第199話 覚醒

『白猫』の虹色宝箱からドロップしたアイテムを詳細を見ずに放置したままだった!!

 ウィリアムくんと超スピードでボスを倒してたから宝箱の中身をそこまで気にしてなかった。

 えっと、先に『白猫』の虹色宝箱からドロップしたアイテムの詳細を確認するか。

 ……あれ?おかしいな。アイテム名は一応覚えてるけど、見当たらない。似た名前のアイテムも無いな。


 頭の中を??が支配していたその時、アイテムが無い理由を何故かリーフィアが教えてくれた。


「主、探しているアイテムはもしかして『白猫』の虹色宝箱からドロップした厄災の種でしょうか?」


「え?何でわかるの?というか、リーフィアは何か知ってるの?」


「……」


 リーフィアの視線が黙ってブルーへと向く。

 プルプルと静かに俺から離れて虹色宝箱に向かっているブルーだが、ラグニアによって俺の所まで連れてこられる。

 うん、ブルーが何か関係しているのはわかった。


「ブルー、一つ聞きたいことあるけど、いい?」


 プル?プルプル!


 うん、どうやらブルーは今がどういう状況か気づいていないみたいだ。

 さっき虹色宝箱に向かっていたのは何がドロップするのか興味があったとかかな。まあ、いいけど。


「ブルー、厄災の種っていうアイテム知らない?」


 プル!?プルプルプル、


「ごめんリーフィア、通訳して」


「知らないと言っています」


 プル!?プルプル!プルプルプル


「ブルー、正直に話してください」


 プルプルプルプル、プルプル


 リーフィアの満足気な顔からしてブルーは観念して白状したな。ていうか、モンスターがアイテムを勝手にどうこうできるの?


「主はモンスターファームの隅に置いてある植木鉢をご存知でしょうか?」


「え、植木鉢?ご存知も何もあの放置されてる可能性大の植木鉢のことだよね?」


「厄災の種はブルーとピナがあの植木鉢に埋め植えました」


 あ、あの中に埋まってるのね。

 ブルーとピナは一体何を考えてそんなことしたの?

 うーん、でもリーフィアとラグニアが知ってて放置したわけだよな。何か意味でもあるのかな?いや、ブルーの態度的に何も無さそう。


 プルプルプル、プルプル


可愛い妹ピナが植物を育てたいとブルーにお強請りしたのが切っ掛けです」


 えっと、何から突っ込んだらいいのかな。厄災の種ってアイテムのどこをどう考えたら植物になるかな。

 というか言ってくれたらそれくらいショップとかで購入したのに。


 植物の種などはモンスターファームでモンスターが手に入れるにはプレイヤーを通してショップで購入する必要がある。

 モンスターファーム関連のアイテムは基本的に無料だが、植物の種など使い道の多いアイテムに関しては有料アイテムでショップでしか扱っていない。


「覚醒の宝珠の件でポイントが足りないとなった時にお強請りをされ、ブルーも主に植物の種を購入して欲しいと言い出し辛かったのです」


 プルプル、


「ブルー、ピナとどんな植物が育てたいか話し合って後で教えて。ショップで種を購入するから」


 プルプルプルプルプル


 よしよし、なでなで


 さてと切り替えて先に『侏羅の大森林』の虹色宝箱を開けますか!


 虹色宝箱を開けると中には光輝くアイテムが。

 アイテム名を表示するウインドウには、


『覚醒の宝珠を入手しました』


 まさかまさかの展開。

 ここで虹色宝箱から覚醒の宝珠をドロップするとはな。

 こういう時って狙ったアイテムがドロップしなくなるのがゲームあるあるだと思ってたけど、こんなこともあるのか。

 まあ暫く使わないだろうけど。


 厄災の種を回収する為に家に帰った。

 直ぐに部屋に戻ってモンスターファームを投影すが、そこにピナの姿は見当たらない。

 あれ、ここでお留守番してる筈だよな。


 ピナがどこに行ったのか疑問に思っているとブルーがプルプルとブルーの等身大ぬいぐるみの山に向かって行く。

 そして、丁寧に一つ一つのぬいぐるみをどかすと、山の下から幸せそうに寝ているピナの姿が。


 プル、プル、プル

 ピヨ…ピヨピヨ、ピヨ!


