勝利だギューちゃん

第1話

海にいる。

僕は泳げない。

子供の頃、海でおぼれてあの世へ行きかけた。


それがトラウマになっている。


でも、見るのは好きだ。


そして、海でやってみたいことがあった。


ボトルの中に手紙を入れる。

そして、それを海に投げ込む。


それを拾った誰かから手紙が来る。

それを、楽しみにしていた。


で、月日は流れる。


僕も歳を取り、結婚をして子供が出来た。

そして、孫も出来た。


今日は、こうして親子4世代で海に来ている。

僕の、両親はしぶとく生きている。

まだ、この世にいそうだ。


「孫の顔はともかく、ひ孫の顔も見られるとはな」

〈玄孫の顔も見られるよ〉

内心思う。


「おじいちゃん、これ拾ったよ」

孫が、ボトルを持ってきた。

中には手紙が入っている。


「なんて、書いてあるの?」

「開けなくてもわかる」

「なんて?」

「これを拾った方、連絡ください」


孫は開ける。


「すごい。当たりだ」


長い間、さまよってたんだな。

海はつながっている。


どんな旅をしてきたか、訊いてみたいものだ。


「もう一枚はいってるよ」

孫が言う。

「なんて書いてある」


『これを投げ入れた方へ


海に物を投げ入れるのはやめましょう』


ごもっとも。


横で、おばあちゃんとなった妻がのぞき込んでいった。


「それは、私が書いた」

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勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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