【KAC20248】視力が良くてもめがねを買う理由
白原碧人
第1話
授業中に隣の女子生徒から声をかけられることが多い。1日に数回どころか1時間に数回と言っても過言ではないぐらいである。なぜなら隣の席の
「
今まさに考えていた通りのことが起きた。授業中ということもあるのか、ささやくような声で聴くという気は使っているようだった。一応、同じようにささやき声で返しておいた。
授業終了後に率直に自分の思っていたことを伝えてみる。
「なぁ、守咲、見えないなら眼鏡かコンタクト買ったら?」
「そうなんだけどね~、知ってる?眼鏡って高いんだよ?」
お金の問題を出されてしまうともう何も言えないが、守咲の手や足に傷や痣が絶えないのは隣にいて目に入るので何となく察している。やはり視界が鮮明じゃないと、距離感がつかみにくかったりするのだろうか。
「それはわかるけど、普通に生活するのだって大変なんじゃない?」
「大丈夫だって、近いうち買うから、気にしないで」
そう言われても気になってしまう。さっきの守咲の言葉から考えると必要性はあるが値段が問題ということになる。
気づけば眼鏡の値段を調べてみた、学生には高価なものだが手が出ないと諦めるほど高価ということでもなかった。
「あれ?月峪、眼鏡買うの?」
自分の後ろに座る男子生徒に声をかけられた。
「買わない、買わない、視力良いし」
「あぁ~、守咲ね。入れ込むのも程ほどにしとけよ」
そう言われて初めは何のことかと思ったが、気づいてハッとした。
毎日のように守咲から声をかけられて、何か助けられることはできないかと考えるようになっていた。助けようという考え自体は悪いことだとは思わないが、助けたいという気持ちと守咲への好意を混同していた気がする。恋は盲目、まさにその言葉が当てはまり、常識を失い周りが見えていなかった。
自分が周りを見れていなかったのに、他人の視力を気にして眼鏡を勧めていたとは、愚かで自分が嫌になる。
そして俺は戒めのために眼鏡を買うことを決めた。
【KAC20248】視力が良くてもめがねを買う理由 白原碧人 @shirobara_aito
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