第67話 初めてのタワーダンジョン

「Dランクに昇格するには私と蓮はあと一つ、郁斗とオリヴィアは二つね」


 今、莉菜はDランク昇格するのにまだ満たしていない条件を口にした。

 もしかして話ってDランクに昇格したら〇〇しよう的なことかな。

 でも、Dランクに昇格しないとできないことって何かあったかな。


「…うん、これなら夏には間に合うわね」


「何が夏に間に合うんだ?」


「ああ、ごめん。話はご飯をたべながらしましょ。オリヴィアはもう待てないみたいだし」


 ちょうどみんなが注文した料理が届いた。

 オリヴィアの目がすごく輝いており、それに気づいた莉菜は先に食事を提案した。


 それから少しして莉菜が話を切り出した。


「一つ私から提案があるんだけど、このメンバーでギルド作らない?」


「ギルドか、なるほどな」


「モグモグ、モグモグ。私は良いと思います!モグモグ、モグモグ」


「オリヴィアは食べるのに必死だね」


 ギルド、正直悩むな。

 俺は莉菜たちと違ってエンジョイ勢だから遠くない未来、きっと相容れなくなる。

 それを考えたら俺は莉菜たちと同じギルドに入らない方がいい気がする。


「莉菜、悪いけど少しだけ考える時間をくれないか?」


「ごめん、俺も」


「それくらいいいわよ。すぐにオッケーもらえるとは思ってないし。それにギルドを作るにはDランクに昇格しないといけないからまだ無理だしね」


 オリヴィア以外の俺と郁斗は莉菜の提案に対する答えを一度保留にしてもらった。

 郁斗まで保留にするとは思わなかったな。

 郁斗にも何かあるのかな。


 それからいろいろと雑談しながら夕飯を食べて、みんな食べ終わって一段落したところで解散した。


 莉菜の提案はすごく嬉しいけど、やっぱり俺には無理かな。

 莉菜からは夏休みまでに返事が欲しいと言われている。

 かなり長く時間を設けてくれたし、ちゃんと考えてそれでも無理ならそう伝えよう。

 莉菜ならきっと理解してくれると思う。



 莉菜からギルド結成の提案があった次の日。

 今日から新しいEランクダンジョンに挑戦する。

 挑戦するのは最近新しく用意されたばかりのEダンジョン、『ゴブリンパニック』だ。


『ゴブリンパニック』はゴブリンしか出現しないが、奥に進めば進むほどゴブリンの上位種が出現するらしい。

 出現するゴブリンのLvもEランクダンジョンに相応しいくらい高いので、ゴブリン相手だからと油断するとあっさり負ける。


 それに『ゴブリンパニック』は今まで挑戦してきたダンジョンとは違って、タワーダンジョンだ。

『遊楽園』や『静寂の魔巣』はエリアダンジョンで、複数のエリアから構成されたダンジョン。

 タワーダンジョンはエリアではなく、階層ごとに区切られている。

 ただ、ARゲームだから実際に階段を上り下りする訳ではなく、階層を繋ぐ階段まで到達すると目の前にウインドウが表示される。

 次の階層へ移動しますか?的なやつが。


 イメージは今までテレビとかでやっていたゲームのダンジョンをARで再現した感じ。

 これはこれで意外と年配の人たちから絶大な人気を誇っている。


 早速、ブルーたちを召喚して挑戦する。

 タワーダンジョンは迷路の側面もあるから地図がないと迷うけど、一応そこはゲームシステムが自動的にマッピングしてくれる。

 マッピングされた地図はいつでも見たい時に右上の地図を触れると目の前に拡大表示されるけど、その間もモンスターに襲われることもあるから注意は必要。


 中はこれぞダンジョンって感じの暗い雰囲気の場所だな。

 四角が多いから注意しながら移動しないと。


 少し探索すると角を曲がった所にゴブリン2体を発見した。

 こちらが一方的に相手の位置を把握しているだけで、2体のゴブリンはまだ気づいていない。


「ブルー、こっちから仕掛けて奇襲するぞ。電光迅雷」


 プルプルプル


剣士ソードマンとライトウルフはまだ待機」


 無言で剣士ソードマンとライトウルフは頷く。

 そして雷を纏ったブルーが目にも止まらぬ速さでゴブリンを奇襲する。


 突然、訳も分からず吹き飛ばされたゴブリンは戸惑いながらもそれが敵からの攻撃だと瞬時に理解して、ブルーへの警戒を強める。


 よし、さすがブルーだ。

 何も言わなくてもちゃんと俺の考えを理解してくれてる!

 これでゴブリン2体をブルーが剣士ソードマンとライトウルフと挟む形となった。

 ブルーを強く警戒している今なら更なる奇襲が決まる筈。


剣士ソードマンは閃撃、ライトウルフはプチシャイン」


 こちらに背を向けてブルーと対峙している2体のゴブリンに対して背後から剣士ソードマンとライトウルフが攻撃して挟撃の形を作る。


 それに闇属性を付与された剣士ソードマンの閃撃を受けた方のゴブリンはデバフ、状態異常に陥った。

 状況は明らかにこちらが有利。


 2体のゴブリンは挟撃をものともせず、ブルーのいる方へ突っ込んでいく。

 まずは単独で孤立しているブルーを倒しすつもりか。

 そんなことさせない!


「ブルー、スカーレットアロー、鳴神、剣士ソードマンは風薙ぎ、ライトウルフはシャインダイブ」


 ゴブリンがブルーに攻撃をしようと距離を詰めていたが、ブルーが放っている魔法のせいで思うように距離を詰められないでいた。

 そこを背後から追いついた剣士ソードマンは先ほど閃撃を当てたゴブリンとは違う個体を風薙ぎで攻撃する。

 ライトウルフはシャインダイブで剣士ソードマンが先ほどデバフや状態異常を付与した個体に頭から突撃する。


 背後からライトウルフのシャインダイブを受けたゴブリンはブルーの元まで転がった。

 それを今度は炎を纏ったブルーがライトウルフの所まで弾き返した。


 今のブルー、まるでこんなのを弾き飛ばすなと言わんばかりに反射的にプロミネンスアタックを使っていたような気がする。

 さすがにそれは違うよな。

 遠距離攻撃に乏しいライトウルフの為にゴブリンをライトウルフの所まで弾き戻しただけだよな。


 その後は2体のゴブリンを一方的にボコって、じゃなくて攻撃して倒した。

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