第144話 ステラ&輝夜の実況解説③

「既に2試合を終えて、両ギルドともに1勝1敗と互角のバトルを繰り広げています!そして!これから行われる第3試合に勝ったギルドがこのギルドバトルの勝利へリーチをかけることになります!第3試合、バトルの方はマリンがフィールド展開スキル、覆海を使ったところ。そして深海への誘いというスキルを発動!これは一体どういうスキルなのか?」


「聞いたことないスキルね。まあそもそも人魚のバトルが珍しいし、そもそもルーナが水面より上にいるしでどういうバトルになるのか展開すら読めない」


「おっとここで水面よりも高い場所で飛んでいたルーナが水中に!あのまま時間を稼いで覆海の制限時間待ちと思っていましたが、何か狙いでもあるのか?」


「あれは自分から潜ったというより、落ちたね。上位プレイヤーからするとそこまで珍しく無いから言うけど、深海への誘いって飛行封じとかじゃない?」


「ああ!なるほど!しかもマリンは狙ってルーナを落としている為、落下地点に予め攻撃を置いておける!マリンの猛攻!ルーナは守るだけで精一杯か?」


「さすがにそこまで簡単にはいかないわね」


「な!槍の矛先からレーザー!?完全に意識が攻撃に傾いていたマリンは反応が遅れる!これは躱せない!」


「そうね、躱せないなら防げばいいわ。ちょうど今マリンがやったみたいに」


「……そうですね」


 実況者としてはあってはならない感情のこもってない棒読みコメント。

 しかし、実際には「これだから強い人は!誰もが新垣さんのモンスターみたいに何でもできる訳じゃないのに!」という心の声が聞こえてくる。


「!ドラゴンソウルによる自己強化バフを打ち消した上にデバフの付与!?そんな強力なスキルをCランクのモンスターが取得するの?俄に信じられないわね」


「ですが、実際にバフを打ち消されデバフを付与されてしまったルーナはマリンの弱点属性である雷属性の攻撃を仕掛けますが、押し返されてしまいます」


「それでも戦局はルーナが有利ね。やっぱり覆海は制限時間付きスキルってところがマリンを精神的に追い詰めている。このまま何も無ければ、一気にバトルが決まりかねない」


「そうです…え!?今のは?」


「何も無かった真上からいきなり攻撃?覆海のフィールドが何かしら関係あるのかしら?」


(蓮くんのラグニアの次は莉菜さんのマリン!?しかも今のスキルって確かのモンスターが使うスキルに似てる。もしかして、莉菜さんは世界最難関ダンジョンの一つに挑戦していた?目的は何?わざわざあのダンジョンに挑戦した理由は?さすがに攻略した訳じゃないと思う。攻略してたらすぐにゲーム運営から告知が来る。でも、これで納得がいったわ。あのダンジョンに挑戦していたのならプロフェッサーが動向を掴めなくて当然ね。だって、あのダンジョンは私でも攻略不可能だから調査対象に入れてないだろうし)


「しかし、覆海が関係しているとしてもルナプラズマというスキル。私には雷属性の攻撃のように見えましたが、人魚であるマリンは相性最悪の属性。普通に考えても取得は困難を極めるかと。新垣さんはその辺りどう思いますか?」


「まあ実際に所得できてる訳だし、頑張れば取得できるんじゃない?あ、ほら今、火属性?のルナバーナーを使ったわよ。それにしても四方八方どこからでも攻撃できるのかしら?そこが気になるわね」


「確かに!四方八方どこからでも攻撃できるとすると少し強力過ぎる気が…って!!ルーナがここで竜化です!竜化を使い、一気に勝負を決めに来ました!」


「どのくらい持つのかしら?CランクだとスキルLvどのくらいだっけ?20くらいとしたらざっと見積もって20分は竜化できるわね」


「ええ、Cランクなら恐らくスキルLvは10~15といった所でしょうか。20越えとなるとBランク~といった印象です!そして竜化状態のルーナの攻撃が見事に直撃!オーシャンスフィアで防御したにも関わらず、たった一撃でマリンのHPは6割近くも削られた!!!!」


「激しい攻防が続く!両モンスターともに一歩も引かない!…え?」


「!?嘘、竜化が解けた?制限時間が来たって感じじゃないし、もしかしてブレイク系スキルでの破壊?いえ、ブレイク系スキルで既に発動しているスキル、つまり竜化を破壊することは不可能の筈」


「バトルシステムのエラーとかでしょうか?あ、ここで情報が入りました!バトルシステムのエラーではなく、仕様!竜化状態の解除もとい破壊は本来の仕様だと判明しました!」


