【KAC20248】パパ上様日記 ~我が家は眼鏡一家でござる~

ともはっと

眼鏡は割れる。そう、割れるのだ



「あぁぁぁっ! やっちまったっ!」



 いやほんとなにやってるんだよ。と、思わず言ってしまいそうな息子ことセバスの悲鳴。

 いや、正しくは、セバスだけでなく、嫁のボナンザも悲鳴を上げているのだが。


 目の前で起きた惨劇は、悲鳴をあげるには十分であろう。



 セバスは壊れてしまったがために

 ボナンザは直すにしてもお金がかかることに。



「あんた、ほんとなにやってんの!」

「いやだって」

「だってもなにもない! どれだけ大事にしてないのよ!」

「俺ほど大事にしてるやついないって! これは事故なんだって!」


 言いあうセバスとボナンザ。


 そう、我が家は眼鏡一族。

 そして、セバスが落として壊したのは、そんな眼鏡一族にとって命でもあり相棒でもある――



  ――ME・GA・NE。



 そう、眼鏡である。



「そもそもあんたは昔から眼鏡を壊すのよっ!」

「俺壊したこと全然ないって!」

「いいやある。あんたはパパ上の眼鏡を壊したことがある!」

「俺のじゃないじゃん!」


 ああ、そう。セバスよ。確かにお前の壊したのはお前ではない。

 そう、私の眼鏡だ。


 小さな頃。まだセバスが私を見て「だれだこいつ」と、普段まったく会わない私のことを誰か分からないくらいに小さな時。

 たまたま朝早く起きたセバスは、私の眼鏡を見つけて、玩具と思ったのだろう。不思議そうにぐにっと。思いっきりひん曲げたのだ。

 ぱきゃーんと音ととともに割れる眼鏡。


 ストックもない眼鏡。

 ああ、その日、会社にどのようにしていこうかと悩んだものである。



「あ、そういえば」


 思わず口に出してしまったものの、ヒートアップしている二人は私の呟きには興味がない。

 娘のチェジュンはもちろん、猫のようにごろりと床に寝てはゆーちゅーぶなるものを見ているので私に興味がない。うん、泣こう。


 そんな私が想いにふけるのは、眼鏡のこと。そして、若かりし頃のこと。

 まだ、セバスもチェジュンも生まれる前のこと。


 新婚真っただ中。

 ボナンザと私、二人がしっかり社会人として生活していたときのことだ。

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