にスキルを放ったことによりHPが残り僅かになり、もう虫の息に近かった。
「狙ってください! 魔法使いを囲って同時にスキルを!」
焦った表情で片手剣使いが声を荒げる。真白達は未だにダメージが0で男達は焦りはじめた。
「いい考えだけどーーー」
一気に片手剣使いの下までダッシュし、その腹に膝蹴りをヒナタは喰らわす。
「ぐふっ!」
「作戦を口に出す馬鹿にやられるわけないでしょう」
そのままとどめを刺そうとしたが、横から槍の一撃が伸びてきたので、ヒナタは一旦離れる。
「テメェら、調子に乗ってんじゃねえぞ! おらあっ! くらいやがれ! 【スラッシュ】!」
「【メテオブラスト】!
「【乱れ突き】!」
「【ワールウィンド】!」
四人が次々とスキルを放つ。
「【石壁】」
目の前に石の壁ができて男達のスキルが阻まれる。
「【ファントムラッシュ】」
「【ブレイズキック!】
「ぐっ……」
「くそっ……」
「うっ……」
分身したセレナが四方八方から斬りつけ、トドメはヒナタが炎の蹴りと回し蹴りを入れて、三人はやられて光の粒子となって残るは一人になる。
「な、なんなんだよ お前ら……強過ぎるだろ!」
「降参するなら今のうちだよ。もう二度と弱い防具を高値で売ったり嫌がる娘を無理矢理勧誘しないこといい?」
「俺達が悪かった……許してくれ! 頼む、この通りっ!」
「即刻ギルドを解散して、 二度と同じような真似はしないこと。 分かった?」
「ははーっ! ……なんていきなり素直になるわけねぇだろぉがぁ! くらえっ! せめてお前だけでも倒してやる!」
男は反省するはずもなく、ヒナタを斬ろうとした瞬間。
「【防御障壁】」
「へへ……やったぜ! 俺の邪魔をしなければこんなことにはならなかったんだよ。……あれ? ダメージがゼロ? あれぇ……?」
男はヒナタを倒せたと確信したが、ダメージが入っておらずユキが展開した障壁に阻まれた。ダメージを受けてないことに戸惑い間抜けヅラを晒していた。
「相手が騙してくるのは騎士くんの予想通りだったね」
「さて……よくも私達を騙そうとしたわね。覚悟はいいかしら?」
「ひぃぃぃぃぃっ──!」
笑顔を見せるが、本当に笑ってはおらずヒナタは怒っている。男は怒りに恐怖を感じて後退り、悲鳴をあげていた。
「【バーニングラッシュ】!」
「ぐはっ!」
炎の拳を纏い、男の顔に何十発も高速で叩き込む。男のHPは0になり光の粒子となって消えていった。
『決着! 勝利プレイヤー【シロウチーム】!』
アナウンスでシロウ達の勝利を宣言し、闘技場での決闘が終了する。
「やったーーーっ!」
「やったね!」
「お疲れ様でした」
「そっちもね」
「みんなお疲れ様だぞ!」
ヒナタとユキは手を取り合って喜び、セレナとシロウはハイタッチしてお互いの健闘を讃え、レメはみんなを労った。
みんなで喜び合っていると、決闘が決着したことにより闘技場の受付前に転送されて戻ってきた。
「騎士君とセレナさんのおかげで勝つことができたよありがとう!」
「ありがとう騎士君、セレナさん」
「ふふふ、どういたしまして二人の力になれてよかったよ」
「私はシロウ様のために力を貸したただけなので」
「ううん、それでもありがとうだよ!」
「その……役に立てたなら良かったです……」
ヒナタにお礼を言われてセレナはどこか照れくさそうだった。
「戦いの最中、いつもより動くことができて、力が湧いてきたんだけど騎士君の能力?」
「そういえば、なんだか魔法の威力が上がったような気がしてたんだけど、気のせいじゃなかったんだ」
「んー、ここではなんだし。どこか人のいないところで話そう」
闘技場を後にして人気がない場所に移動する。ヒナタとユキは疑問に思ったが、シロウの後について行くのだった。
シロウはヒナタとユキを連れて人気のない場所を選び、プリンセスナイトの力について話すことにした。
「騎士くん、もしかして人前じゃいえない能力なの?」
「騎士君、私達に話して大丈夫なの?」
「んー、二人になら話しても大丈夫かなって」
