第3話 特殊能力付きメガネって高難度では?

アズガルトの田舎も田舎……牧歌的な光景の中にあるファーラの村にルシフェが真っ裸で辿り着いてから3日が経った。


現在の彼の仕事は

「今日の朝食はスクランブルエッグにトースト! おまけは元気一杯のミルク!」

と朝食を三人分テーブルに並べた。


メガネ作りの注文など入ることはなく所謂居候状態のルシフェの仕事は家事であった。


アリアはサラダを作り

「ごめんなさいね、ルシフェさん。ありがとうございます」

と言いながら、サラダをそれぞれの席の前に置いた。


ルシフェが「いえいえ~」と言いかけると席についていたガントが

「店で役に立たないんだ。家事くらいしてもらわないとな」

とサクッと告げた。


アリアはそれに

「も~、お父さま!」

と言い、ルシフェは笑いながら

「全くその通りで~」

と心で涙を落とした。


だが、実際その通りなのだ。


三人は椅子に座り朝食を口に運んだ。

アリアは服や防具などを作る能力があり、ガントは騎士の能力が基本だが今は能力開発で町の外で狩りをして服飾の素材を持って帰ったり店番をしたりしていたのである。


そして、ルシフェは部屋の掃除にせいをだしていた。

アズガルトが好戦的な国の為か防具を買いに来る兵士が時折姿を見せ、店はそれなりに繁盛していた。

十二分に生活できるくらいに稼げてはいたのである。


ルシフェは台所を掃除しながら店を垣間見ながら

「そう言えば、あの人は人間は戦争ばかりしているって言っていたが……本当みたいだな」

と呟いた。


戦争は悪しき方へと人間を導く。

能力開発や様々な新しいモノを生み出したとしてもそれは世界を破滅させるものばかりである。


戦争は破壊が目的なのだから当たり前なのかもしれない。


ルシフェは箒を持ったまま

「だけどどうすれば戦いを止められるかって考えてもなぁ」

と、議題が壮大過ぎてどうすればいいのか思いつくことも出来なかった。


その時、高位の騎士が店の扉を開くと驚いて振り向く下っ端兵士の視線を集めながらアリアの前に立った。


どう見ても王都で仕える騎士である。

こんな片田舎に現れること自体があり得ないことであった。


アリアは目を見開くと

「い、らっしゃいませ」

と告げた。


騎士は彼女の手を掴むと手の平を見て

「なるほど、お前は防具作りか」

と言い

「この店はお前だけか? メガネを作れるものはいないか?」

と告げた。


それに彼女はハッとすると肩越しにルシフェを見た。

その視線に騎士は箒を手に呆然と立っているルシフェに視線を向けると

「お前は?」

とずかずかと中へと入りルシフェの手を掴むと手の平を見て目を見開いた。


「ほう」

そう言い

「いるものなのだな」

と呟くと手を放して胸元から書状を出した。


「我がアズガルトの王・アレスさまより直々のご命令である」

と仰々しく言い

「特殊能力プロパティーを付けたメガネの作成を命じる」

と告げた。


静寂が広がり誰もが息を飲み込んだ。

ルシフェはその中で冷静に

「特殊能力プロパティーって具体的には?」

とさっぱり返した。


高位の騎士に意見するとは! とそこにいた誰もが心で悲鳴を上げた。


騎士は目を細めると

「何と言った?」

と低い声を零した。


ルシフェは真面目に

「特殊能力プロパティーの内容が分からなかったら自由に付けることになるので気に食わなかったら困るし」

と告げた。


四角四面。

融通が利かない。

こういうところがそうなのだと、気付かないルシフェであった。


高位の騎士にはとにかく

「Yes」

と答える。

それが通例であった。


騎士は剣を手にするとスルリと抜いた。

高位の騎士に反論など許されないことだったのだ。

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