第42話 黄金のアレと偽ロリの秘密
「ようやくそれなりに街らしくなってきたな」
王都へ
あまりの
おかげで1週間もしないうちに、街の8割方の建物の
残り2割も
この辺の仕事の速さはさすがファンタジー世界といったところだ。
魔法の存在しない地球では考えられない。
俺の家に
俺が集めた冒険者たちもそれぞれの仕事をしっかりとこなしてくれており、ダンジョンの情報
ダンジョン童貞卒業だな。
これで童貞は俺だけになってしまったわけか……ちょっと
俺も近いうちに
……
…………
………………
解体場、夕方――
「……よし、やってくれピート」
「
「俺がかよ! でも、確かにできたらそれくらい払うから気合い入れて!」
「できるかどうかわからないけど、やるだけやってみせますよ。では、行きます!」
気合いを入れたピートが目の前のタルに向けて
「
ピートの放った死霊魔術――死体に
魔法がかけられたタルは
「……成功か?」
「わかりません。開けて調べないことには」
「とりあえず開けてみようよ」
ミーナがタルの
シュポン――という
中身がゾンビだったら、俺とミーナはこうしてこんなところでワクワクしながら見守ったりなんてしない。
タルの中身は……。
――ゴッゴッゴッゴッ……!
――プハアアアァァァァッ!
「
「マジで!? あたしにも飲ませて! 早く! (ゴッゴッゴッ……!)はああぁぁぁぁぁ……っ! ナニコレ!? 今まで飲んだどのお酒よりも美味しいし気持ちいいんだけど! 冷やしてお風呂上りに飲みたすぎるんだけど!」
「ほ、本当ですか? じゃあ僕も一杯……(ゴッゴッゴッ……!)美ン味あああぁぁっ!? ホントにお酒だ! しかも今まで飲んできたどんなお酒より美味い! 僕の死霊魔術でこんなことができるなんて……」
俺たちのリアクションを見れば想像がつくだろう。
俺たちが作っていたのはゾンビではなく
ミーナがダンジョン内で発見したマンイーター(大麦)を刈り取って持ち帰り、水と一緒にタルに
ミイラを作る
ゾンビは
腐る……
で、やってもらった結果いけた。
旨味と魔力が
これが不味いわけがない。
のど越しといい苦みといい、地球産のどのビールよりも美味いと断言できる!
超上等な最高級ビールだ!
「やっべええぇぇぇっ! 美っ味! ぬるいままでも無限に行けるぞこれ!」
「そうだ! ねえカイト、これ魔法で冷やしてよ。ロリマスから食らった魔法を利用して氷魔法くらいできるでしょ?」
「ミーナくん、きみ天才。
「ああぁ“ぁ”ーっ♥♥♥ やっぱり冷やすとさらに美味しいぃ“ぃ”-っ♥♥♥」
「僕の作ったスルメにも最高に合う! これすごい! いけますよ! これ飲むためならいくらでも僕働きますよ! 何ならお金はいいんでこれください!」
「バカヤロウ! いい仕事には正当な
「っしゃああぁぁぁっ! ありがとうございます! カイトさん最高ですよ! 美味あああぁぁぁい! お酒が美味しいいいいぃぃぃっ!」
「カイトー? おるかー?」
――ドタドタドタドタッ!
――キュポンッ!
――ヒュオッ!(収納した音)
「おお、なんじゃ。ここにおったのか」
「よ、ようロリマス。お忙しいはずのロリババア様がわたくしなんぞに何か
「王都でようやく
「し、知らねーよ! 別に俺たちは何もしちゃいねーよ! なあ、2人とも?」
「そ、そうよ! あたしたちは素材の解体でたまたま一緒になっただけだし! ねえ?」
「そ、そうです! 僕もミーナさんと一緒に素材の解体に来ただけで別に何も……」
この偽ロリにだけはバレてはいけない。
結果――俺たちの飲む分がなくなる。
「本当か?