 すっかり寝坊助さんだったピナ。ブルーの等身大ぬいぐるみが多いからかな。起きてすぐは本物とぬいぐるみの区別がついていなかったけど、プルプルと動くぬいぐるみはいないから本物だと理解したのかな。


 ピナは寝起き早々だけど、植木鉢からブルーと協力して厄災の種を取り出す。

 その後、揃って俺のところに持って来てくれた。

 それを受け取ると直ぐにプルプル、ピヨピヨと会話?が始まる。

 どんな植物を育てたいかちゃんと話し合ってくれてるのかな。


『厄災の種を入手しました』


 あ、一応これも入手した扱いになるのか。


『リーフィアが条件を満たしました。覚醒しますか? はい いいえ』


 え?何これ?どういうこと?

 うん、わからん。リーフィアに聞こ。


「リーフィア、条件を満たして覚醒しますか?ってウインドウが表示されたんだけど、どういうこと?」


「!主、それは本当ですか?まさか条件を満たしているとは…。どうするかは主にお任せします」


 うーん、要はあれでしょ?リーフィアを強くするかどうか。気になるのは一つ。モンスターが覚醒する条件って一つだけなのかな。

 複数あって一番満たしやすい条件を満たしただけって可能性はどうだろ。もし、そうなら今覚醒させるとリーフィアがもっと強くなる可能性を消すことになるよな。


 リーフィアも条件が複数あるのか、それとも一つだけなのかは知らないみたい。

 こういうの一番詳しい知り合いはやっぱりあの人かな。

 いつもメッセージ送ると即返信が返って来るから今回は電話でもいいかなと思い、電話をすることに。


 プルル、ガチャ、


「蓮くんか、君が電話をしてくるとは珍しいな」


 ワンコールで繋がった!?さすがシグマさん!


「すみません、今お時間は大丈夫ですか?」


「ああ、大丈夫だよ」


 シグマさんにここまでの出来事を説明した。

『侏羅の大森林』から覚醒の宝珠をドロップしたこと、『白猫』の虹色宝箱からドロップしていた厄災の種をブルーとピナが植木鉢に埋めていたことも含めて。それを回収すると同時にリーフィアが覚醒条件を満たしたことまで。


「このゲームって進化させても弱くなることもあるじゃないですか?そもそも覚醒って弱くなることって…」


「覚醒したモンスターは必ず強くなる!それは私が保証するよ。進化と覚醒は全くの別物と考えた方がいい。それと条件の話だが、結論から言うとモンスターにつき一種類だけだ。正確には条件を一つ満たせば、他の条件は全て消えるだが、この話はややこしいから省くよ。それと蓮くんはヘルプを普段見ない派のプレイヤーかな。覚醒についてはそこにそう記載があるよ」


「え?ヘルプですか?すみません、見たこと無いです」


「ははは、まあ気持ちわかるよ。私もあまり見ない派だからね。でも、軽く目を通した方がいいかな。勉強になるよ。もし、覚醒させたなら後で条件を教えてくれよ」


「はい、ありがとうございます!今からヘルプを見ます!」


 シグマさんに教えてもらった通り、ヘルプに覚醒についての詳しい情報が載っていた。

 詳しいと言っても必要最低限の情報だけ。


 モンスターを覚醒させるには覚醒の宝珠というアイテムが必須。

 覚醒する為の条件はモンスター毎に一種類だけで、一度条件を満たしたのならいつでも覚醒できる。

 条件は覚醒直後にのみ開示される。


 これならリーフィアを覚醒させて大丈夫そうかな。

 ブルーとラグニアがいつ条件を満たすかわからないし、こういうのは早い者勝ちってことで!


「よし、リーフィアを覚醒させる!」


『リーフィアが条件を満たしました。覚醒しますか? はい いいえ』


「はい」を選択する。


 進化の時と同じようにリーフィアが光に包まれる。

 光が収まるとそこにはいろいろと様変わりしたリーフィアがいた。


 覚醒条件

・混血の人類種(アンデッド、エルフ)

・アンデッドの血筋

・王の血筋(スケルトンナイトの生前)

・空中を移動するスキルを取得(空駆)

・闇属性スキルの取得 (ダークスラッシュなど)

・厄災の種を所持

・覚醒の宝珠を所持

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