第9話 見晴らしの草原②
昨日の『見晴らしの草原』での戦いで今の俺たちには足りていないものが多いと改めて実感した。
ブルーは火属性耐性持ちや水属性持ちと相性の悪いモンスターとも戦えるようにしないといけない。
相性の悪いモンスターを避けて通るのも一つの手だが、何れ限界が来る。
遅いか早いかの違いだけだ。
スケルトンナイトは近距離、遠距離とバランスよく対応できる。
今、一番安定して戦えているのはスケルトンナイトだろう。
捕まえたばかりのウルフは素早さは高いが、攻撃力が低く、これからに期待というタイミングでハイウルフに進化した。
これで一番の課題だった攻撃力不足は解決した。
ただ、スケルトンナイトとハイウルフはまだ初期スキル以外持っていないので、ショップを活用してどうにかしたい。
スキルは基本的に進化するかスキルの書を使わないと新しく覚えない。
例外的に特定のスキルを使い続けてLvを上げてスキルそのものを進化、派生させる手もある。
進化や派生は一朝一夕でどうにかできることでは無いので、今はランダムスキルの書をショップで購入するしかない。
ランダムスキルの書は一個、1,000ポイントで購入できる。
今、全ポイントを費やせば何とか一個購入できた。
このランダムスキルの書はブルーに使おうと思う。
ブルーは俺の相棒であり、エースモンスターだ。
今はエースを更に強くすることに尽くす。
『ブルーにランダムスキルの書を使用しますか? はい いいえ』
もちろん、「はい」を選択。
『ブルーはプチヒールを取得しました』
プチヒールは魔法光属性回復スキル 効果10。
回復量は魔法攻撃力×10で算出される。
今いるモンスターなら一回のプチヒールで全回復できる。
今まではダメージを抑えるためにハイウルフはヒット&アウェイしかできなかった。
スケルトンナイトも攻撃を盾で受けるより、躱すのをメインにしていた為、少し戦いずらそうにしていた。
これからはブルーが回復魔法を新たに取得したので、ダメージを恐れることなく戦える。
これはかなり大きい。
ブルーと相性の悪い、火属性耐性持ちや水属性のモンスターを相手にもスケルトンナイトやハイウルフを軸にしてブルーは回復魔法に専念するという戦い方ができる。
これでファイアウルフやウォーターウルフ相手にもそこまで苦戦はしないだろう。
早速、俺たちは『見晴らしの草原』で属性持ちのウルフたちと再び戦った。
まずはファイアウルフ4体と戦った。
昨日はブルーが活躍できず、スケルトンナイトと進化前のウルフで時間を掛けてどうにか勝利した。
今日は遭遇と同時にハイウルフがノーマルクローで攻撃する。
ハイウルフのノーマルクローは直撃したが、一撃では倒しきれなかった。
それに気づいたら他の3体がハイウルフを取り囲んでいる。
3体からの一斉攻撃を受けてHPが残り2割ほどまで減る。
「ブルー、ハイウルフにプチヒール!」
すぐにブルーがプチヒールでハイウルフを回復し、HPは満タンになる。
ファイアウルフがハイウルフに一斉攻撃している隙にスケルトンナイトは閃撃でハイウルフのノーマルクローを受けたファイアウルフを仕留める。
ブルーは回復をしない時にあまり効かないが、プチファイアで攻撃もする。
ブルーの攻撃で一瞬意識をブルーに持っていかれたファイアウルフにハイウルフがノーマルファングで攻撃。
自身に噛みつくハイウルフを引き剥がそうと暴れ回るファイアウルフだが、すぐに駆けつけたスケルトンナイトが剣一閃。
残り2体となったファイアウルフをハイウルフとスケルトンナイトが分断に成功する。
1対1を2カ所で展開している形になっているが、実際はブルーが遠距離から回復や攻撃をしているので、どちらも2対1という展開になっている。
スケルトンナイトが先にファイアウルフを仕留めて、その後ハイウルフの戦いに参戦し、残っていたファイアウルフも倒される。
ファイアウルフの次にウォーターウルフ5体と戦った。
昨日ウォーターウルフに苦戦したのは、ブルーとの相性が悪かったからだ。
でも、今日の戦いはかなり一方的な展開となった。
ファイアウルフのように攻撃力に特化している訳ではないので、スケルトンナイトやハイウルフがダメージを負ってもすぐにブルーのプチヒールで全回復する。
プチファイアは相性が悪く、大したダメージにはなっていないが、スケルトンナイトとハイウルフが着実にダメージを与えていく。
やがて、ウォーターウルフの数が1体ずつ減っていき、最後の1体はスケルトンナイトの閃撃で倒される。
ウインドウルフやアースウルフと戦っても一方的な展開となり、『見晴らしの草原』に出現するモンスターとは一方的な展開から勝利を収めることができるようになった。
昨日とは違い、安定して戦えている。
ブルーが回復魔法を新たに取得したのが大きい。
ブルーは単体での継戦能力が大幅に上昇しているので、新入生代表トーナメントはブルーで出場するのはほぼ確定でいいだろう。
あとは時間が許す限り、Lv上げを行う。
それとできればEランクに昇格してブルーをEランクのLv上限であるLv30まで育てたい。
Eランクに昇格するには、Fランクダンジョンを3つ攻略すること。モンスター1体のLvを20まで育成すること。
この二つの条件を満たすとFランクからEランクに昇格する。
俺のFランクダンジョン攻略数は1、モンスターの最高LvはブルーのL13。
Fランクダンジョンをあと二つ攻略して、ブルーのLvを20まで上げる。
これを新入生代表トーナメントまでに達成するくらいできないと俺は二階堂郁斗と戦うことはできないと思った方がいいだろう。
二階堂郁斗は昨日の入学式の時点で、既にFランクダンジョンを二つ攻略している。
新入生代表トーナメントまであと2週間ほどあるなら、それまでにEランクに昇格し、モンスターのLvを上限の30まで上げてくるだろう。
二階堂郁斗は俺みたいなエンジョイ勢ではなく、きっとプロを目指しているガチ勢だろう。
エンジョイ勢はゲームを
エンジョイ勢とガチ勢は本来相容れない運命かもしれない。
けど、俺は二階堂郁斗と戦ってみたい。
そして負けたくない。何が何でも勝ちたい。
その為には準備をしっかりとしないといけない。
二階堂郁斗に勝つなら最低でも同じ土俵、Eランクにはならないと。
まずはこのFランクダンジョン『見晴らしの草原』を攻略する。
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