プロローグ①
「クッフッフ、いい月ですねえ」
とはいえ本当に散歩しているわけではなく、彼には見回りという重要な役目があるのだが。
血のように真っ赤なシャツに、黒いベスト。
さらに蜘蛛を想起させる
シマの見回りなど若衆に任せておけばいいのだが、たまには自分が出るのもいいだろうと、役目を買って出たのだ。
しかしあくびが出るほどに平和だ。これも、この
若頭を務める輪廻の立場としてはこの
「このままでは立ったまま
色白で
(おやおや)
思わず輪廻の
ここが蜘蛛縫組のシマと知っての
しかし、今出ていくのは時期
輪廻は舌なめずりをし、はめている黒い手袋を整えて静かに時が満ちるのを待つ。
一メートルもないほどの
しばらく様子をうかがっていると、チンピラどもが青年を
輪廻はすかさず車へ近づき、コツコツと窓を叩いた。
「すみません、路上
サイドウィンドウがゆっくりと開き、手前に座っているスキンヘッドの男がにらみを
「あんだ? テメェは」
「玉繭地区
「知るか、そんなモン」
「まぁ、そうおっしゃらずに。私も仕事なので、こんなことは言いたくないのですが。注意に従わない場合、強制退去手続きに移らせていただきます」
愛想笑いを浮かべる輪廻の胸ぐらを、スキンヘッドの男が手を
「だーれが浄化委員会だって? ふざけた格好してるくせにホラ
「やれやれ……人を見た目で判断するのはよくありませんね。こう見えて、私は
輪廻が肩をすくめてため息をつくと、スキンヘッドの男が額がつくほどに顔を近づけ、低い声で
「こっちは大事な商売の話してんだよ。一般市民はすっこんでろ」
「ああ、
輪廻が両手を上げて飛び退くと、胸ぐらを
「ぎゃっ! テメェ……!」
「これは申しわけありません。あなたの顔があまりにも
「ッざけてんじゃねーぞコラ!」
スキンヘッドの男がドアを開けて飛び出し、輪廻のみぞおちめがけて
輪廻はそれをひらりと
「ぐあッ……!」
スキンヘッドの男が無様に地面へ
「おいこら、一般市民。調子に乗るなよ」
アロハシャツの男が肩をいからせて車から降りてきた。
「そちらから
輪廻がひらひらと手を
「こういう時に
男がポケットから手を出した
男が
「な……っ」
「おやおや、物騒なものをお持ちで」
「放せやコラァ!」
「浄化委員として、このような危険物の所持は見過ごせませんね。
輪廻が背中を丸めると、アロハシャツの男の体が、ふわりと宙に浮く。そのまま男は路上へと叩きつけられた。
身を
「……
四方を囲まれ、お仲間らしき男たちが輪廻へ向けて
「おや、これは困りました。万事休すですね」
輪廻が困ったように
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