神のめがねをパクったら天罰を受けた件

大道寺司

第1話

「すみませーん」


 俺は今、めがねを売りに来ている。

 パチンコ、競馬、宝くじなどそれ系統のもので完全敗北し、生活資金が底を尽きた。

 そこで今は亡きレア物好きな親父が大切にしていためがねを売って金にしようと考えたのだ。


「お客様、どうされました?」


 愛想のいい兄ちゃんが店の奥から出てくる。いいもん食ってんだろうなぁ。


「このめがねを買い取って欲しいんですけど」

「承知しました。ちょっと見せていただきますね」


 店員は俺が見せためがねを受け取り、角度を変えながら状態を確認し始める。


「目立った傷とかは無さそうですね。ん?」

「どうかしましたか?」

「ちょっと上の者に確認してきますね」


 そう言って店員は店の奥に行く......かと思いきやその場で目を瞑って念じるような表情になる。


「あの......」

「ちょっと静かにしてください」

「あ、はい」


 少しすると店員は目を開いて話し始めた。


「今、上の者に確認をとったのですが......」

「ちょっと待ってください」

「はい?」

「そのー......こっちからは目を瞑っただけに見えたんだけど? 上の者って店長とかじゃないの?」

「店長は私ですが」

「え? じゃあ上の者って誰よ?」

「神です」

「ゑ?」

「我々人間の上位存在にあたる者。簡単に言うと神です」


 全然分からん!

 唐突にファンタジーを出してくるな! 金を出せ、金を。

 とりあえず、適当に話合わせて金だけ貰って帰るか。


「で、神様がなんだって?」

「はい。こちら神様が遠い昔に人間に奪われた神器でして。言い値で買い取らせていただきます」

「ほーん。いいね!」

「面白くないです」

「あ、はい」


 少し寒い空気になったが、俺は一生遊んで暮らせる金を手に入れた。

 だが、この時の俺は知る由もなかった。自分が受けている天罰について。

 神器であるめがねを神様の元から奪ったのは俺の先祖。その罰として、末代まで金運は最悪。むしろ災厄と言っていいレベルの酷さ。

 一生遊んで暮らせるはずだった金はみるみるうちに溶けていった。


「クソ......神に一泡吹かせてやる......!」


 稀代の大泥棒の血が騒ぐ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

神のめがねをパクったら天罰を受けた件 大道寺司 @kzr_

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