めがねのお姉さん
黒墨須藤
優しいお姉さん
小さいころから僕はいじめられていた。
生まれつき目が悪い僕は、大きくて分厚い丸い眼鏡を付けなければ、ほとんど何も見えなかった。
僕はこの眼鏡が嫌いだ。
走ると揺れて落ちそうになるから走れない。
からかわれて怒っても、眼鏡を付けている限り追いつけない。
まるで一生懸命に勉強しているように見えるのか、僕を見る人は頭が良いとか、お勉強いっぱいしてるのね、なんて言うけれど、成績を見ると冷めた目で見るのだ。
学校が嫌いなのに勉強が出来るようになるわけがない。
だから僕はこの眼鏡が嫌いだ。
こんな眼鏡に頼らなければならない自分が嫌いだ。
そうして下を向いて歩いていると、フッと影が差した。
「どうしたの明君」
弾むように顔を上げると、眼鏡をかけた女性が微笑んでいた。
「それでね、僕のこと雑巾みたいだって言うんだ」
「それはひどいわね」
お姉さんは近所に住んでいる木場さんと言う。
僕と違って、眼鏡をかけていても、とっても素敵で優しい。
眼鏡をネタにいじめられた時、泣いていた僕を慰めてくれたのがきっかけで仲良くなった。
「私もね、お父さんお母さんの帰りが遅くて、一人のことが多いし、眼鏡のことを色々言われたりするから、明君の気持ち分かるなぁ~」
「でも明君、眼鏡似合ってると思うよ。すごく可愛いもの」
可愛いと言われて恥ずかしかったけど、もうちょっとだけ眼鏡を付けてやろうと思った。
その日はいつものように、木場お姉さんと話をしていた。
お父さんもお母さんも、今日は仕事で帰るのが遅くなるから、一人で留守番なんだ。
と言ったところ、
「それじゃあ、私が宿題見て上げよっか」
とお家に連れて行ってくれた。
「さあ、まずはどれから始めよっか~」
宿題を広げる僕の横にお姉さんが座っている。
とってもいい匂いがした。
しばらく集中出来ないでいたけれど、それでもお姉さんが教えてくれて、そこそこ早く宿題が終わると、お姉さんはウーロン茶を運んできてくれた。
「なんだ明君お勉強出来るじゃない」
「お姉さんが教えてくれたからだよ」
褒められて赤くなる頬を隠すように、ウーロン茶をゴクゴクと飲む。
その様子をお姉さんは笑って見ていて、また頬が赤くなっていった。
「うふふ、良い飲みっぷり。良かったら私のもどうぞ」
そう言って、お姉さんは自分のウーロン茶を差し出した。
お礼を言って受け取ろうとしたところ、手が当たったのか、コップがはねて、たっぷり入っていたウーロン茶が、僕とお姉さんに降り注いだ。
カコンとコップがテーブルに当たって落ちる音がして、僕は顔が真っ青になった。
「ご、ごめんなさい!」
「ご、ごめんね明君、うわぁ~びっしょびしょ」
やってしまった。
大変なことをしてしまったと、僕は立ちすくんで、涙がこぼれ落ちる。
お姉さんがタオルを持ってきて拭いてくれるも、結構な量をかぶったらしく、ウーロン茶が染み込んだ服がじわじわと茶色くにじんでいった。
「お、お姉さん……ご、ごめんなさい。僕、僕……」
「ううん、ごめんね!私が悪いの!あ~……どうしよう」
お姉さんが僕の服を見て悩んでいる。
服なんてどうでもいい。
僕は自分がお姉さんを困らせてしまっていることに、ひどく罪悪感を覚えた。
「こんな服洗えば大丈夫だし……」
「それしかないよねぇ……。よし、明君、ばんざーい!」
きょとんとしながらも、つい万歳の形に手を上げてしまうと、お姉さんはシャツを勢いよく上に引っ張った。
「え?え?」
「う~ん下もダメかぁ。よし、明君。こっち来て」
