第2話 小さな連帯

和太鼓の演奏会が終わり、僕はほっと一息ついた。しかし、その安堵も束の間、僕の戦いは毎日が続く。でも、その日、僕の孤独な戦いが少し変わり始めた。


授業中、僕はいつもよりも早く教室を出て、耳の休息を取ろうと廊下へ出た。そこで、同じクラスの美穂がひとりで本を読んでいるのを見つけた。彼女は、いつも静かで、人目を避けるようにしている子だ。美穂もまた、何かしらの苦痛を抱えているのではないかと、僕はふと思った。


勇気を出して話しかけると、美穂は僕の感覚過敏について興味深く聞いてくれた。そして彼女もまた、強い香りや化学物質に敏感であることを明かしてくれた。僕たちは異なる感覚過敏を抱えているけれど、生きづらさを感じることにおいては同じだった。


美穂との出会いは、僕にとって大きな転機となった。僕たちは互いに、自分たちだけが理解できる苦痛を共有し、その中で支え合うことができることに気づいたのだ。一緒にいる時間が増えるにつれ、僕たちは様々な工夫を共有し始めた。美穂は特定の素材のマスクや空気清浄器を使用して、自分の感覚過敏を管理していると教えてくれた。僕はそれに触発され、自分の感覚過敏に対する新たな工夫を考え始めた。


ある日、僕たちは感覚過敏について学校に理解を求める提案をすることにした。提案には、特定の行事で音量を調整する、香りの強い製品の使用を控えるように求めるなど、僕たちのように感覚過敏を持つ生徒にとって快適な環境を作るためのアイデアが含まれていた。


提案は先生方によって真剣に受け止められ、いくつかの変更が学校で実施されることになった。この成功は、僕たちにとって大きな自信となった。僕たちは自分たちの声が、世界を少しでも変えることができると感じたのだ。


この第2話は、感覚過敏を持つ二人の生徒が互いに出会い、理解し合い、そして小さな連帯を通じて学校環境の変化をもたらす過程を描いている。僕たちの小さな一歩が、より多くの人々にとっての快適な世界へと繋がる希望の物語である。

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