鋭い感覚に、生きづらさを感じる僕

星咲 紗和(ほしざき さわ)

第1話 響く世界

僕の世界は、他の誰も感じ得ないほどに響く。朝の光が窓から差し込むと、それだけで眼が覚める。耳をつんざくような鳥の鳴き声、隣室でのささやかな生活音、全てが耳障りに感じられる。僕の名前は陽斗(はると)。高校生になったばかりで、これからの学校生活に胸を躍らせるはずが、僕の感覚は常に僕を苦しめる。


今朝も、目覚まし時計の音がいつも以上に大きく感じられた。僕はすぐに耳栓を探し、イヤーマフを手に取る。この二つが無ければ、僕は一歩も外に出ることができない。


学校への道中、僕は世界を遮断するように、イヤーマフを深くかぶり、サングラスをかける。子供たちの叫び声、通り過ぎる車の音、工事現場の騒音。これら全てが僕には刃物のように感じられる。友人たちは、僕がこのような装備をしている理由を理解しようとするが、本当の苦痛を共有することはできない。


学校に着くと、今日が和太鼓の演奏会がある日だと知り、僕の不安は頂点に達した。和太鼓の音は、僕にとって地獄のような響きを持つ。それでも、僕は自分が「普通」であるふりをして、日々を過ごさなければならない。演奏会の時間が近づくにつれ、僕の心拍数は高まり、手のひらは汗ばむ。


しかし、それでも僕は諦めない。小さな工夫、耳栓やイヤーマフ、サングラス。これらは僕の盾だ。クラスメートや先生たちは、僕が演奏会を欠席することを理解してくれた。僕は図書室の隅で、耳栓をして、深呼吸を繰り返す。


この日、僕はひとつの決意を新たにする。自分の感覚とどう向き合っていくか、自分なりの答えを見つけ出す旅を始めるのだ。そんな決意のもと、僕は新しい一歩を踏み出した。


この第1話は、感覚過敏を持つ陽斗が、日常の中で直面する困難と、それに対する小さな闘いを通じて、自分自身とどう向き合っていくかの序章です。

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