第28話 王都ミキチファ
「何で俺たちこんなとこにいるんだろうな?」
「……何でだろうね? あたし
「ボクも……まさかこうなるとは思いませんでした」
あの
全てが終わり、無事日常を取り戻した俺たちは王様に呼び出しを食らっていた。
店で常連たちと
一緒に
平和な日常を返してくれ。
「……なあ、王様に何言われると思う?」
「さあ? でも、わざわざこーんな
「やっぱりアレか? 貴重な生きた古代遺跡を爆破したのが不味かったのかな?」
「で、でもアレは仕方なくないですか? 放置していたら今頃この国はクーデター起きていましたし、王都なんて火の海ですよ?」
「甘いわセシル。世の中にはね「それはそれ、これはこれ」っていう言葉があるの。結局クーデターは起きなかった、つまり何も起きていないのと同じこと」
「結果的に見れば
「そんなぁ……テロリストは向こうなのに」
その辺をいかに伝えるかが、今回のポイントじゃないだろうか?
俺たちが
「全く、無事帰ってきて店の
「あたしらの冒険者ランクの昇格祝いする予定だったのにさあ……これだから貴族は。
「あ、二人ともランク上がったんですね。おめでとうございます」
そうそう、ミーナの言う通り今回のことで、俺たちの冒険者ランクが上がったのだ。
ちなみに俺がAでミーナがB。
依頼された三つの原因を特定して解決に
ギルマスは当初約束していたAではなく、最高位であるSを申請しようとしたらしいけど、俺が強引に取り下げた。
何度も言うように、そもそも俺は身分証明のために冒険者になったのであって、冒険して名を残そうと思っているわけじゃない。
名を残すのなら料理人として残したいので、面倒なことをいろいろと押し付けられそうな最高ランクは
「ありがとセシル。でも、上がったランク活かせるかな……?」
「冒険出る前に
「オッケー。その時はこの国捨てて逃げよっか」
「せっかく手に入れた
「ローソニアでいいんじゃない? 敵国ならそう簡単に手出しできないっしょ」
「2人とも……素直に
当たり前だ。
こっちは悪いことなんて何一つしてないんだから。(個人の意見です)
後ろめたいことは何一つしてないのに罪に問われたら、そんなの素直に
「あ、2人とも、王都が見えてきましたよ」
セシルの言葉で、俺たちは窓の外を見る。
俺たちの
「王都ミチキファ……どうせ来るなら観光で来たかったわ」
「俺も。どうせ来るならこんな護送されてじゃなくて、2号店出店のために来たかった……」
見た感じ、サンクトクルスの2倍から3倍は人口いそうだもんな。
あそこで俺の料理を
どんな食材が見つかって、どんな新しいメニューが開発できるだろう?
「はぁ……料理作りてぇ。サンクトクルスから3日間、何も作ってねえよ……」
「あ、なら今作ってもらえませんか? ボクお腹空いてきちゃって……」
「できるわけないでしょ。あたしら馬車乗る前に袋は取り上げられちゃったんだから」
3日間も何も作らないとか、料理の腕が落ちてしまう。
あー、早く思いっきり料理がしたい。
……
…………
………………
その会話から2時間後――
馬車の中で入国審査を終えた俺たちは王城に
謁見の間でもう10分ほど待たされている。
周りにはなんか
入ってきた
これは、逃げられそうもない。
「王の
この場の誰かがそう声を上げた。
細かい
「一同、
少しの後、王様からの許しが出たので顔を上げる。
声のトーンから何となく
見た目年齢30代前半と言ったところか。
俺をこの世界に追放した店長くらいの年齢に見える。
「さてその方たち、
ええ、まあ……。
わざわざ護送つきで呼び出される理由なんて一つしかないし。
とりあえず質問されているので
「王様、発言しても?」
「うむ、許可しよう」
「どう考えても先日の古代遺跡爆破の件ですよね……でもアレにはやむを得ない事情があったんですよ」
「そ、そうです王様! サンブリー
「そ、そうです! ボクらは伯爵が早朝クーデターを起こすとハッキリこの耳で聞きました! 止めるためには爆破しかなかったんです!」