「じゃあバトルに戻りますか。ちょうどルーナがオーバーフォースを発動したところね」


「オーバーフォース!!?なんとここでオーバーフォースです!シャーロットさんはここで一気にバトルを決めるつもりですね!」


「観客の雰囲気的にオーバーフォース知らない人が一定数いそうだから説明すると、限界を超えてモンスターの力を引き出すスキル。具体的に言うとHP以外の全ステータス2倍、クールタイム半減とかね」


「しかし、それだけではありません!オーバーフォースには大きなデメリットが存在し、毎秒1パーセントのペースでHPが減少し、発動したら解除は不可能!残りHPから推測するとあと1分と少しでルーナのHPは0になる計算です!」


「あ、ちなみに豆知識だけど、オーバーフォースを使うと回復魔法も受け付けなくなるから」


「ルーナVSマリンは決着間近!ドラゴンブラスターとルナバーナー、徐々にドラゴンブラスターが押し返し始める。状況の不利を悟り、マリンはすぐさまオーシャンスフィアで防御する構えを見せる」


「オーシャンスフィアがドラゴンブラスターに貫かれて完全にマリンが倒されたと思ったけど、ギリギリの所で上手く防いでいたわね。DOWN表示が出ていないのに油断しちゃダメね」


「アルテミスは召喚と同時に深海への誘いで飛行を封じられますが、これは…」


「マリンの残りHPは1割を下回っているし、スキルも軒並みクールタイム。今、全体攻撃で倒すのがベストね。でも、気になるのは最後に使った輪唱ってスキル。防御系のスキルかしら?ホワイトノヴァを防ごうとしたけど、無理だったとか?」


「そんなことよりも遂にこの時がやって来ました!!!天使対決!Cランクともなれば、あれを取得している頃合い!お互いにいつ使うのか、注目です!!」


「意外と序盤に使うかもよ」


「まさか~。こんな長期戦の予感が漂うバトルでいきなり使うとは…。!!ホントに使った」


「予想的中っと!普通のモンスターは神技を取得しても最大で3つと言われているわ。でも、天使はその倍近い数の神技を取得できる。既に神技を二つ、三つ取得しててもおかしくないし、序盤でいきなり使うってことはそういうことね」


「Cランクの天使ですら二つ、三つと神技を取得している可能性があるとは!?あ、ですが、次は通常のスキルですね」


「と思いきや、今度はアルテミスが先に神技を放つわよ。神技を防ぐには神技を使うしかない。それが無理なら躱すしかないわね。通常のスキルならブレイク系スキルでの破壊できるけど、神技は無理。神技そのものじゃなくてアルテミスを攻撃したのは悪手ね。どんな神技かわからないのに無闇矢鱈に攻撃しちゃダメ!下手するとそれを利用されかねない」


「エルナの放ったシャインブレイクはホワイトセイバーに吸収され、更に巨大化した剣が真っ直ぐに振り下ろされる!!さすがにこの一撃で勝負は決まったか?」


「天使を倒す手っ取り早い方法ね。回復される前に倒すか回復されるの前提でその上から叩き潰すか。ぶっちゃけ一撃で倒すのが理想」


「!?まだエルナのDOWN表示が出ません!つまり、今の一撃を耐えきった!!ということでしょうか?」


「はは、さすがにこれは予想外ね。まさか無傷で耐えるなんて。神技・イージスに並ぶ防御系の神技をエルナも使えるみたいね」


「そしてそして、今度はエルナが仕掛ける!しかも三つ目の神技・レッドプリンセス!その姿が徐々に変化していく!それに対抗するかのようにアルテミスも三つ目の神技・ストームセイバーで応戦する構えだ!!!!!!!」


「これ思ってたよりも早く決着がつくかもね」


「二つの神技が激突し、フィールド上に炎と風が吹き荒れる!!これではどちらが優勢なのかさっぱりわかりません!」


「「え?」」


 ここでエルナが神技・レッドプリンセスを連続使用する。

 次の瞬間、フィールドは炎に飲み込まれ、バトルの結果が表示される。


 しばらくの間、実況、解説の2人は言葉を発せなかった。


「今、エルナは神技・レッドプリンセスを二回連続で使いましたよね?新垣さんは何が起きていたのかわかりましたか?」


「マリンの使った輪唱ってスキルかしら?任意のスキルのクールタイムを一度だけ無視できる効果とか」


「いえ、それは…。かなり珍しいスキルですが、仮に輪唱の効果が新垣さんの仰る通りだとしても説明がつきません!通常のスキルで神技のクールタイムを無視するなんて不可能です!」


「普通ならそうね。でも、輪唱が何かしらの常時発動型のスキルで超強化されていたとしたらどう?」


「……」

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