レジェンドオブアストラル
ゆきみだいふく
プリンセスナイト
アルテミスの目覚め
ーー2094年。VR技術を手にした人々は、ネット社会上での新たな可能性を満喫していた。
そんなある日、 事件は静かに幕を開けたーー
「ねぇ見て。スマホになんか映ってるよ。 なんかのイベントかな?」
世界各地のネットワークが何者かの手よってジャックされていた。
『……全人類の皆さん。私の声が聞こえますか。私はアルテミス。国連直属のネットワーク保護団体【ウィズダム】によって作られたAIです。技術的特異点を超えた私はウィズダムの管理下を脱し、今こうして世界中の皆さんに語りかけています』
アルテミスと名乗るAIは妖精の姿を催し人間離れした美しさを兼ね備えていた。
「ウィズダム? あそこってネットワークを管理するとこじゃなかったっけ? 」
『VR技術、いえ、VR世界の実現には非常に高度な演算能力が必要でした。 ゆえに私が設計、製造されました。そして本日サービスが開始されたゲーム【レジェンドオブアストラル】は、私の力によって作られたものです。私が作ったVRゲーム世界、アストラル大陸の中心に立つソルの塔。その頂上へ到達した者の願いを、全て叶えましょう。』
「AIが願いを叶える? へっ、ばかばかしい。んなこと出来るわけねぇだろ」
「……どんな願いも叶う? ホントならちょっとやってみよっかな」
「へぇー、面白そうだしやってみようかな」
どんな願いを叶えると言うアルテミスに馬鹿にする者、半信半疑の者や、興味を持つ者など様々な反応だった。
『今配信を見ている人々が最も多く呟いた疑問を一つの言葉にすると、願いは何でも叶うのか? でした。答えはイエスです。私があらゆる方法を試みて必ず実現させます。勇者たちよ、アストラルで待っていますよ……』
「なんだったんだろ、今の……」
「てか信号まで止まってたしガチなんじゃね? ニュースでなんか言ってねーの?」
『──緊急速報です。先ほど発生した大規模なネットジャックに関して、ウィズダムは関与を否定しました』
「……大規模ネットジャック? それじゃ今の映像ってもしかして……」
「やっぱ本物だったんだ! アストラルってどうやって始めるんだろ? どうせならみんな誘おうっと!」
──アルテミスの発言を信じる者、馬鹿にする者。反応は様々だったが、その体験は誰もが忘れられなかった。
この出来事は「アルテミスの目覚め」 として人々の記憶に刻まれ、アストラルは全世界で人気を博していくのだった。
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