「たった3人で軍隊を正面から相手取るなんてできません。だから、俺たちは仕方なくこっそり遺跡ごと爆破という選択をですね……」
「悪いのはあたしたちじゃありません! そうせざるを得ない状況を作ったサンブリー伯爵です!」
「ボクたちは無実です!」
「俺たちと伯爵、本当の悪はどちらなのか、
悪いのは伯爵。
俺たちは悪くない。
とにかく必死にアピールした。
「うむ、もちろんだ。事の
「「「ホッ……」」」
王様のこの発言により、俺たちの不安は取り
いやあ、一時はどうなることかと思ったぜ。
護送中の馬車の中では本気で国外逃亡を考えていたもんなあ。
「むしろ国の
護送用の馬車を使ったのは不味かったか――と、
――不味いに決まってんだろ。
――犯罪者連れてくるやつだぞアレ。
――やっぱ貴族や王族は人の心がわかってねえな。
俺たちは心の中でそう思ったが、決して口には出さなかった。
「カイト、ミーナ、そしてセシルよ。この度はクーデターを未然に防いでくれて心より感謝する。一同、この3人の英雄に感謝を!」
王様が頭を垂れたと同時に、周囲もそれに
罪人
「早速だが褒美を取らせようと思う。セシルよ、そなたは確か修行中の
「は、はい!」
「教会に働きかけ、
「あ、ありがとうございます!」
「ミーナよ、冒険者のそなたには仕事に役立つものをと思ったのだが、そなたの持っている光の矢以上のものはわが城にはない。何か希望はないだろうか?」
「えーと、じゃあ家をください。できればすっごい
「わかった。できるだけそなたの希望に沿うものを与えよう。希望する都市などがあったら遠慮なく申し出るがいい」
「やったーっ! 王様大好き! ありがとう!」
「そしてカイトよ、そなたにはサンブリー
「あの、王様……それってもしかして?」
「うむ。空席となったサンブリー領の領主の地位を与えるということだ」
「つまり、俺に貴族になれと?」
「やったじゃんカイト!」
「すごい! 平民から貴族になるなんて数十年ぶりの
「今回の英雄的行動における中心人物だったと聞いている。そんな英雄に
「うーん……」
貴族になる、か。
ネット小説でありがちな展開だな。
貴族になれば当然身分の保証はされるわけだし、
つまり、今まで以上にクソデカい
今まで地方の一店舗でしかなかった店が、他の地方に多数出店するようなもの。
魔物料理を流行らせたい俺としては、これ以上なくデカいメリットがあると言える。
だが、反対にこの褒美にはデメリットもかなり
領主になれば当然住民の
そうなったら料理をするヒマなんて果たしてできるのだろうか?
「うーん……貴族か」
「どうした? もしや不満なのか?」
「いえ、不満というより不安が……俺、領地経営とか
「領地経営を含めた
「そうなると、やっぱり料理の時間は
料理の時間を削って店舗拡大を取るか?
それとも店舗拡大を
正直この提案を
俺の料理をもっと流行らせたい!
でもメンドくさいこともセットでくっついてくる!
料理時間が無くなるわけじゃないので、
デメリット込みで
「王様、俺への褒美、もう一つだけ追加させてもらえないでしょうか?」
「何? もう一つ? はっはっは、現金な奴だなお前は! 王を前にしてさらに要求とは
「ありがとうございます。では、遠慮なく――」
俺は追加
俺の料理を流行らせるための、最大級の報酬を。
「王様、夕飯まだですよね? ここにいる
それが、俺が貴族になる条件です。
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《あとがき》
流行らせるにはインフルエンサーの意識改革が手っ取り早いですよね。
次回、王様のディナーで冒険者編終了です。
終了と言っても自分で冒険出たりするとは思いますが。
だって食材の価値他の人初見じゃわからないし。
《旧Twitter》
https://twitter.com/USouhei
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