僕が眼鏡をかける理由、僕が眼鏡をはずす理由。
崔 梨遙(再)
1話完結:約1300字。
僕は若い頃、目つきが悪かった。年齢を重ねていくと、次第に目つきが良くなっていったが、特に学生時代は目つきが悪かった。
1番批判されたのは中学時代。細い目で、吊り目だったのが悪いのだ。目尻が上がっていた。そりゃあ、怖く見えるだろう。だが、目が細いのも目尻が吊っているのも僕のせいじゃない。遺伝子が悪いのだ。
普通にしていても、“睨んでいる!”と言われた。“いつも不機嫌”と言われたこともある。だが、僕は睨んでいるのではなく、女子の胸をチェックしていただけだ。僕は、学年で誰の胸が大きいか?完璧に把握していた。
そう、僕本人は特に悪いことを考えていたわけではない。睨んでいたわけでもない。女子の胸をチェックしていただけだ。僕はただの煩悩中学生だった。
まあ、同じ学年の生徒達は“崔はそういう男だ”と、僕の目つきの悪さを気にしなくなってくれたが、街を歩いていると困ることがあった。不良に目をつけられるのだ。
「お前、何、メンチ切ってる(ガン飛ばしてる)ねん」
まあ、よく絡まれた。大体、1人の時に複数の不良達に囲まれる。
「お前、やんのか?」
そういうことは慣れっこになっていた僕、落ち着いて対応する。
「やるんですか? ちょっと待ってください」
僕は、眼鏡をはずして眼鏡をケースに入れる。
「ほな、やりましょうか?」
そして、僕は殴られる。そうなのだ、僕は戦うために眼鏡をはずすわけではない。喧嘩で眼鏡が壊れないようにケースにしまうだけだ。だが、僕にもスキルが1つあった。“打たれ強い”ということだ。2,3発殴られても倒れない。表情も変えない(というよりも、表情が顔に出ない体質)。そんな僕に、相手の方がビビる。
「お前、なんでやり返さへんねん?」
「事件になるのが嫌なだけや」
「お前、なんで倒れへんのや?」
「打たれ強さも強さの1つやで」
「もうええわ、みんな、行こうや」
大体、そのくらいで立ち去ってくれる。僕はカルシウムが足りていたから、少々殴られるくらいは平気だ。とにかく、中学時代は真面目に過ごしたかったので、街で乱闘事件や傷害事件を起こしたくなかったのだ。そして、事が終わればまた眼鏡をかける。僕は、眼鏡を守り切っていた。以前は、不良に殴られたりして何回も眼鏡を壊したから、親に余計な金を使わせてしまった。だが、先に眼鏡をケースにしまうようになってからは、眼鏡を壊さなくなった。
学校内では喧嘩になるようなことは起こらないのに、街に出るとよく絡まれる。当時、カツアゲが流行っていたが、僕は何度カツアゲされようが1円も渡したことが無い。それが自慢だった。
眼鏡を守るくらいなら、コンタクトにすればいいと思われるかもしれないが、コンタクトを付けて殴られる方が危険だ。だが、僕はそれが理由でコンタクトにしなかったわけではない。僕がコンタクトにしなかった理由は……目が細くてコンタクトが入らなかったからだー!
僕が眼鏡をかけるのはコンタクトが入らないからで、僕が眼鏡をはずすのは眼鏡を守りたいからだった。
僕が眼鏡をかける理由、僕が眼鏡をはずす理由。 崔 梨遙(再) @sairiyousai
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
崔なら、なんとかしてくれる!新作/崔 梨遙(再)
★0 エッセイ・ノンフィクション 完結済 1話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます