第178話 ブルーVSコン

 やっぱ郁斗は強いな。

 バトルが終わったら軽く反省会だな。


「出でよ、ブルー!」


 郁斗はこの時が来るのを半年近く待った。ブルーにリベンジできるこの時を。

 ネメアもかなり気合いが入っているが、その後すぐブルーに瞬殺される。


「ブルー、電光迅雷!」


 プル!


「ブルー、鳴神、雷霆!」


 プル!


『ネメア DOWN』


「……」


 まあブルーが相手だから仕方ないと自分に言い聞かせるが、ここまで一方的に瞬殺されるとは思っていなかった。

 ブルーはカイゼル戦を経験し、更に強くなったようだ。


「出でよ、コン!」


 ここからがリベンジマッチ本番。強くなったコンでブルーに勝つ。

 今までのバトルからしっかりと対策は練っている。あとは実践するのみ。


「コン、降臨・稲荷神社、稲荷狐の祈り、稲荷狐の祟り、参の型、壱の型!」


「稲荷流狐剣術、参の型 夜桜、壱の型 迦具土!」


 ここでは影分身に陽炎と蜃気楼のコンボを使わない郁斗。

 今までとは違い、戦い方に幅がある。

 対戦相手としては戦いづらいことこの上ない。


 フィールド上は怖いくらいに静かだ。

 コン、ブルーともに動きを見せない。

 夜の神社に満開の桜。そこに佇むは神官装束を見に纏い、金色の炎を刀に纏わせた狐獣人のような見た目をしているコンと赤いスライムのブルー。

 いろんな意味で幻想的で観客全員が魅入っている。


(やっぱブルーって自己強化系のスキル持ってないよな?だとすると肆の型が使えないから絶空の発動条件を満たさないな。こっちの切り札を何もせずに封じてくるとは)


 コンと戦う場合、一番警戒しないといけないのは絶空かな。発動条件とかありそうだけど、間合い無視の必中攻撃がどれだけ厄介かはリーフィアの常薙の剣でよく知ってる。それに威力も桁外れだ。使われたらブルーが耐えらえるかどうか。

 だから使われる前に倒したいな。


「コン、玖の型!」


「ブルー、プロミネンスアタック!」


「稲荷流狐剣術、玖の型 流星火!」


 超高速で間合いに入り、斬る流星火を初めて正面から攻撃スキルで受け止められる。

 金色の炎を纏った刀と紅の炎を纏ったブルーの激突。

 両モンスターの力は拮抗し、やがて2体とも弾き飛ばされる。


「ブルー、スカーレットアロー!」


「コン、伍の型!」


「稲荷流狐剣術、伍型 紅炎・稲荷!」


 弾き飛ばされながらも攻撃を怠らない。

 両モンスターの中間地点で激しい爆発が巻き起こる。

 その影響で煙により、視界が遮られているが、


「ブルー、メガサンダー、プロミネンス!」


「コン、捌の型!」


「稲荷流狐剣術、捌の型 爆轟!」


「電光迅雷!!」


「二尾の焔!!」


 今度は雷を纏ったブルーと金色の炎を尻尾に纏ったコンが激突。

 再び、両モンスターともに弾き飛ばされるかと思われたその瞬間、


「ブルー、鳴神!」


「コン、陸の型!」


「稲荷流狐剣術、陸の型 御神楽・稲荷突き!」


 この攻防は両モンスター、痛み分けに終わったが、ブルーの方がダメージは大きい。ステータスが2倍になっているコンとデバフでステータスが下がっているブルー。その差は歴然。

 それでも拮抗しているのはひとえにブルーの戦い方が上手い。

 常にステータス面では自分よりも遥かに高い相手と戦ってきた。寧ろ自分よりもステータスの低い相手と戦ったのあったかな?というレベルだ。

 これまでに培ってきたその経験がもたらす技術。

 同じCランクで今のブルーに技術面で対抗しようとしても勝てるモンスターはいないだろう。


 そしてブルーにはまだ


「プチヒール!」


 回復魔法がある。


 HPがマックス残っているブルーと残り8割のコン。

 これで残りHPではブルーがコンを上回るが、コンには稲荷狐の祈りと祟りを両方使っている為、追加効果でHPが時間経過と共に自動で回復する。

 どちらが有利でも不利でもない予断を許さない状況で郁斗が仕掛ける。


「コン、影分身、陽炎、蜃気楼!」


「ならブルー、フレイムフォース!」


「…そっちか」


 郁斗のこの指示。何を狙ったものなのか。

 ただ単にコンが有利になる状況を作りたかっただけなのか。それとも別の狙いがあるのか。

 この時、蓮には二つの選択肢があった。フレイムフォースを使うか霹靂神はたたがみを使うか。

 結果的にフレイムフォースを使ったわけだが、霹靂神を使わせるのが目的だったのではないかと勘ぐってしまう。

 直ぐに使ってしまうけど。


「そこか。ブルー、霹靂神!」


「コン、漆ノ型!」


「稲荷流狐剣術、漆ノ型 狐高・呑!」


「!!」


 霹靂神を防がれた!?防御スキルのみで防がれるなんて…。

 郁斗の狙いがわからない。さっきのは霹靂神を使わせることだけとは思えない。別の何かを狙ってる気がする。


 郁斗としては考える時間を与えたくない。それを与えてしまうと絶空が使えないことを悟られる可能性がある。

 とにかく攻撃して回復される前に押し切るしかない。


「コン、狐火、鬼火!」


「ブルー、電光迅雷!」


「コン、紅蓮の誓い、捌の型!」


「稲荷流狐剣術、捌の型 爆轟!」


 電光迅雷によって狐火と鬼火を置き去りにするが、郁斗とコンの反応が早い。

 紅蓮の誓いでブルーをプルンと弾き返し、爆轟で追撃。

 しかし、プルンと弾き返されながらもしっかりと次の一手を予想し、ディバインシールドで防いでいたが、ここまでは郁斗の予想通り。

 ここで稲荷流狐剣術、玖の型 流星火による更なる追撃がブルーを襲う。

 全てを置き去りにする神速の攻撃。

 気づいた時にはプルと斬られていた。


(マジかよ!?まだHPが4割近く残ってるのか。これだと削り切れるか微妙か?いや、削き切るんだ!)


 まだプチヒールのクールタイムが明けていない。

 残りHPは4割を少し下回るくらい。このまま攻撃を受け続けるとヤバいな。

 でも、防御の要のディバインシールドはさっきブルーが使っちゃったし…。


「コン、そのまま伍の型!」


「稲荷流狐剣術、伍の型 紅炎・稲荷!」


「ブルー、雷霆、プロミネンスアタック!」


 まだ郁斗は知らない。雷霆に追加効果が存在することを。バトル中に一度でも使用すれば二度目から一時的に相手モンスターを痺れさせることができる。

 紅炎・稲荷を放つ前に雷霆に被弾し、痺れて動けないところをプロミネンスアタックで吹き飛ばされる。


「麻痺か。ならコン、陸の型、弐の型、肆の型!」


「稲荷流狐剣術、陸の型 御神楽・稲荷突き、弐の型 忌火、肆の型 色即是空!」


「え?肆の型?使えるの?」


 コンの攻撃はブルーを掠める程度。大したダメージではない。

 その上、肆の型 色即是空をコンは発動したフリをする。

 もちろん、発動していないが、蓮を困惑させるには十分。

 そうして条件はこれで満たしたように思わせ、絶空への警戒を促す。


「いくぞコン!拾の型!!」


「させない!ブルー、八雷神やくさいかづちのかみ!!」


 絶空が放たれたらブルーの残りHPからしてそこで終わる。それがわかっているから蓮は全力で阻止する。そこが郁斗の狙い。だが、こうなることは蓮とリーフィアがバトル前に想定していた展開。




 準決勝第1試合開始直前、控え室にて


「いいブルー。合言葉は…だよ。わかった?」


 プル!プルプル!


「うん、よしよし、なでなで」


 郁斗は必ず八雷神対策を講じている。だからその対策が必要になる。リーフィアと一緒に考えた結果、郁斗が講じる対策は読めた。だからその対策を今、ブルーに伝えたところだ。




「コン、稲荷の境界線!!!」


 ブルーの放った八雷神はコンでなく、ブルーに向かって襲いかかろうとしている。

 稲荷の境界線。つまり、コンお得意のいつの間にか入れ替わり戦法だ。

 郁斗の狙いはシンプル。八雷神は直撃したらひとたまりもない。

 なら、当たらなければいい。寧ろ相手に当てればいい。

 今回はブルーの残りHPに加え、絶空の発動条件を満たしたと思わせることに成功している。絶空というスキルのその存在がブルーに八雷神を使わなきゃ勝てないと蓮に思わせることに成功。



 だが、最終的にフィールドにいるモンスターはブルーだけ。コンの姿は見えない。

 あるのは『コン DOWN』のウインドウだけ。


 一体何が起きたのか。


 ブルーが放った攻撃は八雷神でなく、天御雷。蓮とブルーの間で設けられた合言葉。

 八雷神と指示したら天御雷を放つこと。

 これはコンが稲荷の境界線で入れ替わり戦法を使って、ブルーの八雷神による自滅を狙う。ダメでも絶空で仕留める形ではないかとリーフィアが読み切ったことで設けられた合言葉。


 恐らく、コンが八雷神に合わせてカウンターで絶空を使うことはありません。

 前回、ブルーに完敗していますから確実にブルーを倒せる手を使ってきます。

 なので、こちらがやることはシンプルです。いいですか?

 主が八雷神を指示。ブルーは合言葉の通りに天御雷を放ちます。

 そしたらきっとコンが稲荷の境界線で入れ替わり戦法を使用ます。。

 ですので、入れ替わったのを確認したら天御雷に向けて今度こそ八雷神を放ってください。

 天御雷を相殺したその先にコンがいますからこの手順通りにすれば、絶空を使われる前に誰でも勝てます。byリーフィア

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