推しのめがね姿は尊い強い

白千ロク

本編

 四月始まりの推しのカレンダーにはめがね姿があった。それも始まりの四月である。新生活が始まるその時から眼鏡をかけてはにかむ推しを見られるとはなんという采配か。制作陣は神か! まずは目で堪能して、拡大鏡アプリで余すことなく舐め回――さない。違う。眺める、眺めますだよ。舐め回すなんて、そんな変態みたいなことはしない。舐め回すように眺めるけど。


 なにせめがねはめがねでも、白衣めがねなのだ。貴重な一枚はキリッとした顔がいい。かっこいい。死ぬ。尊すぎて死ぬ。あー! めがねの銀の細フレームになりたい……! いや、待て。よく考えろ、推しのマネージャーが一番近くにいる存在じゃね!? 朝から晩まで一緒にいるよね!?


 表紙を開いてめがね推しを眺めるいまは午前三時。明日は休みだからなにをしてもよいのだ。明日ではなくもう今日になっているが、気にしたらいけない。


 カレンダーが来たのは昨日の昼過ぎ。特典のポストカードは複製サイン付。店舗によって三種類――表紙バージョン、四月バージョン、八月バージョンとあるので、全て買いました。買うよね? 推しに貢ぐよね? こういう時のために推し貯金をしているのだからさ! 推しに囲まれて幸せだし、推しが幸せなら私も幸せです!


 いやまあ、冷静になるとさ、ちょっと危ない思考回路をしていると思わなくもないが、推しは癒やしだし強いのだから推しは最高なのだ。至高である。何人も推しがいるが、全て唯一だ。ハーレムのように平等に愛している。アイドルの場合は箱推しで!


 話は変わって、購入したカレンダーは二つ折りA4カレンダーである。閉じた状態だとA4サイズでね、開くとA3サイズになる代物だ。もちろん汚れないように、ソフトタイプのクリアケースに入れてある。汚れたら泣くよ。


 並列に並んだ衣装ケースの上に置いたコルクボードの横がカレンダー置き場である。スマホスタンドやタブレットスタンドを使って、うまいこと置いているんですよ。いままでのカレンダーは紙袋に収納され、本棚の下段にあります。壁掛けタイプも卓上タイプもごちゃごちゃだ。


 もうすぐ四月だから、楽しみでしょうがない。カレンダーは一通り見たが、やっぱり四月の白衣めがねが一番だ。カレンダーはスマホで確認できるし、一年中白衣めがねでも困らないんだよね。


 なんなら、昨年も月を変えずに一年中眺めていたし。やる気を出すにはいい案だろう。飽きたら別の月にすればいいだけだし。


 オタクは燃費がいいからいいよね!




(おわり)

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