急に脱がされて混乱しながらついていくと、そこはお風呂場だった。
「ごめんね明君。乾燥機使えばギリギリ乾くと思うから、脱いだ服はここに入れちゃって、洗うから。体も濡れているから、その間にお風呂に入っちゃってね」
脱いだシャツを洗濯機に入れると、お姉さんは脱衣所を出て、どうやら二階に上がっていったようだった。
展開に頭が付いていかなかったが、ウーロン茶で濡れた服を洗って乾かして、その間に体をお風呂で洗うということは合理的だし、何よりこれ以上お姉さんを困らせたくなくて、お姉さんの言うことに、反対することはありえなかった。
着ている物を脱いで洗濯機に入れ、お風呂場の扉を開ける。
浴槽の蓋を開けると、白い湯気が眼鏡を曇らせた。
お湯に浸かりながら、浴槽の縁に役に立たなくなった眼鏡を置いた。
視界と反対に、思考はクリアになっていって、段々恥ずかしさでいっぱいになっていく。
僕は今、お姉さんの家のお風呂に、裸で入ってしまっている。
もう上がってしまった方がいいだろうか。いや上がった方がいいだろう。
非常にわずかな時間だが、お湯に浸かったので出ようとすると、脱衣所から声がして、扉が開いた。
「ごめんね明君、気が付かなくて。眼鏡付けられないからお風呂ちゃんと入れないよね」
ぼや~っとした視線の先に、肌色の人間が立っている。
それがお姉さんだというのに、数秒、頭の処理に要した。
「んん~?明君、頭が濡れていないけど、洗っていないな?ほら、お姉さんが洗ってあげるから、ここに座って」
お姉さんに手を引っ張られて、お風呂場の椅子に座る。
シャワーからお湯が出る音がして、頭を撫でられるように、温かいお湯がかけられる。
「お、お姉さん。僕自分で洗える……」
「だ~め。慣れていないところなんだから、ケガとかしたら危ないでしょ」
シャンプーを泡立てて、僕の頭に揉み込んでいく。
ふわっと木場お姉さんの匂いが上がって、その匂いに段々包まれていく。
「かゆいところはありませんか~」
優しい手つきが、僕の頭をまさぐり、髪の毛を撫で、その心地よさに下腹部に力が入っていく。
一度シャンプーを洗い流し、次はリンスを同じような要領で撫でこんでいく。
リンスが洗い流され、頭は木場お姉さんの匂いでいっぱいだった。
「次はお背中流しますよ~」
冗談っぽい口調で、お姉さんはタオルにボディソープをつけ、背中を擦りだした。
最初は優しく、ソープの泡を塗り付けてぬるぬるにするように。
そうすると、少し力を入れてごしごしと揉むように擦りだした。
ほんのりと背中が赤くなっているのか、擦られる度にじりじりと感度が上げられていく。
するとまたぬるぬると優しく、敏感になった背中をタオルを滑らせる。
あまりの気持ちよさに、口から声が漏れてしまった。
「はいじゃあこっち向いて~」
「えっ、あっ」
快感にとろけ、言われたまま体を反対に向けてしまう。
視界をお姉さんの体が埋める。ぼんやりと視界の先にある物が揺れ動いている。
僕の下腹部は、痛いほど張りつめてしまっていた。
そしてまた、今度は腕からタオルで擦られ始める。
伸ばした腕が、柔らかい何かに当たった。
タオルを動かす手が一瞬止まると、その腕をどこかに導いていく。
もしゃっとした感覚の後、僕の腕を動かしていたそれは離れて、またタオルが動き出す。
手は柔らかく温かい何かに挟まれるように優しく固定され、少しだけ指を動かすと、くちゅっとぬるぬるした液体に触れた。
なんだろう、ボディソープかな。
気になった僕の手は、ぬるぬるした液体の出所を探るように手を動かした。
その間にも、お姉さんはタオルで僕の腕を洗っていく。