「してねーっつってんだろ! 何か
「お主、今日はいつもの10倍くらい口が悪いのう。やっぱり何か隠して……」
「してませんよアミカお嬢様。さあ、わざわざ王都から
「わーい♪ クッキーじゃクッキーじゃー♪ わしこのクッキー大好きー♪」
ふう、どうにか
2人には
「で、ロリマス。派遣される部隊が何だって?」
「おお、そうじゃそうじゃ。王都でようやくここに派遣される部隊が決まったんで、わしが連れてきてやったのじゃよ(モグモグ)」
「へえ、そうか。それはお疲れさん。大人数を転送するのは疲れただろうしうなぎパイも食べる?」
「食べるぅ♥ わしこれもだーい好き♥(モグモグ)」
「ああ、ほら。そんな急いで食べなくても誰も
「ありがとうなのじゃ。わし、ここの食べ物も好きじゃけどカイトのことも好きじゃあ♥ もしわしが本来の姿ならば抱かれているところなんじゃが」
「はいはい、お気持ちだけ受け取っておきますよ」
「このままの姿でもいいなら……抱く?」
「抱かねーよ!」
合法だけど
「そうかぁ……残念じゃのう。カイトの子なら孕んでも一向に構わんのじゃが。子どもが産めなくなる前に作りたいと思うておるが、このぶんじゃと夢で終わってしまいそうじゃのう……はあ」
「どういう意味だ? あんた実年齢はともかく肉体は若いんだろ? 普通にまだまだ現役なんじゃ?」
「逆じゃよ。現役以前になってしまうのじゃ」
「ごめん、言ってることがわからない。説明よろしく」
「やれやれ、仕方ないのう」
アミカはちょっと面倒くさそうな表情を作り、事情を語りだした。
「わしが以前、本来の姿はチチもケツもバーンとしてる美の
「ああ、もちろん。デカい団体運営しているくせに見え
「相変わらず失礼な物言いじゃのう。じゃが事実じゃ。ほれ、これを見てみい」
そう言うと、アミカは自身の袋から
「これを見てお主どう思う?」
「ものすごい美人だなって思う。胸デカいし腰くびれてるし、そこから伸びるヒップラインと太ももが最高にエロス」
「それ、100年くらい前のわしの姿」
「嘘つけええええぇぇぇぇっ!」
「いや本当じゃってマジで。冒険者ギルド
「えぇ~? この美人が~?」
せめて絵じゃなくて写真だったらなあ。
ファンタジー世界にそんなもんあるわけないけど。
「実年齢60になるかそこらの頃じゃったか。ダンジョン攻略中に呪いを受けてしまってのう。そのせいで歳をとる代わりに若返ってしまうようになってしまったのじゃ」
「若返りの呪いだって?」
この世界、そんなもんがあるのか。
さすがファンタジー世界だ。
俺の想像の遥か上を行くなあ。
「初めは老いた肉体が若返って
「どうして?」
「お主バカじゃのう……肉体がどんどん若返るんじゃぞ? 最後は子どもから赤子になり、
「…………ッ! それ、めっちゃ怖いな」
「じゃろう?」
言われて初めてその恐ろしさに気づく。
年を取るごとに若返る――その結果行きつく先は自身の死期だ。
鏡を見るたびに「あと何日で死ぬ」と
「今の姿はおそらく13か14歳くらいのものじゃから、あと5年くらいは意識も
「………………」
「わしは金はあっても身寄りはない。だから、まだ子どもを作れるうちに作っておいて、その責任をわしの後始末ごと押し付けようかと」
「責任を投げっぱなしジャーマンするな!」
とんでもねえこと考えるロリババアだな!
子どもを一緒に育てようという考えがない。
「作る以上は一緒に育てろよ。それが大人の責任ってもんだろう」
「それができればいいんじゃけどなあ。色々なダンジョンに今まで
見つかったのは強力な魔法と武器防具だけ。
ため息をつきながらアミカは続ける。
「だからもうほぼ
「お断りだよロリババア。そんな理由で子ども作ってたまるか」
「わし処女じゃよ? 100年以上純潔を守り通しておるよ?」
「そういう問題じゃねえっつーの! アホなこと言ってないでこれでも食え、全く」
「わーい♪ う巻きじゃ~♥ ふわふわトロトロでめちゃくちゃ美味ぁ~い♪」
ビール造りに成功した時のために用意しておいた料理を渡す。
呪いのことなど最初からなかったかのように振る舞うアミカが、なんだかちょっと無理しているように見えた。
「なあ偽ロリよ。あんたのその呪いだけど、まだ数年時間あるんだろ? だったらさ、まだ諦めるのは早いんじゃねえの?」
「うーん、そう思いたいんじゃがのう。もう30年以上探して見つからないし」
「たかが30年じゃねえか。もしかしたら次くらいでポロっと出てくる可能性だって無きにしも
「そうなってくれたらわしも嬉しいのじゃが……」
「そうなるって信じろよ。転送役を頼んでいる以上、あんたがいなくなったらすげえ困るし、俺も一緒に探してやるから」
「カイト……いいのか?」
「ああ。ただし、俺の用事のついでだけどな」
この世界も悪くないけど、やっぱり帰れるもんなら帰りたい。
世話になっているし、そのついでに解呪方法を探すくらいならいくらでも手伝ってやる。
「お主、口は悪いがやっぱ優しいのう。その優しさに
「しねえよ! っていうか、ギリ中学生くらいの肉体にそんな感情
「まあまあ、そう
「してねーよ!
ふざけて抱きついてきたアミカを必死に引き
この偽ロリ、どこにそんな力があるんだってくらい力強いな!
「そ、そうだ! 妙にしんみりした話題ですっかり忘れてたけど、お前さんが連れてきた騎士団の人ってどこだ?」
「街の入り口で待たしておるよ?」
「街にすら入れていないのかよ! 遊んでないで早く案内しろよロリババア!」
全くふざけた偽ロリだ。
でも、そんな風にふざけていられるうちはまだ大丈夫だ。
暇を見て俺もできる限り探してみようか、解呪方法。
もちろん、俺の
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《あとがき》
意外に重たいロリマスの設定。
彼女の呪いが解かれる日はくるのでしょうか?
《旧Twitter》
https://twitter.com/USouhei
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