第40話 求めていた職業
「さあ、見えてきたぞ! あれが俺の街、サンブリーだ!」
約一週間ぶりの帰宅に少々
「
――すげえ、アレ全部ぶどう畑かよ。
――
――でもところどころ
「いいえ、あれは木を植え
――バカだ! この領主バカだ(笑)!
――だが、そのバカがいい。
――面白そうね。完成するまでここで仕事しようかしら。
冒険者たちの反応は様々だけど、ウケはいいようだ。
こういう土地を使ったメッセージなんかはこちら側には存在しないようだったからな。
住民たちの中に土魔法が使える人がいてよかった。
魔法の訓練にもなるし、きっと職業選択とかに役立つだろう。
「続いて、正面をご
「んー? なんかニョロニョロしたものが書かれているのう。あ、わかったウォータースネークじゃ!」
「正解ですアミカさん。
「わーい♪ ぉ“っ♥ このパイ美味っ! 舌の上で甘さがとろけるぅ~♪ 生地もサクサクで実に
「よかったら皆さんもどうぞ。ここの名物になる予定ですので」
馬車に乗る合格者27名+αにも1枚ずつパイを
――美味ぁぁぁぁぁぁっ!
――ナニコレ甘アアアアアァァァァァ!? けど甘すぎなくて美味あああぁぁぁぁっ!?
――魔力もだけど
やはり美味いと
この世界の
「ところでカイト、何故ウォータースネークが城壁に
「それはですね、その厄介者は今や街では幸福の
「厄介者が幸福の象徴? ヤツらのおかげで健康でお肌ツヤツヤ? 何言っとるんじゃお主? 頭大丈夫か?」
「大きなお
「柔軟…………………………ま、まさか!?」
ほう、気づいたようだな。
そろそろここで
どうせ街に入ればすぐにわかるんだし。
「皆さんが美味い美味いと食べたそのパイ、
――オエエエエェェェェエッ!?
――な、なんだとおおおおぉぉぉぉぉっ!?
――あ、あんな気持ち悪いもんを俺たちは美味い美味いと……。
――で、でも天国に上るかってくらい美味しかったのは事実よね……。
――俺は美味けりゃ何でもいいや。
――私も。ちょっとびっくりしたけど。
皆さんお決まりのいい
この反応を見るのも、魔物料理の楽しみだよな。
「な、ななななななな、何てものを食わせてくれたんじゃお主はーっ!? わし冒険者ギルドの長じゃぞ!? 一番
「嫌なら食べなくていいですよ? もう二度と作らないんで」
「すいません、謝りますから作ってくりゃれ。今のは突然の告白にちょっと
「はいはい。皆さんも食うのが嫌だったら言ってくれれば普通の料理作りますよ。仕事してもらうんだからそれくらいはやります」
そう俺は言ったが、誰も普通の料理は希望しないようだ。
まあこの世界の普通の料理って、そこまで美味いわけじゃないからな。
冒険者用の
「そろそろ街に入るし、今後の話をさせてもらおうか。皆は今日は俺の家で一泊してもらう。各自開いている
わざわざ
先日の俺とこの偽ロリとの
問題さえ起こさなければいいだけなんだし、そこまでビビらなくてもいいと思うんだけどな。
「仕事内容はここから半日ほど、ヴォルナット方面に進んだ方向にある
前領主が残した情報がなかったため、完全に1からのスタートだ。
どんな魔物が出るか、どんな場所なのか、どんな危険があるかまるでわからない。
冒険者諸君には
「給料は月金貨2枚。ダンジョンで得た魔物の
――オオオオオォォォォッ!
うむ、いい盛り上がりだ。
これなら調査結果の方も期待できそうだ。
美味いものが関わると人は気合いが入る。
「ダンジョン探索する前に言ってくれれば1回分の弁当も出せるから、必要な人は言って欲しい。まあ、出せるのはウォータースネーク系料理だけだが」
――ッシャアアアアアァァァァッ!
――またアレ食えるとか最高の職場じゃねえかあああぁぁぁぁっ!
――給料も悪くないし大当たりの仕事だったわね!
ここまで
明日の弁当は卵を使ってウォータースネークの『う巻き』に
「あの……ちょっといいですか?」
そんな風に盛り上がる中、約1名がおずおずと手を
気弱そうな彼の名前は――確かピートだったか?
「その仕事、僕も行くんでしょうか? 恥ずかしながら僕、まだダンジョン未経験で……」
ダンジョン未経験と言ったとたん、何名かの冒険者たちから笑いが上がった。
――何? お前まだダンジョン経験ねえの?
――未経験ってマジ? ヤバくない?
――ダンジョン童貞が許されるのはFランクまでだよねー♪
などと
「
――は、はい……。
――俺たちが間違っていました。すいません……。
――わ、私も実はダンジョン初めて行ったのDランクからでした。
「あ。あのう……僕まだFランクだから依頼とか全然――もがっ!?」
「いいから!
ナイスロリババア。
良い感じに説得できたのに水を差してほしくない。
あの偽ロリには後でうなぎパイをもう1枚あげよう。
「それで、その、僕の仕事は?」
「ピートには他の人とは違う特別な仕事を用意してある。給料はみんなと同じだからそこは心配しなくていい」
「は、はあ……そうですか」
「あ、カイト。おかえりー」
馬車が
ギルマスもいたけど、ギョっとした顔をしていたな。
まあ、そりゃあ一番偉い人がいきなり来たら……ねえ?
本人偉さの欠片もないけど。
「この人たちがあたしらの後輩?」
「そういうこと。ヒマな時に色々教えてやってくれよ」
「で、例の
「ああ、運よく1人だけ」
「良かったぁ……アレ美味しかったからさあ。好きな時に食べられないとか
ああ、本当に良かったよ。
アレが量産できる可能性があるのは、あの職業だけだもんなあ。
「で、誰がその人なわけ?」
「彼だよ。あの気弱そうな男」
「彼が――」
ああ、彼が俺たちが探していた――
「
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《あとがき》
ネクロマンサーって料理とか得意そうなイメージ。
インドアで一人暮らしって感じなので料理とかやりそう。
《旧Twitter》
https://twitter.com/USouhei
第6回ドラゴンノベルス小説コンテストにエントリー中です!
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