力が入っているのか、時折くぐもったような声がして、挟まれた手首のあたりに、また粘度の高い液体がこぼれる。
片腕が洗い終わったのか、挟まれていた腕が自由になった。
ぬるぬるした液体を、人差し指と親指でこすり合わせると、つら~っと糸を引くようにして、お風呂場の床に垂れていった。
もう片方の腕も引っ張られ、同じように挟まれたが、こちらも挟まれた手首にまで、ぬるぬるした液体は伝ってきた。
ゴシゴシと腕を洗う度、挟まれた手首も一緒に前後する。
そうして両腕が洗い終わり、今度は足を伸ばされた。
やはり腕と同じようにタオルで擦られるが、腕と違って長いストロークでゆっくりと擦っていった。
腰からふともも、膝、ふくらはぎとタオルを滑らせ、そしてまたふくらはぎ、膝、ふとももと戻っていく。
そして半周が終わると、内股、内ももを、マッサージするかのように、ゆっくりと力を入れて擦る。
痛いほど力の入った足の付け根の近くを通ると、僕は低く呻いて、浅い息をするしかなかった。
そして足の指の一本一本を、磨いていく。
流石にタオルが入らないのか、ぬるぬるの指が優しくつまむように洗う。
こそばゆい感覚に体をくねらせる。
ゆっくりと足を降ろされ、次の足が持ち上げられる。
親指の付け根から先へ向かって、にゅる、にゅるとしごき上げる。
間接を転がすようにくりくりといじった後、人差し指、中指と続いて洗っていく。
隠すことも出来ない程、はぁはぁと粗い息を吐き出していると、またタオルがゆっくりと足先から腰に向かって擦り上げていき、思わず声を上げてしまった。
ピクンピクンと波打つそれに、ふっと息が吹きかかる。
「あっ、あぁっ……」
懸命に耐えるのを見届けてから、タオルで胸を洗い出す。
胸の頂点は、未熟ながら主張するよう起立している。
ぼやけてよく見えないが、胸を洗うために近づいているのだろう。
その気配を感じるよう、いきり立ったレーダーが反応する。
お腹を洗うため、内股に手が置かれ、もう一方の手でお腹を撫でまわす。
ぬるりぬるりとなでまわす手に、起立したそれが触れる。
「明君はここもちゃんと一人で洗えるかな?」
「お、お姉さん……」
「あ、洗って…ください……」
そう言ったのを聞くと、お姉さんは固くなったのを優しく泡で包みこんだ。
泡をぬるぬるに滑らせ、物足りない刺激が、脳を溶かしていく。
いつの間にか完全に足を開いていて、お姉さんが間に入ったことにも気付かなかった。
そして泡から逃れている部分を見つけると、そこを洗うべく、ゆっくりと泡を滑り落としていく。
「ふっ……あっ、ふうっ……あぁっ」
泡が滑り落ちる度、気持ちよさと鋭い痛みが走る。
少しだけ痛みが勝っていると見ると、片手を離し、指で泡をすくうように、付け根から頂点へなぞりはじめた。
ぞわぞわした快感が走り、キュッとお尻に力が入る。
ゆっくりと交互に、泡を滑り落としてはすくいあげて、ビキビキと固くなったそれをなぞり続ける。
「あうっ、あっ!」
ついに泡から逃れていた部分が完全に露出する。
強烈な刺激が、目を覚まさせるようにバチッと弾けた。
お尻をすぼめ、腰を浮きあげて、初めての感覚に頭が白く塗りつぶされる。
チカッチカッと弾ける感覚で、何か温かく濡れたものに包まれたことまでは分からなかった。
「ほめでとう、明君」
肩で息をしていると、お姉さんの声がした。
口に何か含んでいるのか、くぐもっていてよく聞き取れなかった。
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