セレナに一応視線を送ると首を縦に振る。二人になら話しても大丈夫そうなので、シロウはプリンセスナイトのことを話すことにした。
「二人の力が湧いてきたのはプリンセスナイトの能力なのさ」
「プリンセスナイトって、噂では聞いたことあったけど、本当にあるんだね」
「本当にあったんだ」
二人は半信半疑だったみたいで、シロウも最初はそう思った。
「僕も噂でしか聞いたことがなかったから、本当にあるとは思ってなかったんだ。それにプリンセスナイトの力は最初から持っていたわけじゃないんだよ」
「「それってどういうこと?」」
「実はプリンセスナイトの力は貰ったものなんだ」
二人は同時に聞いてきた。シロウは昴との出会い、プリンセスナイトになった経緯を話した。
「と言うわけなんだよ」
「へぇー、じゃあ騎士君は昴さんの頼みを聞いて、塔の頂上を目指してるんだ」
「話を聞く限りじゃ、騎士くんを無理矢理アストラルにログインさせたみたいだけど、信用できる人なのかな?」
「オイラもそう思うぞ」
「少なくとも悪い人ではないとは思うけどねー」
悪い人ではないのだが、かと言って良い人かと言われると微妙なところだ。
「二人にはプリンセスナイトの力を黙っていてほしいんだ。バレると狙われたり、利用されるかもしれないから」
他のプレイヤーから嫉妬や妬みを買う可能性があるため、プリンセスナイトの力は極力隠したいのだ。他のパーティと組んだらそのうちバレるかもしれないが、その時はその時だ。
ヒナタとユキは顔を合わせて頷きあい、何か決意をしたようだ。
「騎士君」
「うん?」
「私達と組んでギルドを結成しない? さっき戦った時感じたんだ! 騎士君とセレナさん、ユキが一緒ならもっと強くなれるって! その……だめかな?」
「僕としては嬉しいけど、もしかしたらこの先アルテミスの争奪戦で七冠と戦うかもしれないし、きっと厳しい戦いになる。だからよく考えて、僕達とパーティーを組んでギルドを結成するか決めてほしい」
「私は騎士君とセレナさん、レメとユキのみんなでギルドを結成したい!」
「私もみんなの足を引っ張らないように頑張るから。だから騎士くん達のギルドに入りたいな……」
「おいおい即答かよ」
「んー……僕はよく考えてから言ったんだけど……」
「私はみんながいれば、どんな困難だって乗り越えられる気がするんだ。だからきっと大丈夫だよ! それに私は騎士くんとセレナさんの力になりたい」
「私もヒナタちゃんと同じ気持ちで、みんなとなら頑張れる気がするの」
「……セレナとレメはどう思う?」
「私も良いと思います。ですが、判断はシロウ様にお任せします」
「オイラもシロウに任せる」
セレナとレメはシロウの意見を尊重して任せるようだ。
「うん……みんなこれからよろしくね」
「えへへ……決まりだね! じゃあみんなこれからよろしくね!」
「うん。よろしくね」
「よろしくお願いします」
「ああ! よろしくな!」
「ギルドマスターは騎士君でいいかな?」
「僕が?」
「みんなはどう?」
ギルドマスターをシロウに任せたい事を伝えると。
「私も騎士くんがギルドマスターでいいよ」
「私もシロウ様でいいと思います」
「オイラもいいと思うぜ!」
「僕じゃなくて、ヒナタがいいと思うんだけど……」
「私は騎士くんの様に作戦を考えて指揮とかできないから、騎士くんがいいと思ったんだ」
「……わかった。上手く出来るかは分からないけど、僕でよければやってみるよ」
ヒナタが適任だと思う。彼女のように元気づけたり、みんなを明るくすることはできないのだが、みんなはシロウがギルドマスターになるのは賛成みたいだった。
一瞬逡巡したが、決意してギルドマスターを受けることにした。
こうしてシロウはヒナタ、ユキ、セレナとパーティーを組みギルドを結成することになったのだった。
To be comtinued
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